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うき世の楽園
220.
しおりを挟む「ああ、あの物見遊山の人達か」
伝言を聞いて沖田が呟いた言葉に。
「物見遊山?」
永倉は目を瞬かせていた。
「江戸から京に、休暇に来たんだそうで」
「この動乱真っ只中の京にか?!・・今の京の情勢を知らない者なんて、さすがに江戸にゃいないと思ってたが」
「“将軍様” が上洛されている今ならば、心配無用と思ったそうですよ」
「そういうことか!」
永倉は、納得すると同時に笑い出した。
「なるほど江戸のお膝元でぬくぬく居りゃあ、その泰平ボケな考え方も仕方ねえわな」
おっと失言。と永倉は己の片頬をペシリと平手打つ。
「な、その女、まだ暫くは京に滞在してんなら、あとで紹介しろよ」
女の待つ応接間へ向かい出す沖田へ、永倉は声を追わせた。
「お堅い商家の娘だそうだから、期待しても無駄だとは思いますがね」
沖田が哂った。
冬乃は逃げ出してきたものの、お鈴が沖田に何を求めて訪ねてきたのか、一方で気懸りであり。
(でも)
たとえば沖田に茶を出す振りをして覗いてみたところで、長居できるわけでもないのだから、却ってもっと気になりそうで。
(我慢して、ここに居たほうがいい気がする)
今の時間なら、そのうちお孝が休憩に此処、女使用人部屋に戻ってくるはずだ。お孝といつものように世間話でもしていれば気も紛れてくれるのではないか。
そして幾らか時が進んだ。
(・・・・。)
残酷すぎるひととき。
頼みの綱のお孝も未だ戻ってこない。
部屋を閉め切っていては息が詰まると、つと冬乃は立ち上がり。よろよろと向かって障子を開けた。
目に眩しい青空が、どんより暗い冬乃をまるで揶揄うように見下ろしてくる。
・・やっぱり覗きに行ってしまおう。
冬乃が決意するまで、それから時間はそう掛からなかった。
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