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第15章 親に戻る

察する

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 高村宗太の家を訪れるのは何カ月ぶりだろう。

 今まで彼は、明らかに私に合わせて休日の外出を控えていた。
 私がいつ来てもいいようにと部屋の清潔を保ち、時には手際よく料理を振る舞ってくれることもあった。
 パスタや丼もののようなもさらっと食べられるものばかりだが、使う具や仕立てに普段から料理をしている人の発想が見られた。

 彼は器用なので、料理もセックスもうまい。というよりも、何かと「行き届いている」感じがする。
 後ろ暗い関係ではなく、こんな人を恋人などパートナーに持つことができれば、どんなに幸せだろうと思う。

◇◇◇

 私と宗太の関係は、とことん私にとって都合のいいものだ。
 「彼」と私の夫婦関係が、とことん「彼」にとって都合のいいものであるのと同様である。
 いわば、私たちのゆがんだ関係のしわ寄せが、宗太との関係に及んでしまっているといってもいい。

「俺は真奈美を愛しているから」
 と宗太は言う。
 私は宗太のことが好きだが、愛してはいない。
 まさに今の私のしていることは、宗太の愛情にあぐらをかいているだけなのだ。

◇◇◇

 人目を気にしつつドアをノックすると、中で軽く言い争うような様子がうかがわれた後、「はーい」と、若い女性の声がして、ドアが開いた。
 特別美人ではないが、若くて前向きな雰囲気のある、大柄ではつらつした女性がひょこっと顔を出し、私を見るなり「あなた真奈美さんですね?」と言った。

「ええ…そうですが?」
「会えてよかった。あなたと話がしたかったんです」

 どこかとげとげしさを隠せないようで、歓迎している雰囲気はないが、女性は笑顔でそう言った。
 女性の後ろには、うろたえたような表情の宗太が立っていた。

 …ああ、そういうことか。
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