嵐を呼んだ英国男子

旅行貯金

　我ら地方民は、東京でのイベントやライブに参加するとなると、交通費だけで一苦労です。
　自家用車で行くので、ガソリン代と道路料金がそれに当たります。

　９月22日日曜日17時からの公演を押さえたので、ライブの後は1泊するとして、ホテルのチェックイン時間までに東京に行ければいいかなという、ざっくりした見積もりでした。

　お宿は、爆風スランプの『嗚呼！武道館』にも登場する、いわゆる「武道館の隣」こと九段くだん会館に取りました。余計な修飾語を付けるなら、残念ながら「今はなき」となります。
　2011年、東日本大震災に起因する天井崩落事故の後、廃業に押いこまれたというニュースを見たときは、何とも言えないものがこみ上げてきました。

　それはさておき。
　家族分の交通費に宿泊代、そして食事代となると、やはりそれなりの軍資金が必要です。
　ライブなどほぼ行ったことのない私どもですから、物販に幾ら落とすかまでは考えていなかったものの、「多ければ多いほどいい」のはたしかです。

　そこで、旅行のために特別会計予算を立てることになりました。
　今となっては「どうしてそうしようと思った」のかが謎なのですが、エスニックな雑貨屋さんで、南米某国（ペルーだった気がします）の陶製の豚の貯金箱を買い、そこに500円玉や「つもり貯金（＊＊下記注釈）」を少しずつ貯めました。

　旅行が目前に迫った９月初旬、もういっぱいになってお金が入らなくなったのを潮時として、カナヅチで割って計算してみると――10万円弱たまっていました。
　そう贅沢な旅行ではないので、多分これで十分です。

「たまるまでのワクワクや、貯金箱をたたき割ったときの爽快感を味わいたくて、みんなで頑張りました！」

　後付けにはなりますが、わざわざこんなクラシックな貯蓄方法を取った理由はコレです。
　というか、「コレだったことにしよう」といったところです。

　ところで、豚の貯金箱は日本でも昔からポピュラーですが、最近例えば100均あたりの商品を見ると、黒いゴムぶたがおなかのところについているようなものが多い気がします。これならお金の出し入れがしやすく、ある意味使い勝手がいいとは思いますが、一度入れたら割らないと中身が出せないという緊張感こそが、「ぶたちょ」の肝であると思います。

　私たちの旅行費用を３カ月ほど守ってくれた「ペルー（仮）の豚くん」は、コンパクトなまん丸ボディながら、見た目よりもずっと大食らいで、サイケデリックでいながら素朴な雰囲気のあるカラーリングの、愛嬌たっぷりのかわいい子でした（それに嬉々としてハンマー打ち付けるとか…）。

　似たようなものはないかと検索してみましたが、やたらおしゃれで洗練された雰囲気の、しかもなかなかお高いベルギー・ポンピドゥ社の製品が、メルカリで何件かヒットした程度です。



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ジュースを飲んだつもりで100円、バスで一区間分歩いて節約して50円、値引き品を買って差額分をキープするなど、実際にはかからなかったものを支払ったものとみなして貯める方法。