碧恋の詠―貴方さえ護れるのなら、許されなくても浅はかに。【現在他サイトにて連載中です(詳細は近況ボードまたは最新話部分をご確認ください)】

宵月葵

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【 第三部 】 愛の記憶

14.

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 同時に、後ろ髪を束ねていた紙縒りを解かれ。
 濡れた髪も乾きやすいようにしてくれたのだろうと気づいた刹那、
 被さってきた沖田に、
 「…んっ…」
 首すじへ口づけられて。冬乃は高まり続ける鼓動の音に押されるように、沖田の首へと腕を絡めようと伸ばした、
 
 その手は取られ、
 
 「これで、」
 
 帯ひもを握らされた。
 
 「俺を縛ってくれる」
 
 
 
 (・・・いま何て??)
 
 
 冬乃はおそらく目がまんまるになっているだろう。
 
 これまで冬乃が縛られる事なら(多々)あった。なぜなら彼はドSだから。
 だが冬乃が沖田を縛る事など当然、皆無である。なぜなら彼はドSだから。
 
 (なのに)
 
 「聞きまちが・・」
 「ほら早く」
 
 
 聞き間違えでは、無かったらしい。
 
 
 「あ、あの」
 握らされている帯ひもを宙に留めたまま、冬乃は声を震わせる。
 
 「ん?」
 
 「理由・・をお聞きしても・・」
 「決まってるでしょ、冬乃を襲わないため」
 
 (え?)
 
 「なん、で」
 冬乃は一瞬に、先ほど沖田が口にした耐えるという台詞を思い出した。
 
 耐えるとは、そういう意味だったのだと。
 (そんなの)
 望まないのに。とは勿論、恥ずかしさの先立つ冬乃に言えるはずもなく。
 
 
 「何。襲ってほしかった?」
 
 いや、言わずとも伝わってしまったようだった。
 
 
 「・・・はい」
 
 もはや正直に答えて沖田を見上げた冬乃に、
 
 揶揄うだけで、肯定してくるとは想像してなかったのか沖田のほうが面食らったような顔になって。
 何やら思案するような顔へ変わったのちに、
 「正直に言っていい」
 どことなく心配そうな眼差しにさえなって、冬乃を覗き込んできた。
 
 「・・正直に言ってます・・」
 またも羞恥が勝りだして顔を背けてしまった冬乃の、か細くなった声が途切れるより前、
 
 冬乃の手からは帯ひもが奪い返され。
 
 激しい口づけが待っていた。
 
 
 
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