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第27章 決断
病院にて
しおりを挟む万が一を考えて、病院選びの参考に口コミサイトを見た。
といっても、レビューなどほとんど書き込んでいないか、何かの報復のような最低評価がぽつん、くらいなのだけど。
最終的には「何かあったとき通いやすい」が決め手としてクリニックを選んだ。
◇◇◇
千奈美は保険証の生年月日から未成年だと分かるし、見た目も年相応。そこに年長の付添人――ということで、「お身内の方ですか?」と言われ、とっさに「姉です」と答える。これは打ち合わせ済みだった。
特に証明するものを求められなかったんだけど、いいのかな…と思いつつ、一緒に診断結果を聞くことになった。
(本当の姉妹だとしても、そもそも嫁いだ姉なんて加入保険はもちろん、姓も違う可能性があるし、現実的に証明は難しそう)
「妊娠――は、検査薬で知っていたんだよね?12週目に入っています」
「12週…」
心なしか千奈美の顔に少し安堵の色が浮かんだ。処置が早ければ、まだ堕胎は間に合う。それを千奈美も知っていたようだ。
「産まないよね?一刻も早く手術したいんだけど、ご両親はこのことは…」
「まだ知りません」
「じゃ、早く話して。お相手にもね。書類にサインしてもらう必要があるし」
「あの…もう少し待ってもらえませんか?」
「え?」
これには診察した医師と私がほぼ同時に反応した。
「カレともう一度話し合いたいんです」
「そう?なるべく早くね」
少なくとも先生は、もう堕胎手術ありきで話しているようだ。
高校生(の年齢)の子が来れば、それはそうかもしれないけれど、中には中高年の女性で、妊娠から一直線でコレを言われる人も珍しくないらしい。
ひとつの生命が宿り、産み出されることは間違いなく尊いことだが、現実というのは残酷なほどドライなものだ。
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