碧恋の詠―貴方さえ護れるのなら、許されなくても浅はかに。【現在他サイトにて連載中です(詳細は近況ボードまたは最新話部分をご確認ください)】

宵月葵

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うき世の楽園

229.

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 雨除けの、簡易屋根の下で。
 
 
 「…あ…っ…」
 
 此処は屋外で。
 
 
 塀のすぐ向こうからは、夕の刻の物売りたちの声が響いてくる、というのに。
 
 風呂場の外に張り出す風呂釜の横で、薪の束に腰かける沖田の、
 膝の上に座らされて冬乃は、
 
 先ほどから。
 
 「ん……」
 「良さそうだね。・・ここはどう」
 「ンンッ…」
 
 
 「ここ、凝ってるな」
 
 按摩。
 を受けていた。
 
 
 最近の厨房の手伝いで、暫く使っていなかった筋を酷使していた冬乃なので、あちこち変な所が張っていたのを、
 沖田は冬乃の動きを見ていただけで気づいたらしい。
 
 
 時々薪を投げ入れながら、
 パチパチと音を奏でる温かな火の前で、
 
 しっとり降りつづく雅な雨に囲われ、
 きっとこの世で一番安全な場所、沖田の膝の上。
 
 
 (・・しあわせ)
 
 ではあるし、
 
 
 「ひもの~」
 
 塀の向こうを物売りが通り過ぎる声も、また一興ではあるのだけれど。
 
 
 「ひも~の~ひも~」
 
 「…っあ…ン…!」
 
 冬乃は慌てて手で口を覆った。
 
 
 「・・・・の~」
 
 
 干物売りの声が一瞬とだえたから、何かしら聞こえたであろう。
 
 冬乃は頬を膨らませて、背後の沖田を振り返った。
 
 
 「なんて声だしてるの」
 
 冬乃を膝の上に抱き締めたまま、低く哂いながら沖田が悪戯な眼で見返してくる。
 明らかに愉しんでいる。
 
 冬乃にこんな声をださせているのは紛れもなく沖田だというのに。
 
 「わざと・・ですよね・・?」
 膨らませた頬に口づけられながら、冬乃は抗議する。
 
 
 冬乃の脇の下を揉みほぐしている沖田の手が、止まった。
 
 「それは、こういうのを言ってる?」

 そう、
 
 もう何度も。
 
 「…っん!」
 
 沖田の指が、胸の先端を掠めて。
 
 
 「ゃ、だめ、…っ」
 「まあ、ここも負けじと凝ってるようだから、そろそろ集中してほぐそうか」
 「えっ」
 
 冬乃の両脇から完全に下ってきた大きな両の手が、冬乃の左右の胸横に添えられ。
 
 その手が後ろから両の乳房を包みこむようにして。
 二本の硬く太い指先が、それでいてあいかわらず繊細なまでに、冬乃の胸の頂を摘まんだり擽ったり本格的に甚振り始めた。
 
 「…ン…ッ」
 着物の布越しなのに痺れるような刺激に何度も見舞われだして、声を出すまいと冬乃は強く唇を噛みしめる。
 
 「やさい~」
 
 塀の向こうをのんびり野菜売りが通り過ぎてゆく。
 
 「…んぅ、…っ…」

 「冬乃かわいい」
 すぐ後ろで耳元に囁かれ。冬乃はもう揶揄われているのは分かっていてもよけいに煽られ。

 「きゃ!」
 そのうえ突然ぐいと両襟を開かれ、冬乃はついに声をあげた。
 
 露わになった肌へ滑り込んだ沖田の大きな両の掌が、ゆっくりと、感触を楽しむように乳房を揉みしだいてゆく。
 
 「あ…、ぁ」
 
 
 やがて。片の胸を離れて裾を割る手を、感じ。


 物売りが時折また塀の向こうを通っても、もう。冬乃は己の喉を零れ出る声を止めることなどできなかった。


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