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百合風エピローグ
8(百合セッ)※主人公攻
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小さな家には似つかわしくないほど、柔らかく高級なベッドは、エルフィンの実家からの贈り物だ。
とてもではないが真実を打ち明ける気にはなれなかったエルフィンの黙秘にも、エルフィンの子を宿したリアムの存在にも、実家はただただ困惑するばかりだったが。リアムが無事に子を産めるまではと引き留めてくれたし、餞別としての家具もくれた。今も届く手紙には、いつでも戻ってくれていいとしたためられている。
(……とても、戻れる気はしないが)
もうすっかり熱を帯びて湿っている小柄な体を、そっと引き寄せて抱き締めれば、大人しく腕に収まったリアムが眼差しを俯ける。――エルフィンの娘を産んだ以上、この先ずっと、外には性別さえ偽って過ごさなければならない彼のことを思えば尚更。
控え目な気遣いも、腫れ物扱いも、彼を消耗させるだけだ。そう心得ているエルフィンは、心に疼く罪悪感を押し殺して、そっとその唇に口付けた。
「っ……ん、う」
もう大分、頭にも熱が回っていると見えて、呼吸も上手くできていないリアムの吐息は弱々しい。時折跳ねる薄い肩を優しく撫でてやりながら、エルフィンは何度も唇を重ね直した。
柔らかな唇は触れた時にはもう濡れていて、どうぞと差し出すように開かれた口の奥にある、熱く蕩けた舌を絡ませる。舌を掬い、ゆったりと擦り合わせれば、甘えるように小さな体が擦り寄ってきて。快楽に弱くあるようにと躾けられた身体が、ぞわぞわとした感触と共に自制を失っていく。
熱のこもる口内にたまっていく互いの唾液をこくりと飲み込んでは、甘い熱に潤み始めた瞳で見つめ合う。縋るように伸ばされたリアムの指先が、弱々しく項に絡んでくる。同じように手指を首裏に回し、伸ばせば伸ばすほど傷んでしまうと恥ずかし気に口にしていた黒髪を優しく撫でて。濡れた薄い皮膚の上を滑り下ろすようにすれば、鼻にかかったような声が漏れた。
「んっ……ぁ、っ……♡」
擦り寄せた指で愛おしむように髪を梳いてやりつつ、熱を煽るように口付けを深めて行く。優しくベッドに背を沈め、滑らかな頬に手を滑らせれば、上気した肌が吸い付いた。ぴったりと唇を塞ぎながら、ゆっくりと片腕を滑らせて、肩から腰までの形を確かめるように指を這わせる。
服の上からの感触だけでも熱っぽく上気していると解るのだ。服の下へ手を滑り込ませれば、湿度を感じるほどの熱にあてられてしまう。リアムは口付けの合間にも腰を持ち上げたり身を捩ったりと工夫をして、官能の気配に震えが来てしまうエルフィンの手の動きを助けてくれていた。
「リアム……」
「ん……♡」
鼻先が触れそうな距離で囁けば、嬉しそうな吐息が返される。こんなときでも甲斐甲斐しいリアムの手は、エルフィンよりは余程器用に、ベルトもボタンも外してしまった。
今はもう、互いにしか曝け出せない、淫蕩に変わり果てた体。ほんの少しの気休めに、互いにはだけたシャツ一枚だけは身に纏ったまま、二人は何も言わずに再び唇を重ねた。
「は……っ、ふ……♡」
息継ぎの合間にも細い吐息を漏らしながら、リアムの指先がエルフィンの身体を滑る。優しく触れる指先に励まされるようにしながら、エルフィンもリアムの肌に指を滑らせた。
何度性交を繰り返しても、初めてのように蕾む身体に痛みを与えないことは難しいが、丁寧な愛撫を繰り返せば、幸いにして性感を育むことはできるようだった。胸元に手を這わせれば、唇の狭間に漏れる吐息が追い詰められたように途切れ途切れになる。
両性を併せ持つ身体ではあっても、どちらの性も未成熟に見える細い体は、女性のような乳房こそ持ち合わせていないものの。幾度も丁寧に愛でた甲斐はあって、僅かにふくりと形を持って敏感になっていた。
「ぁ……♡ ん、ぅう……っ」
柔らかく勃ち上がった胸の先端を指先で優しく押し潰せば、リアムはそれだけで酷く切なげな声を漏らす。夜毎の愛撫に熟れていく体は彼の性質そのままに素直で従順で、白い肌は生理的欲求を越えて真っ赤に色付いていた。
「エルフィン、さま……♡」
ハの字に歪んだ眉の下では、まだ躊躇いが瞳を揺らしている。目尻に涙を滲ませながら、熱に浮かされたようにエルフィンの名を呼ぶリアムの眦にも口付けを落としつつ、震える掌に手指を絡ませた。
フラッシュバックのように過る荒淫の記憶は、ともすればエルフィンの手指を震わせたが、黒々と潤むその瞳はエルフィンの聖域だった。泣かせたくない、傷付けたくない。これ以上の不幸など、一欠片だって彼には。そう念じながら、絡めた指をぎゅっと握る。
そのまま再び長い口付けに興じれば、ぴくんと華奢な身体が跳ねて、腰がよじれた。十分な潤いの気配を感じたエルフィンはそっと手指を伸ばし、蜜を満たして開かれた狭い隘路に、ゆっくりと指先を沈めた。
「あぅ、うっ♡」
「は、リアム……痛みは」
「だいじょうぶ、です。でも、気持ちいいのが、ずっと……」
続いて、と。熱に浮かされたような声で呟くリアムの瞳は甘く蕩けていて、うっとりとエルフィンを見つめている。
奴隷時代、性交を強いられては子宮と結腸を突き破られて流血し、口淫を強いられては咽頭を押し潰されて失禁しながら失神していたリアムにとって。一切痛いことをしないエルフィンとの交わりは、麻薬のような快楽だったのだろう。行為そのものには怖気るような素振りを見せながら、快楽を得る度に堪らないとばかりに身を捩る様は、その幼い容姿のアンバランスもあって煽情的だった。
「あ……♡ ん、ぁあっ……♡」
少しずつ柔らかくなっていく胎内に指先を沈ませれば、リアムが腰を震わせながら甘やかな声を漏らす。膣道の形に添って指先でなぞり上げるだけでも堪らないとばかりの反応を返されて、エルフィンの腰にも快楽がわだかまった。
熱い吐息を零して、今にも力が抜けてしまいそうな腕で懸命に体重を支えていれば、リアムもエルフィンの快楽の在り処を察したらしい。官能に炙られて息を切らしながら、エルフィン様、と。甘い声で囁き、身を起こす。
「……リア、ム」
「エルフィン様。どうか、僕に……」
熱い吐息が囁くなり、半勃ちになっている中途半端なモノに、細い手指が絡みつく。みっともなく濡れたその花芯を、根元からそっと愛しげに撫で上げられて、エルフィンはぞくりと背筋を震わせた。
とてもではないが真実を打ち明ける気にはなれなかったエルフィンの黙秘にも、エルフィンの子を宿したリアムの存在にも、実家はただただ困惑するばかりだったが。リアムが無事に子を産めるまではと引き留めてくれたし、餞別としての家具もくれた。今も届く手紙には、いつでも戻ってくれていいとしたためられている。
(……とても、戻れる気はしないが)
もうすっかり熱を帯びて湿っている小柄な体を、そっと引き寄せて抱き締めれば、大人しく腕に収まったリアムが眼差しを俯ける。――エルフィンの娘を産んだ以上、この先ずっと、外には性別さえ偽って過ごさなければならない彼のことを思えば尚更。
控え目な気遣いも、腫れ物扱いも、彼を消耗させるだけだ。そう心得ているエルフィンは、心に疼く罪悪感を押し殺して、そっとその唇に口付けた。
「っ……ん、う」
もう大分、頭にも熱が回っていると見えて、呼吸も上手くできていないリアムの吐息は弱々しい。時折跳ねる薄い肩を優しく撫でてやりながら、エルフィンは何度も唇を重ね直した。
柔らかな唇は触れた時にはもう濡れていて、どうぞと差し出すように開かれた口の奥にある、熱く蕩けた舌を絡ませる。舌を掬い、ゆったりと擦り合わせれば、甘えるように小さな体が擦り寄ってきて。快楽に弱くあるようにと躾けられた身体が、ぞわぞわとした感触と共に自制を失っていく。
熱のこもる口内にたまっていく互いの唾液をこくりと飲み込んでは、甘い熱に潤み始めた瞳で見つめ合う。縋るように伸ばされたリアムの指先が、弱々しく項に絡んでくる。同じように手指を首裏に回し、伸ばせば伸ばすほど傷んでしまうと恥ずかし気に口にしていた黒髪を優しく撫でて。濡れた薄い皮膚の上を滑り下ろすようにすれば、鼻にかかったような声が漏れた。
「んっ……ぁ、っ……♡」
擦り寄せた指で愛おしむように髪を梳いてやりつつ、熱を煽るように口付けを深めて行く。優しくベッドに背を沈め、滑らかな頬に手を滑らせれば、上気した肌が吸い付いた。ぴったりと唇を塞ぎながら、ゆっくりと片腕を滑らせて、肩から腰までの形を確かめるように指を這わせる。
服の上からの感触だけでも熱っぽく上気していると解るのだ。服の下へ手を滑り込ませれば、湿度を感じるほどの熱にあてられてしまう。リアムは口付けの合間にも腰を持ち上げたり身を捩ったりと工夫をして、官能の気配に震えが来てしまうエルフィンの手の動きを助けてくれていた。
「リアム……」
「ん……♡」
鼻先が触れそうな距離で囁けば、嬉しそうな吐息が返される。こんなときでも甲斐甲斐しいリアムの手は、エルフィンよりは余程器用に、ベルトもボタンも外してしまった。
今はもう、互いにしか曝け出せない、淫蕩に変わり果てた体。ほんの少しの気休めに、互いにはだけたシャツ一枚だけは身に纏ったまま、二人は何も言わずに再び唇を重ねた。
「は……っ、ふ……♡」
息継ぎの合間にも細い吐息を漏らしながら、リアムの指先がエルフィンの身体を滑る。優しく触れる指先に励まされるようにしながら、エルフィンもリアムの肌に指を滑らせた。
何度性交を繰り返しても、初めてのように蕾む身体に痛みを与えないことは難しいが、丁寧な愛撫を繰り返せば、幸いにして性感を育むことはできるようだった。胸元に手を這わせれば、唇の狭間に漏れる吐息が追い詰められたように途切れ途切れになる。
両性を併せ持つ身体ではあっても、どちらの性も未成熟に見える細い体は、女性のような乳房こそ持ち合わせていないものの。幾度も丁寧に愛でた甲斐はあって、僅かにふくりと形を持って敏感になっていた。
「ぁ……♡ ん、ぅう……っ」
柔らかく勃ち上がった胸の先端を指先で優しく押し潰せば、リアムはそれだけで酷く切なげな声を漏らす。夜毎の愛撫に熟れていく体は彼の性質そのままに素直で従順で、白い肌は生理的欲求を越えて真っ赤に色付いていた。
「エルフィン、さま……♡」
ハの字に歪んだ眉の下では、まだ躊躇いが瞳を揺らしている。目尻に涙を滲ませながら、熱に浮かされたようにエルフィンの名を呼ぶリアムの眦にも口付けを落としつつ、震える掌に手指を絡ませた。
フラッシュバックのように過る荒淫の記憶は、ともすればエルフィンの手指を震わせたが、黒々と潤むその瞳はエルフィンの聖域だった。泣かせたくない、傷付けたくない。これ以上の不幸など、一欠片だって彼には。そう念じながら、絡めた指をぎゅっと握る。
そのまま再び長い口付けに興じれば、ぴくんと華奢な身体が跳ねて、腰がよじれた。十分な潤いの気配を感じたエルフィンはそっと手指を伸ばし、蜜を満たして開かれた狭い隘路に、ゆっくりと指先を沈めた。
「あぅ、うっ♡」
「は、リアム……痛みは」
「だいじょうぶ、です。でも、気持ちいいのが、ずっと……」
続いて、と。熱に浮かされたような声で呟くリアムの瞳は甘く蕩けていて、うっとりとエルフィンを見つめている。
奴隷時代、性交を強いられては子宮と結腸を突き破られて流血し、口淫を強いられては咽頭を押し潰されて失禁しながら失神していたリアムにとって。一切痛いことをしないエルフィンとの交わりは、麻薬のような快楽だったのだろう。行為そのものには怖気るような素振りを見せながら、快楽を得る度に堪らないとばかりに身を捩る様は、その幼い容姿のアンバランスもあって煽情的だった。
「あ……♡ ん、ぁあっ……♡」
少しずつ柔らかくなっていく胎内に指先を沈ませれば、リアムが腰を震わせながら甘やかな声を漏らす。膣道の形に添って指先でなぞり上げるだけでも堪らないとばかりの反応を返されて、エルフィンの腰にも快楽がわだかまった。
熱い吐息を零して、今にも力が抜けてしまいそうな腕で懸命に体重を支えていれば、リアムもエルフィンの快楽の在り処を察したらしい。官能に炙られて息を切らしながら、エルフィン様、と。甘い声で囁き、身を起こす。
「……リア、ム」
「エルフィン様。どうか、僕に……」
熱い吐息が囁くなり、半勃ちになっている中途半端なモノに、細い手指が絡みつく。みっともなく濡れたその花芯を、根元からそっと愛しげに撫で上げられて、エルフィンはぞくりと背筋を震わせた。
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