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つよけん

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第一部ルート5「つばさ」

奪還5

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私は体をロープで完全に固定されて身動きが取れない束縛状態になっている。
うつ伏せに寝ているので、周りの状況は把握出来ない。
しばらくすると背中の一部が上から下へ線状に熱を帯びて徐々に高温となり、温度がある一定を超えた時に激痛を発する。

「むぐっ…。むぐぅぅぅぅぅ!」

布を丸めて口に頬張り、声が中でもごり声を押し殺していた。
歯をぐっと噛み締めながら涙を堪え、ひたすらに痛みに耐える。
塞ぎかかっていた背中の傷口を切れ味のよい熱せられた刃物で再び広げられる。
接合部分の神経に触れた時にぎゅっと我慢していた痛みが限界を突破して、固定している机ごと生きの良い魚のように暴れ跳ねた。
意識が吹っ飛びそうになる。
吹っ飛んでくれた方がマシだったかもしれない…。
それほど辛い。

「ここから更に痛いから、もっと力を入れろ。」

そうハクシに言われてヒクヒクとしていた体にムチを入れて更に力を込めた。
サラサラっと背中に肌触りのよい何かが通過する。
私の翼だ。
私はハクシに無理をいって、直ぐにでも翼を元に戻すように志願していた。

少し前に遡る。

「あんたが死んだら誰が私の翼を元に戻すのよ!」

ハクシは生身の部分を数発撃たれて気を失って倒れている。
息がまだあり、死んではいない。
傷口からの出血をなんとか止めるべく、近くにあった布を押し当てた。
思ったよりも出血の量は少なく、押し当てた布に血液はあまり付着していない。
それどころか次に傷口を見ると、出血が止まって傷口が塞りかけていた。

「機人ってどんな不死身の体してるのよ…」

呆気にとらわれていると少し荒かった息遣いが、弱いわしいものとなっていく。
私はこのまま呼吸が止まってしまうのでは無いかと焦りだし少しだじぇパニックを起こす。

「ちょっ!ちょっと!あんた傷口塞がったのになんでここで息を引き取っちゃうのよ!」

ちゃんと確認はしていなかったが、スッと息が無くなった気がした。
私は涙をハクシの顔にボロボロとこぼしながら『死ぬな!』と随時訴えかけ続けた。

「天人が俺の為に涙を流すなど一生ない事だと思っていたが、まさかそんな日が来るとは思わなかった。」

ハクシはちゃんと目を開けてこちらに話しかけている。
死にそうだと勝手に思い込んで、泣いてしまった自分が、恥ずかしさのあまり顔が沸騰しそうだ。
完全に早とちりである。

「べっ、別にあんたの為に泣いてた訳じゃないわよ!」

ハクシは鼻で笑いながら、上半身を起こしながら周りを見渡した。

「フィーレはどうした?」
「ハクシが倒れてから、いつの間にかどっかいったわ。」

ハクシはそのまま立ち上がる。

「翼も取り戻せたしアサト達と直ぐにでも合流しよう。多分外で俺達を来るのを待っているかもしれない。」

直ぐに行動に移そうとするが

「まって!」

私はハクシを呼び止める。

「いますぐにこの翼をつけられないの?」
「オペをする道具がないから無理だろう。それに今ここでするのは危険がありすぎる。」

そんな事はわかっている。
でも自分の翼が痛々しいまま目の前に存在している事が、どうしても耐えられなかった。

「危険なのは承知の上…。どうしても今やってほしいの!道具はかき集めるわ!」

強い眼差しをハクシに送る。

「君自身の体力が持つかどうかどうかも…」
「私は耐えてみせる!」

言い切る前に言葉を力強く遮った。
ハクシは渋い顔をしながら、考え込んでいる。
しばらくして渋々言葉を発する。

「…わかった。最低限の道具さえ揃えられるならば、実行してやろう。」

私はハクシが指定した最低限の道具を集め始める。
必死に探してある程度揃える事が出来たのだが、麻酔となる代わりのものが見つからなかった。

「これでは無理だな。」

キッパリと断られた。
それでも諦める事が出来ない。
私は恥を押し殺し、屈辱的だがその場にひざまずいた。

「…お願い…します。」

姿勢を正し頭を深々と地に付けてお辞儀をする。
機人に対してそこまでする事は、ハクシも驚きを隠せていないであろう。

「どうなっても自分で責任を取ってくれよ…かなりの苦痛だが、生きて帰って来い…。」

ハクシはオペの準備を始める。

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