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第34章 【終】オレンジミント
気持ち悪い!
しおりを挟むそのときはちょうど順一が交換ノートを持っていたので、私は仕事帰りにいつものポストを覗いた(幸奈のお迎えは実家に頼んだので、あしからず)。
つい気になって、その場で開いて読んでみる。
「今日は突然ごめんなさい。
こんなときに出すべき話題かは分からないけれど、君が高校時代、人目に付かないところで、相原さんに抱きしめられてキスしているところを見かけたことがあります。多分、掃除当番の最中だったんじゃないかな。
ちょっと、いや、かなり妬けたけど、キスされた後の恥ずかしそうな君の上目遣いが本当にかわいくて、つい見とれてしまいました。
貧弱な体格の俺は、君にあんなふうに上目遣いで見られることはないけれど、もし学校でこっそり君とキスできるなら、図書館の片隅で、同じ目の高さで――なんて妄想したものです。
気持ち悪いですね、ごめんなさい」
◇◇◇
私は発作的に順一の部屋の呼び鈴を押していた。
「あ…真奈美」
ちょっと驚いた後、恥ずかしそうに目をそらす順一の顔は、少し赤く見えた。
あんなことをした後、こんな純情少年のような反応を見せるのが順一という人物だ。
「気持ち悪い。ほんっとあなたって気持ち悪い!」
そう言って順一の首に巻きついた。
「変な妄想していないで、あのとき告白してくれてもよかったのよ?」
「本当に真奈美は勝手だな。絶対OKしてくれなかったでしょ?」
そう言いながら、順一の腕は私の背中に回り、がっちりホールドしている。
「私のそういう勝手なところも好きなくせに」
「…まあね」
ごめんなさい、お母さん、お父さん、幸奈。
ちょっとだけ帰りが遅くなるかもしれません。
今日はせめてもう少しだけ、オレンジミントを味わいたいのです。
【完】
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