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【 第二部 】 朱時雨
22.
しおりを挟む「ごめん、質問に答えてなかったね」
ふと沖田が思い出したように言い出した。
「綿入れは袷を冬仕様にしたもの、褞袍は家の中で着る防寒着です」
今から買いに出ましょう
と続けて。
(あ・・)
今からまた沖田と ”お出かけ”できるのだと。
とくんと心臓の響きを感じながら、だが冬乃は、少し困った顔をしてしまっていた。
「有難うございます、でも、先に茂吉さんに」
なぜにも、
いきなり仕事の途中で行方不明になったわけで。
「謝りに伺ってからでも、大丈夫でしょうか・・」
沖田が、ああ、と微笑い。
「そうだね、先に顔を出しておこうか」
まあ、でも。
と、繋いだ。
「茂吉さんには、貴女がご実家へ急用のため帰っていると言ってあるから怒ってはいないはずですよ」
(そうだったんだ・・)
「有難うございます・・」
なら、やはり八木家に行李を残しておいてくれたのも、沖田なのだろう。
「八木さんにも同じように・・?」
「ええ。貴女がいなくなったことが分かったあたりで、土方さん以外には、そう伝えてありますよ」
冬乃はぺこりと頭を下げた。
さすがに、冬乃が土方にまで断らずに帰省するのはおかしな話なので、土方に対しては、帰省したことには出来なかったのだろう。
「本当に何度もご迷惑おかけしてごめんなさい」
「だって貴女の意志でないのでしょう?」
冬乃は顔を上げた。
「はい・・」
信じてくれている。
冬乃という存在を。
いまや沖田の言葉の端々から受けるその実感に冬乃は、胸に沸き起こった幸福感で自然と顔を綻ばせた。
微笑んだ冬乃を見下ろす沖田の目が、僅かに開き。そしてすぐに穏やかに細められた。
「じゃあ行こうか」
その上掛けを羽織るようにと、言い足す沖田の視線が、畳に散らかる服のひとつを差して促し。
冬乃は急いで残りの服を行李に戻して、生地が他のものより厚いその上掛けを羽織りながら、小庭へ出てゆく沖田の後に続いた。
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