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【 第三部 】 愛の記憶

8.

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 (え、ええ?)
 
 あいかわらず冬乃の度肝を抜く沖田に、冬乃が目を白黒させていると、
 その武骨な手は冬乃の手を攫って、
 しかもそのまま冬乃は引き寄せられ。
 
 「・・いいのですかこんな・・」
 
 「大丈夫」
 
 何が大丈夫なのだろう。手を繋ぐどころか今や腕まで絡められそうな近距離で、冬乃は傘を擡げてはらはらと沖田を見上げた。
 
 
 
 
 可愛い“稚児” と沖田が、手をつないで散歩しているさまは、そう不自然でもあるまい。
 これが大の武士同士なら少々問題だが、
 
 冬乃は幸いに、遠目で見ても年端のいかない美少年どまりな以上、ひっそり手を繋いでいようが周りの目には、沖田のそういう相手だと見えるだけ。
 成人武士に見えているつもりらしい冬乃には悪いので、やはりこれを言う気はないものの。
 
 
 この繋いだ小さな手さえほんのり熱を帯びてゆく、それだけでも沖田の心内を擽るような彼女を隣にして、
 長く触れていられないひとときなど望まぬのは、沖田とて同じだ。
 
 それでも暫く行動を起こさず抑えていたのには、それなりに理由があり。
 
 つまりは、
 一応ある程度の人通りがある、この往来では。
 
 
 「貴様ら、昼間から見せつけてくれる・・!」
 「新選組はやたら羽振りがいいようだなッ!」
 
 余計に目立つのも。
 
 問題だからであったのだが。
 
 
 
 (・・・まあ何してようが、どうせ来るやつは来るか)
 
 
 「総司さん」
 握る冬乃の手がぎゅっと強まった。
 
 「なるべく傘で顔を隠したまま、道の端に寄って」
 
 路地の左右から走りこんでくる男達へ眼を据えたまま、沖田は冬乃へ囁いた。
 びくりと冬乃の手が応えた、
 「私も・・」
 
 「闘います」


 そんな台詞とともに。
 
 

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