碧恋の詠―貴方さえ護れるのなら、許されなくても浅はかに。【現在他サイトにて連載中です(詳細は近況ボードまたは最新話部分をご確認ください)】

宵月葵

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壬生夜

63.

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 (?)
 そのまま冬乃のほうへ向かってくる。

 まっすぐ向かってくるものだから、冬乃は歩みを遅め、

 コ、
 「コンバンハ」
 どうしたものかと、緊張の中とりあえず挨拶をしたところで、

 先程別れたばかりなのに冬乃の口から出てきたその挨拶に、沖田が面白そうに笑い。

 「手伝おうか」
 と言うやいなや、冬乃が返事も返す前にひょいと片手で、冬乃の左腕の三段を取ってしまった。

 (わ)
 「大丈夫です・・っ」
 遅くなった返事を返しながら慌てる冬乃の、右腕からさらに二段が消える。


 沖田がその広い手の平に乗せ直した三段の上に、今さらに取った二段を重ね乗せ。

 「・・・」
 冬乃は呆然と、沖田の片手に積みあがった塔を見上げた。
 沖田の上背でその手に五段の膳が在るとなれば、冬乃の視界には、まさに塔のごとき光景である。


 片手に五段を安定させると、さっさと広間へと歩いてゆく沖田の後ろ背を冬乃はもう何もいえず追う。

 荷物があっても可能な場合は片方の腕を空けておく、そのへんは剣術家としての癖だろうかなどと、自分でも思いあたるその習慣を思い起こしながら冬乃は、

 (手伝うっていうか、全部持ってくれてます)

 嬉しさ半分、恐縮半分、足してつまりは幸せ、なるぐあいで、
 (ああもう)

 目の前の、どこまでも侠気で面倒見のいい沖田の、その広い背を冬乃は、胸に込みあげる想いで頬肉をゆるませながら追っていった。



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