短編集「めおと」

あおみなみ

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あいさつ通り

失礼な子供たち

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 杉村妻はその日、コンビニで買い物をしていた。午後3時頃だったろうか。
 先ほど行ったスーパーで液体洗剤を買い忘れたのを思い出したのだ。
 行きつけのスーパーと同じ系列のコンビニだったため、PプライベートBブランド商品は値段も変わらないし、抵抗なく買える。

 小学生くらいの女の子2人がグミをつるしで売っているコーナーにいた。
 杉村妻がレジで精算を終えると、「あのっ、お買い物ですか?」と1人が声をかけてきた。

「え?ええ…」

 そこで、声をかけてこなかった方の子供が、かけた子を軽く後ろに引っ張り、小声で話し始めた。

「ちょっと…その人違うよお…」
「だって…」
「着てるものも安物っぽいし、こんな時間にこんなところにいるわけないし…」
「でも顔…」
「確かに似てるけどさあ…」

 どうやら自分について話しているようだったが、少なくとも杉村妻はどちらの女の子たちも知らない。
 ご近所の子供なら、顔と学年ぐらいは漠然と覚えているが、そういう子たちでないのは間違いない。

 杉村妻は、どうしたものかと思いつつ、その子たちに軽く会釈をして店を出た。

 それにしても、誰と間違えたのか知らないが、はやはりひっかかる。

(ヒトの着ているものを安物っぽいって…失礼しちゃうわね。そりゃまあ高いものではないけどさ)

 子供はどんなに礼儀正しく賢かったとしても、無遠慮でナチュラルな失言は割とやらかしがちである。
 そこに女の子特有の早熟おませさやシビアさが加われば、ファッションチェックなど普通にやってしまうだろう。

 そんな些細なことで、いちいち腹を立てるのも大人げない。
 いっそ、「…なんてことがあってね。だからちょっといいお洋服、買ってもいいかな?」などと言って、愛読しているファッション誌『cinquantaineサンカンテーヌ』で見かけた素敵なワンピースなどオネダリする呼び水になるかもと、前向きに考え直した。
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