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【 第一部 】 平成十二年夏、東京

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 「私ハヤトにふられたの。俺のコト中途半端にしか想ってないのわかるって。ふざけんなって。・・私さ、ハヤトのコト本気になれると思ったけどダメだった」

 コンビニで買った冬乃の傘が、風に押されて揺れる。
 「もうネほんとイイ加減にしなきゃって思った」

 「じゃぁ決心ついたんだ?現実の男を見るって」
 「違う。もう誰かとつきあってみたりするのやめるってコト」
 「はぁー?」 
 傍を通りかけたサラリーマン風の男が真弓の声に驚いて、三人を見やって通り過ぎていった。

 「ソレってぇ一生沖田サン愛してるかもってことになんない?」

 冬乃は答えられずただ傘を軽く引いた。雨足が強くなっている。

 「千秋はソレいいと思う」
 呟いて千秋が、二人を促すようにやや歩きだした。

 「冬乃が決めた事って、よーするに好きになれそーってだけのキモチで付き合い出すのはやめるって事になるじゃん」
 「まぁ・・」
 「誰かを好きでもさぁ他の人にキモチ行くとき行くんだし」
 「・・・まさか千秋いま、他の男に目行ってたりしてない?」

 千秋は立ち止まってしまった。
 「真弓、あんった超スルドイよォ」
 「え、マジで?・・」
 「にゃん」

 「ゴメン、じゃ私そろそろ行くわ」
 冬乃は手を振る代わりに傘を揺らし、戯れる二人を置いて駅へと向かい出した。



 
 
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