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第6章 今さらの自己紹介

私たち

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 気が変わったのと、いろいろ紛らわしくなったのと、2つの理由により、自己紹介をしておこうと思う。
 この先の自分語りでも、基本的には「彼」と「私」と「娘ちゃん」になるとは思うけれど、一応。

 私は相原あいはら真奈美まなみという。
 生まれてこの方、とある大きめの地方都市を離れたことがない。
 その土地で大学まで進学して、その土地の人と結婚したからだ。
 バカでポンコツのくせに、実は本を読むのだけは結構好きで、ありがちな言葉の誤解釈とか言い間違いにモヤッとしてしまう方だ。
 料理あんまり得意じゃない――と思わされてきた(この話はまた後ほど)。
 昔から顔だけは褒められてきたけれど、少し太りやすい体質のようで、「彼」こと我が夫からは、「君はかわいい顔してるだけに、体形が崩れると、がっかり度合いが半端ないんだよね」と言われる。

 結婚前は天野あまのという姓だったので、イニシャルは変わっていない。
「彼」は私の名前を、高校時代から一貫して「マナちゃん」と呼んでいる。

+++

 1歳年上で高校の先輩だった「彼」は、相原幸助こうすけさん。
 地元の国立大学を経て、市役所に勤めている。
 身長は175センチ。かなりあっさり目だけど整った顔をしていて、多分年をとってからの方がイケオジ扱いされるタイプではないかと思う。
 ワタクシ的には高校時代から、どストライクの容姿をしていたけれど、「地味」「影が薄い」って言われることも多かったせいか、多分ライバルは少なくて助かった。
 今となっては、むしろライバルがいっぱいいて成就しない方がよかったなあと思う日が、毎月最低28日以上あるけれど。

 園芸委員会で知り合って、植物についての知識が豊富で――って、当時のことを思い出すと、能書きばかりであんまり手を汚したがらない人だったなーという一面が思い出された。
 私は結構土のにおいが好きで、手で草抜きをするようなチマチマした作業も嫌いじゃなかったので、どうやらそういう姿を彼に見初められたらしい。
 見初められた、というよりも「ターゲットにされた」の方が正しいかもしれないけれど。

 私は文芸部に入っていて、2年の前期から部長をやっていた。
 ほかの部員たちは、部活に入るのは必須だから籍だけ置きたいという下級生ばかりだったので、部室ではいつも1人だった。
 それに対し、彼は帰宅部だった。スポーツをする人を脳筋バカと軽蔑し、文化部系の部員をオタクと変人ばかりと侮辱していた。
 そのままの言葉を使ったわけではないけれど、「そうとしか読み取れない」言葉で批判し、だから自分は帰宅部を「選択」していると言っていた。
 友人は(一応私も含め)文化部の人ばかりだったので、多分、脳筋バカは異世界の人物で理解不能、文化部の方は近親憎悪に近かったんじゃないかと思う。

+++

 娘には幸奈ゆきなという名前を付けた。
 生まれたときからクッキリした二重まぶたで、顔は完全に私似だと言われている。

 名前について、勘のいい方はお察しだろうけど、彼と私の名前から1字ずつ取った。
 響きは悪くないし、昨今多いやたらキラッキラした名前でもない。
 ただ、ある教育関係者の話を何かで読んだことがあって気になっていた。
「自分の名前から字を取って子供に名前を付ける親御さんは、意外とモンスターペアレントになりやすい傾向がある」
 意外と、とか、傾向があるというあたりにおっかなびっくり感が出ているけれど、経験からの実感なのだろう。

 自分大好き、子供大好きというと、ポジティブで悪くない気がするんだけど、「自分たちが一番、他者はゴミ」まで進んでしまう可能性もある。
 キラキラした他人には読みづらい名前をつけてしまう人の方が、一見困ったちゃんに思えるけれど、名前付けて満足しちゃったくらいのノリの人だと、子供の教育にはあんまり関心を示さず、したがって文句も言ってこないということでは?みたいな分析をしていた。

 人それぞれなので、一概には言えないだろうけど(逃げ)。

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