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その訳
30.
しおりを挟むそれとも。
成るようにして成っている、それが歴史なのかもしれない。
冬乃は、ふと浮かんだその考えに、顔を上げた。
(私がどうこうしてしまう事も、歴史の流れの中にすでに組み込まれているとしたら?)
・・むしろ、そうでなければ。
居るべきでない所に居る冬乃の存在は、歴史に何かしらの変更をすでに起こしたことになってしまう。
「・・・」
冬乃は隣の沖田をそっと感じた。
見なくても分かる。
彼は冬乃の言葉を静かに待っているだろう。
冬乃という存在を、見ているのだ。
(そう・・。私は沖田様の歴史に、すでに関わっている・・)
冬乃が、沖田たちと全く関わらなかった場合と比べれば、
いま現に関わっている時点で、冬乃の存在は彼らに多少なりの影響を及ぼしてしまっている。
たとえば本来なら話を交わすはずのない存在である冬乃と、彼らは話を交わしているし、
(ごはんまで一緒に食べてる。)
それらは、大それたものでこそなくても、彼らに及ぼされた小さな変化であることは確かだ。
だがそれも、
もし歴史がすでに決められたものであるならば、冬乃が彼らに与えた影響は、その決められた歴史の中のひとつの事象であるだけだ。
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