碧恋の詠―貴方さえ護れるのなら、許されなくても浅はかに。【現在他サイトにて連載中です(詳細は近況ボードまたは最新話部分をご確認ください)】

宵月葵

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【 第一部 】 叶わない想い

8.

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 冬乃は再び机に向かうと、引き出しから耳栓を取り出し、着けたその上から常のようにヘッドホンを重ねた。
 
 (・・ずっと互いに助け合ってきたと思ってたのに)

 「冬乃!ここを開けろ!!」

 冬乃は音楽の再生ボタンを押した。

 (なのに私の気持ちなんか聞いてもくれず再婚するなんて)

 本当の父親がどんなに酷い人だったか知らないけど、
 それでも自分にとっては実の父親だったから。

 ────会いにいってもいい?

 以前そう口にした時、だが母は泣いて冬乃に怒鳴った。
 あんな男のことを口にするな、と。

 それからすぐに、母はまるで当てつけのように再婚した。
 
 (それからだ。前のような私たちじゃなくなったのは)

 今は、もう。口にしただけで母を泣かすような人に会ってみたいとも思わない。
 今はただ、叶うなら、
 あの頃のように『お母さん』ともう一度呼びたい、それだけ・・・

 でも母は、自分より義父を選んだ。

 だからもうあの人をそう呼ぶことなんて無い。


 「開けろと言ってるだろう!!!」
 大音量にした音楽の隙間をぬって義父の大声が聞こえた。

 戸を叩く音が響きわたり、冬乃は眉をひそめた。

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