いつかは さようなら～よかれと思うことをしてくれなくていい。嫌なことをしないで。

第11章 【番外編】妻を愛し過ぎている男

困ったお嫁さん

　僕が25、マナちゃんが24のとき結婚した。
　僕はまだ勤め始めて3年目だったから、そんなに給料は高くないけど、役所勤めだからこれから徐々に上がるし、足りないときは実家に言えば、いくらでもお金を出してくれる。
　生活の心配はないので、マナちゃんの勤めは辞めさせ、携帯のアドレスも全部消すように言った。
　退職後にわざわざ付き合う必要なんかないし、誰かから変な影響を受けたら困る。
　マナちゃんは僕だけを見ていればいいんだ。

◇◇◇

　マナちゃんは新婚旅行から帰って2か月後、「妊娠した」と言ってきた。
　赤ちゃんは欲しいと思っていたので大喜びしたけど、予定日だって言って教えてくれた日がどうも変なんだ。
　計算すると、結婚してから十月十日ときつとおかに満たない。
　マナちゃんは「おばあちゃんがそれは俗説だって言っていた」とか「学校で計算方法を教わった」とか言い張って、挙句、インターネットで必死になっていろいろな情報を拾ってきて、僕に見せようとするんだけど――一生懸命すぎて信用できない。
　月足らずってことは、結婚前にどこかの男とセックスして、そいつの子供ができた可能性だってあるってことだよね。
　そんな托卵みたいなやり方はいただけないな。
　いくらマナちゃんがかわいくても、僕以外の男とヤッて、しかも子供まで作ったなら許せない。
　生まれてから親子鑑定して、クロだったらさすがに「ナシ」かな。

　でも、ここで自分の几帳面さに救われる。
　きっとマナちゃんもほっとしたと思うんだけど、僕はマナちゃんを抱いた日は、必ず手帳に付けていた。予定日から10カ月と10日さかのぼったら、ちゃんと「やっていた」日だった。
　親子鑑定とか言って半泣き顔にさせちゃったけど、ちゃんと謝ったし、これで丸く収まった。
　あとは元気でかわいい赤ちゃんを産んでもらうだけだと思った。

◇◇◇

　マナちゃんは妊娠した後、ご飯の炊けるにおいが苦手だとか、つわりで吐いてばかりいるせいで体に力が入らないとかいって、家事をサボってばかりいた。
　それだけならまだしも、仕事が終わって疲れて帰った僕に、「何か食べるもの買ってきて」って頼むなんて、どういう神経をしているんだろう。
　おかゆかヨーグルト、なんていうぼやっとしたオーダーも気に食わないし。
　あと、ちょっとしたことですぐ泣くようになったのも癇に障る。
　今までは体罰だけは避けていたんだけど、もうそういう段階ではないことに気付いた。
　物分かりの悪い子は、体で教えないとね。

　つわりが収まったとかで、料理は頑張るようになったけど、相変わらず下手くそで、とても食べる気になれない。
　でも頑張ってるみたいだから褒めてあげた。