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花婚式 4th Wedding Anniversary
17:00
しおりを挟む客層が比較的上品な女性が多い生活雑貨店で、週4のバイト。
それでも体力も気力もそれなりに使うので、休日には疲れがそれなりに出る。
32歳ともなると、学生時代の友人は、子育て真っ最中という人が多いから、1人の休日を過ごすことが多くなった。
恵介は業種柄、このご時世でもリモートワークが利かないが、不定休なので私の休みに合わせて希望を出してくれる。
でも、今日はちょっと外せない仕事があるとかで、そうはいかなかった――花婚式の記念日なのに(まだ言ってるし…)。
天気がよかったので、気になっていたカーテンの洗濯ができたのはいいけど、結局、あんまり有意義に過ごしたとは言えないなあ。20分と想定した仮眠は2時間取っちゃったし。
◇◇◇
気を取り直して、1カ月前に新装オープンした「スーパー ゴールデンライオン」に行った(しかし、すごい名前だな…)。
この店は県の西部に本社があって、県内に何店舗かあるのだが、今まであまり縁がなかった。
最後に行った記憶は、たしか2年前かな。
2人で県南の観光地に行った帰り道で、うちから20キロほど離れた、隣の市にあった店にふらっと入って、お寿司やお弁当を物色した。
「もう今日は作るの面倒!でも外食もなあ…」ということで、いわゆ中食で夕ご飯を済まそうということで話がまとまって、「あの店、あんま行ったことないからどう?」と、恵介が看板を指して提案したんだった。
大きからず小さからずの適度な規模で、雰囲気も明るくていい。
6時台にはお弁当に値引シールがついていたので、すぐに食べる分と、買い置きしておきたいものを買って帰ったんだった。お弁当はおかずの種類が多彩で安くて気に入った。
「うちの近くにもできればいいのに」
「あずみだったら毎日お弁当買いそうだね」
「やだ。そんなことしないよー」
一歩間違えたら家事へのダメ出し、当てこすり、要するに「モラハラ」とも取れそうなセリフだったけれど、あのときはさらっと流していたはず。
◇◇◇
乳製品のコーナーで品物を見つめていたら、品出しをしていた従業員さんに、「ねえ、お客さん、少し前に南白根のお店に来てなかった?」と声をかけられた。
「え?ああ――その辺なら行った記憶ありますが…?」
多分、2年前のあのときの話だろう。
「やっぱり。背が高くて髪がきれいなお嬢さんだから覚えてたのよ~」
マスクをしたままとはいえ、大きな声でよくしゃべる。
しかも仕事中に、客に向かってこのフレンドリーさ。
大丈夫か、この人。
「あのときのヘアスタイルが素敵だなって思ってね。
ほら、おばちゃんも長さは十分なんだけど、ボリュームがねえ…あなたみたいにきれいに決まらないよ~」
と、その従業員は自分の髪を触り始めた。
(おいっ!さすがにそれはNGでしょ!)と内心突っ込んでみるけれど、従業員の女性は構わず続ける。
「あのとき一緒だった人、旦那さん?美男美女で目立ったわよ~」
「やだ、お上手ですね」
「いや、ほんとほんと。私、若くて幸せそうなカップル見るの大好きでねえ」
そのとき勤めていた店がこの間閉店したが、たまたま市境近くに住んでいたので、こちらの新店に移りたいという希望が通って、めでたく異動したという。
(じゃ、その仕事を失わないように、もっと真面目にやった方がいいですよ)と思いつつ、もちろん口には出さず、少しずつ距離を取った。
「また来てね!あの素敵な旦那さんと一緒にね!」
知人が働いている店でも、ここまでフレンドリーに話しかけてくることはないだろう。
私などよりずっと接客向きの性質かもしれないが、フレンドリー過ぎて職を失うことがありませんようにと、他人事ながら思った。
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