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壬生夜
71.
しおりを挟む確か、先ほど食事の広間で、目が合った人たちだ。
(・・・何?)
「少し話がしたいのだが、宜しいか」
「・・・」
男達の言葉に、おもわず茂吉のほうを見返した冬乃へ、だが茂吉が小さく眉を上げた。
助けられない、と言いたいのだろう。
(てか、あの二人)
・・・どうしたって、
(フツーーーに怪しいんだけど。)
返事ができずにいる冬乃へ、男の一人がもう一度声をかけた。
「貴女の処遇についての件だ」
(処遇?)
男がちらりと茂吉を見る。
「ここでは、なんだから・・・少しご同行願いたい」
冬乃にかけられていた密偵という疑いは、茂吉たち使用人には伝えられていない。
聞かせるわけにもいかないだろうと冬乃は仕方なく、心配そうな茂吉に軽く苦笑してみせて、男達のほうへ向かった。
だが、人気の無いところにまで、同行するつもりは無い。
厨房の明りをまだ背に煌々と浴びれる位置で、冬乃は立ち止まった。
前を歩いていた男達が、冬乃が立ち止まった様子をうけて振り返る。
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