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【 第一部 】 平成十二年夏、東京
10.
しおりを挟むパーン!
「面あり!!」
弾かれたように勢いよく上がった赤旗が、冬乃の視界の端に映り、冬乃は湧き起こる歓声のなか竹刀を引いた。
”女子個人戦の部、全日本二年連続優勝”
この広い大会場において、冬乃の名とその肩書きを知らない者はいない。
そして今回、
「やったあ冬乃!!三年連続優勝!すごすぎ!!」
応援に駆けつけていた千秋が抱きついた。
「行ってきな」
真弓が表彰台を指して、冬乃の肩を叩いた。
盛大な拍手の波にひかれるように、冬乃はトロフィを抱えて台をゆっくりと降りてゆく。
───初めて竹刀を握った幼い日のことを思い出していた。
(あの頃は、まだ信じてたんだよね・・)
いつか彼に逢えることを。本気で。
その時のために、始めた剣道。
それから九年間、冬乃は着実に上達した。
上達とともに、冬乃は大人になってゆき、現実を知った。
所詮叶わぬ願い。
想いは、だが、憧憬から恋へと。つのるばかりだった。
「これで閉会式を終了します。一同、礼」
一瞬のち、会場内は俄かに湧いた。
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