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うき世の楽園
178.
しおりを挟む(て、なんでその笑み?!)
冬乃が慄く前で。沖田がさっさと両刀を外し置き、袴の紐を解き、
昼間の時のように着流し姿にあっというまになると、
腰帯へとその手を向かわせ。
(っ・・)
見ていられる度胸があるわけがない冬乃は、そこではっと気がついて。慌てて目を逸らした、
ほとんど首ごと動かして。
ふっと微笑う気配がしたが、
どきどきと高まる鼓動を胸に感じている冬乃が、採れる行動は一つしかない。
見ないように、し続けるのみ。
すぐに冬乃の耳には、シュッと豪快に帯を引き解く音が届いた。
(ど・・・どうしよ)
見ていなくても頬が熱くなって。
続くバサバサと空気を打つような布の音と、さらに続くシュッシュッと解いてゆくような音、
着物を脱ぎ去り、いま下帯を外しているに違いなく。
(も、もう)
心臓が飛び出しそう。
冬乃は、かあっと全身で噴いた火照りに、もはや顔を背けたまま目を瞑る。
(けっきょく恥ずかしいなんて)
ふたりの脱ぐ順番なぞ、恥ずかしさの度合いにたいして差が無かったらしい。
「冬乃」
そして、沖田からの宣告が。
「次は、貴女の番」
下った。
(む・・)
むりです・・・!!
叫びたくとも、
自分から順番をおねだりしておいて、拒否権など有るとも到底思えず。
「・・冬乃」
冬乃を促す残酷に穏やかに、笑みを含んだその声の主を。もちろん向くことからして出来ない冬乃は。
「あの、うし・・」
せめて、羞恥の軽減に。
「牛?」
「う・うしろを向いててください・・!」
努めた。
「ああ、・・」
冬乃の耳に沖田の苦笑が届く。
「わかった」
案外あっさり聞き入れてもらえたようで、ほっとしたのも束の間。
「と言ってやりたいところだが」
(・・え?)
「仕置きが残ってたよな」
硬直した冬乃に、
ゆっくりと近づく気配。
彼のドSぶりを舐めてかかっていたつもりは。全く無いのだけれど。
(総・・・司さ・・ん・・?)
「俺の前で、」
息が。乱れる。
冬乃の首に柔く絡まる大きな両の手。
鎖骨を伝い、
ゆっくり肩へと。
冬乃の視界は反転した。
背には木の壁。
「脱いで」
前には――――沖田の逞しい、裸体。
冬乃は。
瞬間いつかのような激しい眩暈で、卒倒しかけた。
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