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第28章 母娘
就活娘と母
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翌朝の新聞で、「こども図書館スタッフ募集」という求人を折込広告で見つけた。
「当院で運営するデイジー図書館(こども図書館)の館内整理、貸出、事務作業等を担当してくださる方を募集します。
財団法人荒木田誠心会 荒木田総合病院附属デイジー図書館」
最初の3カ月は試用で、その後正式採用になるということだ。
休みは週に2回(不定)だけど、病院スタッフのための託児所も利用できるらしい。
給料はぼちぼちだけど、時間も結構理想的(8時半~17時半)。
条件は悪くないから競争率は高そうだけど、応募してみる価値はありそう。
母に相談してみたら、「いいんじゃない?ここからなら直通バスもあるし、自転車でも行けるし」と好感触だ。
「それにあんた、司書の資格持ってたじゃない」
「あー…こういうところはあまり関係ないかもしれないけど、ないよりはましかな?」
「まあ、前向きにやってみなよ。履歴書の用紙なら私のが余ってるし、写真も撮ってあげる」
「写真?」
「ふふふ…」
母は、履歴書用の写真を家で父にとってもらっているのだそうだ。
壁に淡い水色の布を張って、そこでふつーにパシャっとやるだけ。外のスピード写真よりずっと緊張しないで撮れるよって、しれっとして言う。
「最近はスマホのカメラだってバカにできないんだから、有効に活用しないとね」
「助かります…」
変な話、「家に帰ってきてよかった」と心から思った。
居心地は悪いだろうけど、背に腹は代えられないくらいに思ってきたら、何かと協力的なので拍子抜けしてしまう。
「彼」という先輩を妄信的に好きだと思い込んでいたのと同様、私に当たりが強い、やたらマウントを取る母だというのも思い込みだったのかな。もっと早く頼ればよかったな…。
「ちょっと、どうしたの?」
「あ…ごめん。最近涙もろくて。年かな」
「あら、まだ30前のくせに、このお母様にケンカ売ってるのかな?」
「へへ…」
本当に、帰ってきてよかった。
「当院で運営するデイジー図書館(こども図書館)の館内整理、貸出、事務作業等を担当してくださる方を募集します。
財団法人荒木田誠心会 荒木田総合病院附属デイジー図書館」
最初の3カ月は試用で、その後正式採用になるということだ。
休みは週に2回(不定)だけど、病院スタッフのための託児所も利用できるらしい。
給料はぼちぼちだけど、時間も結構理想的(8時半~17時半)。
条件は悪くないから競争率は高そうだけど、応募してみる価値はありそう。
母に相談してみたら、「いいんじゃない?ここからなら直通バスもあるし、自転車でも行けるし」と好感触だ。
「それにあんた、司書の資格持ってたじゃない」
「あー…こういうところはあまり関係ないかもしれないけど、ないよりはましかな?」
「まあ、前向きにやってみなよ。履歴書の用紙なら私のが余ってるし、写真も撮ってあげる」
「写真?」
「ふふふ…」
母は、履歴書用の写真を家で父にとってもらっているのだそうだ。
壁に淡い水色の布を張って、そこでふつーにパシャっとやるだけ。外のスピード写真よりずっと緊張しないで撮れるよって、しれっとして言う。
「最近はスマホのカメラだってバカにできないんだから、有効に活用しないとね」
「助かります…」
変な話、「家に帰ってきてよかった」と心から思った。
居心地は悪いだろうけど、背に腹は代えられないくらいに思ってきたら、何かと協力的なので拍子抜けしてしまう。
「彼」という先輩を妄信的に好きだと思い込んでいたのと同様、私に当たりが強い、やたらマウントを取る母だというのも思い込みだったのかな。もっと早く頼ればよかったな…。
「ちょっと、どうしたの?」
「あ…ごめん。最近涙もろくて。年かな」
「あら、まだ30前のくせに、このお母様にケンカ売ってるのかな?」
「へへ…」
本当に、帰ってきてよかった。
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