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【 第一部 】 平成十二年夏、東京
5.
しおりを挟む「私ハヤトにふられたの。俺のコト中途半端にしか想ってないのわかるって。ふざけんなって。・・私さ、ハヤトのコト本気になれると思ったけどダメだった」
コンビニで買った冬乃の傘が、風に押されて揺れる。
「もうネほんとイイ加減にしなきゃって思った」
「じゃぁ決心ついたんだ?現実の男を見るって」
「違う。もう誰かとつきあってみたりするのやめるってコト」
「はぁー?」
傍を通りかけたサラリーマン風の男が真弓の声に驚いて、三人を見やって通り過ぎていった。
「ソレってぇ一生沖田サン愛してるかもってことになんない?」
冬乃は答えられずただ傘を軽く引いた。雨足が強くなっている。
「千秋はソレいいと思う」
呟いて千秋が、二人を促すようにやや歩きだした。
「冬乃が決めた事って、よーするに好きになれそーってだけのキモチで付き合い出すのはやめるって事になるじゃん」
「まぁ・・」
「誰かを好きでもさぁ他の人にキモチ行くとき行くんだし」
「・・・まさか千秋いま、他の男に目行ってたりしてない?」
千秋は立ち止まってしまった。
「真弓、あんった超スルドイよォ」
「え、マジで?・・」
「にゃん」
「ゴメン、じゃ私そろそろ行くわ」
冬乃は手を振る代わりに傘を揺らし、戯れる二人を置いて駅へと向かい出した。
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