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心の枷
貴方の枷はどこから?私は心から!
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どんな物にも者にも終わりは来る。遅かれ早かれ、どんな現実も終わりは来る。だが、この星の奇跡は、神様の気まぐれ、必然であった。敢えて、、、どんなに運が良くても、運が悪くても、不運でも幸運でも、逃れられない運命はやってくる。人がどうしようもない非現実な現象は、神様のせいにするように諦めしか無いのだ。
母さんに読んでもらった大好きな本。邪神と伝説の英雄の話。転生前の魂の時からワクワクしていたけど、本を読んでもらって想像するとやっぱり肌で感じてしまう。世界を歩けるのはいいなって。
僕は、両親にスキルが無いことを説明した。いや、有るには有るんだけど、まだ、どんなスキルかも分からないし、説明できないので伏せておいた。それと転生する前は便所バエだったことも隠しておいた。それ以外はちゃんと話した。この世界はスキルが絶対に必要で、スキルがレアなほど女神に愛されている存在。つまりは、人間の良し悪しが勝手に決まるのだ。それ以外は農家になるか、人目をはばからない場所で善行をするかの二択しか無い。また、そう言った女神崇拝者の人達からの差別もあり、スキル無しは、この世にいても意味が無い存在と本気で思っている人もいる。そんな中で、ヴィクトリー王国は異端国扱いされる事もあるが、今王の『平和は私と民達が作る』信念を元に平和な国に仕上がっている。「今見るのは前世ではなく、相手の心だ」先代国王の信念と遺言は国民の心を本当の意味で救った英雄でもあった。そんな国に生まれたのは運が良かった。
シアーラ「スキル無しでもアルちゃんはアルちゃんよ。それに多次元収納ボックスとか世界を探してもアルちゃんだけよ!」
ルフタ「スキル無くても生きていけるし、それに女神様なら俺の隣にいるからな。その女神様が言うんだ。間違いねぇ!!」
アル「おとうしゃん!おかあしゃん!ありがどうぅ~」オヨヨョォォ~
シアーラ「シャッターチャーンス!!」カシャカシャ!
シアーラ「うふふふふ~~!!夜泣きの少なかったアルちゃんの涙は100カラットのダイヤよりも貴重で綺麗よぉ~~っほ!!」カシャカシャ!
転生前は汚物に群がっていたのだけれどもね!!キリッとかやってみたい気もするけど、それはそれで人生終わる気がするから言わないけどね。
アル「あのね、お父さんお母さん。僕、冒険者になりたいんだ!」
シアーラ・ルフタ「!!」
あ、目に光が無くなった、、、
シアーラ「冒険!ダメ!絶対!」
ルフタ「・・・・シアーラ。俺はいいと思うぜ」
シアーラ「ッ!なんで!あなた!どうして!」
ルフタ「シアーラ。俺は、孤児院で育った。そして、親友もいた。分かるな」
シアーラ「分かるし、知ってる。あなたの親友が事故で亡くなったとも」
シアーラ「だからこそよ!どうして!私は嫌よ!」ダッ
母さん、、、母さんの泣き顔が心に刺さり、いつまでも脳裏から離れなかった。見たくない涙もあるだな。綺麗なだけでは済まない涙がある事をこの時の僕は知った。それから、母さんは、全く部屋から出ようとせず、翌日になっても部屋から出てこなかった。その朝、父さんが、話があると言って部屋に来た。
コンコン
ルフタ「アル、起きてるか?ちょっとな。話があるんだ」
アル「はい!今開けます!」
ガチャ
ルフタ「おぉー!久しぶりに入ったけど、父さんの部屋よりは片付いているな~」
お父さんは部屋を見渡すと、自分の部屋と比較して、笑った。お父さんはいつも豪快に笑う人で、こんなに優しく笑うのは久しぶりだと思う。『だと思う』って事は、僕はちゃんと家の事を、家族の事を見てなかったんだね。
ルフタ「なあ、アル。家族てのは、いいよな。・・・・・実はな、アルには、いつか話そうと思ってた事があってな。聞いてくれるか?」
勿論。僕は黙って頷いた。お父さんはとても真剣で、産まれて初めてお父さんの真剣な顔を見て思った。僕は、家族の事を知りたい。
ルフタ「ありがとな」
そう言って、ベッドに腰かけ、部屋の天井の隅を見上げた。その顔は凄く寂しそうで、何時ものうるさいお父さんの面影は無かった。
ルフタ「お父さんな。孤児院で育ったんだ。生まれがどこかもわからない。父や母が今、生きてるのかさえも。でもな、孤児院の暮らしは凄く楽しかった。シスターは優しいし、ご飯も食べれた」
そして、顔を下げ、ちょっと微笑んだ。
ルフタ「親友もできてな、名前がキンドリーつってな。コイツがめっちゃヤンチャなヤツでな~、キンドリーの無茶ぶりに付き合わされてよ~シスターに何回も怒られたんだ」
照れ臭そうに笑うルフタに、僕も少し嬉しくなって微笑んだ。
ルフタ「孤児院自警団!なんて言ってな。お前!副団長!俺は団長だ!なんていってよく冒険ごっこをしてたんだよ。特訓だーなんて言って、西区の川に泳ぎに行って溺れかけたりして、門限破って、探しに来たシスターに夕飯前のお説教1時間!なんてのもザラだった。お前のせいでシスターに怒られたんだぞーって喧嘩もしょっちゅうさ」
ちょっと一呼吸置いて、お父さんはまた天井隅を見上げた
ルフタ「そんな、親友がいたんだ」
曇るお父さんの顔に、嫌な気持ちを押さえ込みながら、聞いてみた。
アル「いた、、、?」
ルフタ「ははっ!まあ、そんな顔すんなよ。やっぱ、シアーラの子だよな~お前は!」
僕はどんな顔をしていたのだろうか、、、
ルフタ「そうだな。もちろん。俺にも女神様からのスキル授与があった。俺のスキルは鍛治師の才、キンドリーは剣技の才。その夜に、キンドリーの部屋で夢を語ったんだ。キンドリーの夢は「王国騎士団に入り、孤児院にいる兄弟達を護る事!そして、立派に育った俺を見てほしいんだ」だった」
ルフタ「今思えば、少し照れ臭かったのかもな。誰に見てほしいのか言ってなかったけど、それは口には出さなかった。でも、俺には分かってたよ」
アル「・・・・父さんは?」
ルフタ「俺か、、、」
お父さんは少し、照れたけど、その後は歯を食いしばり、少しため息を吐きながら足元をみた。
ルフタ「俺は、「なら、俺がお前を守る防具や武器を作る」って言ったよ。本当は羨ましかった。俺もキンドリーと一緒に孤児院の皆を守るために、騎士や戦士になりたかった。でも、鍛治士だ。それは無理なのが分かった時に俺は不貞腐れてしまったんだよ。それからシスターと話し合って、キンドリーは騎士団希望って事で王都に向かった。それから大体1年くらいか、俺はまだ孤児院で勉強してるフリしてノウノウと暮らしていた。そして、久しぶりにキンドリーは帰ってきた」
アル「辞めたって事?」
ルフタ「それならどんなに良かったか、、、明日から初心者の為の実地訓練があるから。しばらく、顔出せないから会いにきたって事だった。俺が不貞腐れてた1年間、キンドリーは少ない給料で、孤児院に匿名で寄付していた。それを知ったのは後からだった。久しぶりに会った時、俺は冷たい態度を取ってしまった、出来損ないのペンダントを投げるようにあげた。俺は忙しいからって嘘ついて自室にもどった」
そう言うお父さんの顔はとても辛そうだった。俯いたまま、宙ぶらりんのペンダントを右手で強く握りしめ、歯を食いしばっているのが分かる。人って、そういった状況になると声すら出ないし、自分がどんな顔で接しているのかも分からなくなる。僕はただ泣きたかった
ルフタ「キンドリーはな、比較的安全って言われてた魔物討伐の実地訓練で死んじまってな。初心者向けのダンジョンで有名だった北東の洞窟の落盤事故だった。コレは国王様も非を認めている。調査不足だったって事でな。何十人も死んだ。運良く生き残った人の8割はトラウマになり、心を閉ざした」
ルフタ「キンドリーは身寄りがないって事で、シスターと俺が遺体確認しにいったんだ」
父さんの唇が震え、それを抑えるかのように下唇を噛んだ。
ルフタ「・・・・今でも覚えているよ。何十人の死体がずっと並んでいて、顔が無い、腕や脚が無い、窒息死でとても表現できない苦しそうな顔をした人、たくさんいた」
イヤな記憶を掘り起こすたび、お父さんは目をつぶり、顔を左右に振った。
ルフタ「コイツを見つけた。やっとで、、、綺麗な状態では無かった。顔なんて原形がなんなのかわからないくらいだった。でも、キンドリーは、左手で、俺の作った、ペンダントを、握りしめて、、、いたんだ!」
お父さんは堪えきれずに泣いた。全ての嫌な感情が流れていくように、、、僕も泣いた。
ルフタ「俺は泣くまいと、唇を噛みちぎり、自分の爪を手の平に食い込ませた。でも、ダメだ。心の痛みには勝てなかった、、、息してたのか、してなかったのか分からない。もう自分が分からなかった。泣きながら謝ってたよ。そして、気がついたらベッドの上だった」
僕は何故だか怖くなり、お父さんに抱きついて泣いた。お父さんは優しく頭を撫でながら、優しい口調で続けた。
ルフタ「それからしばらくして、義父さんと義母さんが孤児院に来て、俺を引き取って弟子にしてくれたんだ。でも、俺に残されたのは虚無だった。俺にはもう、全てが無い。真っ暗闇。歩けないんだ。目は見えるのに、一歩も。脚が言う事をきかない。あるのは絶望感の中で聞こえる、生きてていいのか?の恐怖の声だけだった」
ルフタ「正直、絶望の声に従った方が楽だった。俺は一回、自分を殺そうとした。それを運良くみつけたシアーラに魔法で眠らされたんだ。」
ルフタ「恥ずかしい話だけど、気がついたらシアーラの胸の中だった。暖かかった。実はもう死んでいて、天国にいるんじゃないかって思い違いするほど暖かかったよ。今のお前みたいにな」
ルフタ「シアーラは俺の頬っぺたにパチンと両手を当てて俺に言ったんだ『ルフタが死んでも、お友達は喜ばないよ!』って泣きながらね。それからゆっくりと時間をかけて心を縫っていった」
ルフタ「シアーラは病気であまり外に出られないから俺とずっと遊んでいたんだ。義母さんの魔法でも直ぐには治せない特別な病だった。原因は分からないけど、ルフタが来てから良くなったって義母さんは喜んでいたよ。本当に助けられたのは俺のほうなんだけどね。子供ながらに、その時からシアーラの事が好きだったんだよなきっと。俺はルーラ夫妻に助けられ、シアーラに助けられ、親友にも助けられ、本当に幸せな男なんだよ」
ルフタ「それから、キンドリーの部屋の遺品整理をシスターと始めたんだ。俺は自分の弱さと向き合って行く事にした。そのケジメとして、親友の部屋の整理を自分からお願いした」
ルフタは優しい笑い声をもらした
ルフタ「ふふ、そしたら俺が来るのをわかっていたかのように俺宛の手紙があったんだよ。今でも持ってるよ。恥ずかしいけど読むか?」
僕はお父さんの洋服で鼻水をかみ、小さく頷いた
ルフタ「うわ!鼻水はやめろよ!ハハ!しゃーねーな。まあ、男同士隠さずに話すと決めたからな」
「おい!ルフタ!お前!何俺から逃げてんだ!!それでも副団長か!!帰ってきてまだ俺から逃げようもんならまた鍛えてやるからな!!あの時約束しただろ!俺は外から守り、お前は内から守る。最強じゃねーか!矛盾なんて言葉を逆さまにしたら最強だよな!!でも、1人1つずつだからお前がいねーと矛盾しちまうんだよ。分かるか?それが出来るのがルフタ!お前なんだ!だから堂々としろよ!副団長だろ!!この怒りの手紙を読んでもウジウジしてたら西区の川を北西区の川上まで泳ぎきる特訓だからな!!だから元気出せよ!ウジウジしてなくても特訓な!!あと、ペンダントありがとうな!いっちょいってくらぁ!」
お父さんは笑いながら言った
ルフタ「凄いよな!そして、強いよな。でもな、死んじまったら意味が無いんだよな」
ルフタ「シアーラもその話は知っているよ。だからこそ、お前にスキルがない事を喜んだんだ」
なるほど、悪く言えば、僕はカゴの中の鳥なんだ。自由が無いけど安心して生きていける。母さんにとっては、スキルが無い方が、安全で安心できるんだ。
ルフタ「でもな。俺は嬉しかったよ。お前が冒険者になりたいって言った時。俺はあの時、親友と果たせなかった事が、、、約束が、守れる気がした。俺はお前を止めにきたんじゃ無い。背中を押しに来たんだ。だから、なりたかった自分になれ!負けるな!お前は俺とシアーラの勇者なんだ」
これほど、強い想いはあるだろうか。これほど、強い愛はあるだろうか。これほど、強い心を持ってる人はいるだろうか。これほど、人は強くなれるのだろうか。これほど、感謝できる人はいるだろうか。最強の家系に生まれた事より、誇りに思う事はあるのだろうか。
アル「お父さん!ありがとう!」
ルフタ「でも、ちゃんと母さんを説得してからだぜ。母さんは、この世界のどんな魔王や神さまよりも強いぞ!」
今ならなんでも出来る!!そんな熱い想いを胸に、母さんを説得してみせる!!
はず!だったんだけどなあーー!!
母さんに読んでもらった大好きな本。邪神と伝説の英雄の話。転生前の魂の時からワクワクしていたけど、本を読んでもらって想像するとやっぱり肌で感じてしまう。世界を歩けるのはいいなって。
僕は、両親にスキルが無いことを説明した。いや、有るには有るんだけど、まだ、どんなスキルかも分からないし、説明できないので伏せておいた。それと転生する前は便所バエだったことも隠しておいた。それ以外はちゃんと話した。この世界はスキルが絶対に必要で、スキルがレアなほど女神に愛されている存在。つまりは、人間の良し悪しが勝手に決まるのだ。それ以外は農家になるか、人目をはばからない場所で善行をするかの二択しか無い。また、そう言った女神崇拝者の人達からの差別もあり、スキル無しは、この世にいても意味が無い存在と本気で思っている人もいる。そんな中で、ヴィクトリー王国は異端国扱いされる事もあるが、今王の『平和は私と民達が作る』信念を元に平和な国に仕上がっている。「今見るのは前世ではなく、相手の心だ」先代国王の信念と遺言は国民の心を本当の意味で救った英雄でもあった。そんな国に生まれたのは運が良かった。
シアーラ「スキル無しでもアルちゃんはアルちゃんよ。それに多次元収納ボックスとか世界を探してもアルちゃんだけよ!」
ルフタ「スキル無くても生きていけるし、それに女神様なら俺の隣にいるからな。その女神様が言うんだ。間違いねぇ!!」
アル「おとうしゃん!おかあしゃん!ありがどうぅ~」オヨヨョォォ~
シアーラ「シャッターチャーンス!!」カシャカシャ!
シアーラ「うふふふふ~~!!夜泣きの少なかったアルちゃんの涙は100カラットのダイヤよりも貴重で綺麗よぉ~~っほ!!」カシャカシャ!
転生前は汚物に群がっていたのだけれどもね!!キリッとかやってみたい気もするけど、それはそれで人生終わる気がするから言わないけどね。
アル「あのね、お父さんお母さん。僕、冒険者になりたいんだ!」
シアーラ・ルフタ「!!」
あ、目に光が無くなった、、、
シアーラ「冒険!ダメ!絶対!」
ルフタ「・・・・シアーラ。俺はいいと思うぜ」
シアーラ「ッ!なんで!あなた!どうして!」
ルフタ「シアーラ。俺は、孤児院で育った。そして、親友もいた。分かるな」
シアーラ「分かるし、知ってる。あなたの親友が事故で亡くなったとも」
シアーラ「だからこそよ!どうして!私は嫌よ!」ダッ
母さん、、、母さんの泣き顔が心に刺さり、いつまでも脳裏から離れなかった。見たくない涙もあるだな。綺麗なだけでは済まない涙がある事をこの時の僕は知った。それから、母さんは、全く部屋から出ようとせず、翌日になっても部屋から出てこなかった。その朝、父さんが、話があると言って部屋に来た。
コンコン
ルフタ「アル、起きてるか?ちょっとな。話があるんだ」
アル「はい!今開けます!」
ガチャ
ルフタ「おぉー!久しぶりに入ったけど、父さんの部屋よりは片付いているな~」
お父さんは部屋を見渡すと、自分の部屋と比較して、笑った。お父さんはいつも豪快に笑う人で、こんなに優しく笑うのは久しぶりだと思う。『だと思う』って事は、僕はちゃんと家の事を、家族の事を見てなかったんだね。
ルフタ「なあ、アル。家族てのは、いいよな。・・・・・実はな、アルには、いつか話そうと思ってた事があってな。聞いてくれるか?」
勿論。僕は黙って頷いた。お父さんはとても真剣で、産まれて初めてお父さんの真剣な顔を見て思った。僕は、家族の事を知りたい。
ルフタ「ありがとな」
そう言って、ベッドに腰かけ、部屋の天井の隅を見上げた。その顔は凄く寂しそうで、何時ものうるさいお父さんの面影は無かった。
ルフタ「お父さんな。孤児院で育ったんだ。生まれがどこかもわからない。父や母が今、生きてるのかさえも。でもな、孤児院の暮らしは凄く楽しかった。シスターは優しいし、ご飯も食べれた」
そして、顔を下げ、ちょっと微笑んだ。
ルフタ「親友もできてな、名前がキンドリーつってな。コイツがめっちゃヤンチャなヤツでな~、キンドリーの無茶ぶりに付き合わされてよ~シスターに何回も怒られたんだ」
照れ臭そうに笑うルフタに、僕も少し嬉しくなって微笑んだ。
ルフタ「孤児院自警団!なんて言ってな。お前!副団長!俺は団長だ!なんていってよく冒険ごっこをしてたんだよ。特訓だーなんて言って、西区の川に泳ぎに行って溺れかけたりして、門限破って、探しに来たシスターに夕飯前のお説教1時間!なんてのもザラだった。お前のせいでシスターに怒られたんだぞーって喧嘩もしょっちゅうさ」
ちょっと一呼吸置いて、お父さんはまた天井隅を見上げた
ルフタ「そんな、親友がいたんだ」
曇るお父さんの顔に、嫌な気持ちを押さえ込みながら、聞いてみた。
アル「いた、、、?」
ルフタ「ははっ!まあ、そんな顔すんなよ。やっぱ、シアーラの子だよな~お前は!」
僕はどんな顔をしていたのだろうか、、、
ルフタ「そうだな。もちろん。俺にも女神様からのスキル授与があった。俺のスキルは鍛治師の才、キンドリーは剣技の才。その夜に、キンドリーの部屋で夢を語ったんだ。キンドリーの夢は「王国騎士団に入り、孤児院にいる兄弟達を護る事!そして、立派に育った俺を見てほしいんだ」だった」
ルフタ「今思えば、少し照れ臭かったのかもな。誰に見てほしいのか言ってなかったけど、それは口には出さなかった。でも、俺には分かってたよ」
アル「・・・・父さんは?」
ルフタ「俺か、、、」
お父さんは少し、照れたけど、その後は歯を食いしばり、少しため息を吐きながら足元をみた。
ルフタ「俺は、「なら、俺がお前を守る防具や武器を作る」って言ったよ。本当は羨ましかった。俺もキンドリーと一緒に孤児院の皆を守るために、騎士や戦士になりたかった。でも、鍛治士だ。それは無理なのが分かった時に俺は不貞腐れてしまったんだよ。それからシスターと話し合って、キンドリーは騎士団希望って事で王都に向かった。それから大体1年くらいか、俺はまだ孤児院で勉強してるフリしてノウノウと暮らしていた。そして、久しぶりにキンドリーは帰ってきた」
アル「辞めたって事?」
ルフタ「それならどんなに良かったか、、、明日から初心者の為の実地訓練があるから。しばらく、顔出せないから会いにきたって事だった。俺が不貞腐れてた1年間、キンドリーは少ない給料で、孤児院に匿名で寄付していた。それを知ったのは後からだった。久しぶりに会った時、俺は冷たい態度を取ってしまった、出来損ないのペンダントを投げるようにあげた。俺は忙しいからって嘘ついて自室にもどった」
そう言うお父さんの顔はとても辛そうだった。俯いたまま、宙ぶらりんのペンダントを右手で強く握りしめ、歯を食いしばっているのが分かる。人って、そういった状況になると声すら出ないし、自分がどんな顔で接しているのかも分からなくなる。僕はただ泣きたかった
ルフタ「キンドリーはな、比較的安全って言われてた魔物討伐の実地訓練で死んじまってな。初心者向けのダンジョンで有名だった北東の洞窟の落盤事故だった。コレは国王様も非を認めている。調査不足だったって事でな。何十人も死んだ。運良く生き残った人の8割はトラウマになり、心を閉ざした」
ルフタ「キンドリーは身寄りがないって事で、シスターと俺が遺体確認しにいったんだ」
父さんの唇が震え、それを抑えるかのように下唇を噛んだ。
ルフタ「・・・・今でも覚えているよ。何十人の死体がずっと並んでいて、顔が無い、腕や脚が無い、窒息死でとても表現できない苦しそうな顔をした人、たくさんいた」
イヤな記憶を掘り起こすたび、お父さんは目をつぶり、顔を左右に振った。
ルフタ「コイツを見つけた。やっとで、、、綺麗な状態では無かった。顔なんて原形がなんなのかわからないくらいだった。でも、キンドリーは、左手で、俺の作った、ペンダントを、握りしめて、、、いたんだ!」
お父さんは堪えきれずに泣いた。全ての嫌な感情が流れていくように、、、僕も泣いた。
ルフタ「俺は泣くまいと、唇を噛みちぎり、自分の爪を手の平に食い込ませた。でも、ダメだ。心の痛みには勝てなかった、、、息してたのか、してなかったのか分からない。もう自分が分からなかった。泣きながら謝ってたよ。そして、気がついたらベッドの上だった」
僕は何故だか怖くなり、お父さんに抱きついて泣いた。お父さんは優しく頭を撫でながら、優しい口調で続けた。
ルフタ「それからしばらくして、義父さんと義母さんが孤児院に来て、俺を引き取って弟子にしてくれたんだ。でも、俺に残されたのは虚無だった。俺にはもう、全てが無い。真っ暗闇。歩けないんだ。目は見えるのに、一歩も。脚が言う事をきかない。あるのは絶望感の中で聞こえる、生きてていいのか?の恐怖の声だけだった」
ルフタ「正直、絶望の声に従った方が楽だった。俺は一回、自分を殺そうとした。それを運良くみつけたシアーラに魔法で眠らされたんだ。」
ルフタ「恥ずかしい話だけど、気がついたらシアーラの胸の中だった。暖かかった。実はもう死んでいて、天国にいるんじゃないかって思い違いするほど暖かかったよ。今のお前みたいにな」
ルフタ「シアーラは俺の頬っぺたにパチンと両手を当てて俺に言ったんだ『ルフタが死んでも、お友達は喜ばないよ!』って泣きながらね。それからゆっくりと時間をかけて心を縫っていった」
ルフタ「シアーラは病気であまり外に出られないから俺とずっと遊んでいたんだ。義母さんの魔法でも直ぐには治せない特別な病だった。原因は分からないけど、ルフタが来てから良くなったって義母さんは喜んでいたよ。本当に助けられたのは俺のほうなんだけどね。子供ながらに、その時からシアーラの事が好きだったんだよなきっと。俺はルーラ夫妻に助けられ、シアーラに助けられ、親友にも助けられ、本当に幸せな男なんだよ」
ルフタ「それから、キンドリーの部屋の遺品整理をシスターと始めたんだ。俺は自分の弱さと向き合って行く事にした。そのケジメとして、親友の部屋の整理を自分からお願いした」
ルフタは優しい笑い声をもらした
ルフタ「ふふ、そしたら俺が来るのをわかっていたかのように俺宛の手紙があったんだよ。今でも持ってるよ。恥ずかしいけど読むか?」
僕はお父さんの洋服で鼻水をかみ、小さく頷いた
ルフタ「うわ!鼻水はやめろよ!ハハ!しゃーねーな。まあ、男同士隠さずに話すと決めたからな」
「おい!ルフタ!お前!何俺から逃げてんだ!!それでも副団長か!!帰ってきてまだ俺から逃げようもんならまた鍛えてやるからな!!あの時約束しただろ!俺は外から守り、お前は内から守る。最強じゃねーか!矛盾なんて言葉を逆さまにしたら最強だよな!!でも、1人1つずつだからお前がいねーと矛盾しちまうんだよ。分かるか?それが出来るのがルフタ!お前なんだ!だから堂々としろよ!副団長だろ!!この怒りの手紙を読んでもウジウジしてたら西区の川を北西区の川上まで泳ぎきる特訓だからな!!だから元気出せよ!ウジウジしてなくても特訓な!!あと、ペンダントありがとうな!いっちょいってくらぁ!」
お父さんは笑いながら言った
ルフタ「凄いよな!そして、強いよな。でもな、死んじまったら意味が無いんだよな」
ルフタ「シアーラもその話は知っているよ。だからこそ、お前にスキルがない事を喜んだんだ」
なるほど、悪く言えば、僕はカゴの中の鳥なんだ。自由が無いけど安心して生きていける。母さんにとっては、スキルが無い方が、安全で安心できるんだ。
ルフタ「でもな。俺は嬉しかったよ。お前が冒険者になりたいって言った時。俺はあの時、親友と果たせなかった事が、、、約束が、守れる気がした。俺はお前を止めにきたんじゃ無い。背中を押しに来たんだ。だから、なりたかった自分になれ!負けるな!お前は俺とシアーラの勇者なんだ」
これほど、強い想いはあるだろうか。これほど、強い愛はあるだろうか。これほど、強い心を持ってる人はいるだろうか。これほど、人は強くなれるのだろうか。これほど、感謝できる人はいるだろうか。最強の家系に生まれた事より、誇りに思う事はあるのだろうか。
アル「お父さん!ありがとう!」
ルフタ「でも、ちゃんと母さんを説得してからだぜ。母さんは、この世界のどんな魔王や神さまよりも強いぞ!」
今ならなんでも出来る!!そんな熱い想いを胸に、母さんを説得してみせる!!
はず!だったんだけどなあーー!!
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