49 / 472
居場所
49.
しおりを挟む
「生死に・・?」
土方が訝しげに呟き。
「誰だ。俺たち三人のうちの誰かだというのか」
「違います!」
咄嗟に答えた冬乃の前、
「よっしゃあ!」
(え?)
突然、原田の素っ頓狂な声が響いて、冬乃は驚いて顔をあげた。
「あと暫くは、とりあえず俺ら生きてるわけだ!今日と明日は何も無えってえと、まあ明日までは確実に生きてるんだろ?!」
唖然としている冬乃に原田は嬉々として。
「じゃあ今日は巡察でどれだけ暴れても俺、生きてるってわけだな!そうだろ!な?な?」
(そ、そうですが。)
うろたえて言葉なく頷いた冬乃の前。
「おっし、いっちょ俺様の勇気ある行動を、皆の野郎にいつも以上に見せ付けてやろうじゃねえか!どうせいくら暴れても死なねえんじゃな!」
とガッツポーズを決めた。
「おい原田。」
土方が呆れたように声をあげ。
「おめえ、この女が未来から来たって本気で信じてるんじゃねえだろうな?」
「まあねえ!」
と、おもいっきり胸を張って答えた原田に、
「ああそうかい」
土方がお手上げとばかりに手をふり。
「とにかく言えないってんじゃ、こんな役に立たねえ未来予報者は、ようするに信じてやる価値無しってこった。」
(む)
冬乃は思わず眉間に皺を寄せた。
聞かれたことを答えていないので確かに文句を言われても仕方ないが。
だけど、
(無理なものは。無理)
冬乃はそれでも。人の命の行く末など口にできそうになくて。
「とりあえず総司、八木さんとこにもう一度頼みにいけ」
(・・・え?)
てっきり役に立たないからやっぱり追い出そうとでも言うかと思ったのだが。
意外にも土方が率先して八木家との交渉を沖田に促したことに、
冬乃は驚きを隠せないまま、そんな土方のくるりと向けられた背を見つめた。
蔵の外へと出てゆく土方に、
「そんじゃ、な。また夕餉の席で会おうぜ、嬢ちゃん」
原田も続き。
そういえばいつから冬乃の名は嬢ちゃんになったのか。
(ま、いいけど・・)
「総司」
不意に土方が蔵の入り口で振り返った。
「ちょっと来い」
「・・・」
沖田がこちらを見やった。
まるで、ここで待っているようにと暗に示すような眼を冬乃に向けて、沖田は土方の待つ蔵の外へと出て行った。
(何だろう・・・?)
首をかしげながらも。この世界への滞在を許された冬乃は、楽観的に、沖田の出てゆく背を見つめていた。
土方が訝しげに呟き。
「誰だ。俺たち三人のうちの誰かだというのか」
「違います!」
咄嗟に答えた冬乃の前、
「よっしゃあ!」
(え?)
突然、原田の素っ頓狂な声が響いて、冬乃は驚いて顔をあげた。
「あと暫くは、とりあえず俺ら生きてるわけだ!今日と明日は何も無えってえと、まあ明日までは確実に生きてるんだろ?!」
唖然としている冬乃に原田は嬉々として。
「じゃあ今日は巡察でどれだけ暴れても俺、生きてるってわけだな!そうだろ!な?な?」
(そ、そうですが。)
うろたえて言葉なく頷いた冬乃の前。
「おっし、いっちょ俺様の勇気ある行動を、皆の野郎にいつも以上に見せ付けてやろうじゃねえか!どうせいくら暴れても死なねえんじゃな!」
とガッツポーズを決めた。
「おい原田。」
土方が呆れたように声をあげ。
「おめえ、この女が未来から来たって本気で信じてるんじゃねえだろうな?」
「まあねえ!」
と、おもいっきり胸を張って答えた原田に、
「ああそうかい」
土方がお手上げとばかりに手をふり。
「とにかく言えないってんじゃ、こんな役に立たねえ未来予報者は、ようするに信じてやる価値無しってこった。」
(む)
冬乃は思わず眉間に皺を寄せた。
聞かれたことを答えていないので確かに文句を言われても仕方ないが。
だけど、
(無理なものは。無理)
冬乃はそれでも。人の命の行く末など口にできそうになくて。
「とりあえず総司、八木さんとこにもう一度頼みにいけ」
(・・・え?)
てっきり役に立たないからやっぱり追い出そうとでも言うかと思ったのだが。
意外にも土方が率先して八木家との交渉を沖田に促したことに、
冬乃は驚きを隠せないまま、そんな土方のくるりと向けられた背を見つめた。
蔵の外へと出てゆく土方に、
「そんじゃ、な。また夕餉の席で会おうぜ、嬢ちゃん」
原田も続き。
そういえばいつから冬乃の名は嬢ちゃんになったのか。
(ま、いいけど・・)
「総司」
不意に土方が蔵の入り口で振り返った。
「ちょっと来い」
「・・・」
沖田がこちらを見やった。
まるで、ここで待っているようにと暗に示すような眼を冬乃に向けて、沖田は土方の待つ蔵の外へと出て行った。
(何だろう・・・?)
首をかしげながらも。この世界への滞在を許された冬乃は、楽観的に、沖田の出てゆく背を見つめていた。
0
お気に入りに追加
927
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる