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第2章 変てこハネムーン
蜜月(笑)
しおりを挟む彼はいつも「君を幸せにしたい」「君の笑顔をずっと見ていたい」と口癖のように言っていたけれど、私がこうしてほしい、あれが欲しいと具体的にいっても、希望通りにしてくれたことはなかったし、多分これからもないと思う。
私は子供のころから、とある北欧の絵本の人気キャラのグッズが好きで、特に目つきが悪くて騒々しいちっちゃな女の子がお気に入りだったんだけど、「こんなのかわいくないじゃん。本当に趣味悪いな」って、同じ絵本シリーズに出てくる風来坊みたいな男の人のグッズをよく買って渡してきた。
「君はこれが好きなんだよね?喜んでもらえるかと思って。
男がああいう雑貨屋に入るのって、死ぬほど恥ずかしいけど、君のために行ったんだ」
って言ってた。
その風来坊さんは確かに格好よくて、一番人気のキャラではあったけど、私はあんまり好きじゃなかった。
でも、“死ぬほど恥ずかしい思いをして”買ってきてくれたものを要らないって言えないし、使っているうちに愛着が湧くかもしれない。
マグ、タオル、手帳、いろいろ買ってもらった。
気分でたまたまほかのものを使うと、途端に不機嫌になるので、それしか使わなくなった。
+++
手帳は、友達がいないし仕事もしていないので、書き込むことはなかったから、わずかに親戚の集まりの用事ができたときに書き込んだり、お気に入りの雑誌の発売日やテレビ番組を見る予定を書き込んでいたら、そのことでバカにされた。
「字、n箇所間違ってたよ。幾ら四流でも大学出ているんだから、誰に見られても恥ずかしくないように書いてね」
「雑誌の発売日ぐらい、普通覚えてるもんじゃないの?あんなの書き込む人初めて見たよ」
「あんな番組見てるの?低能だと思われるからやめなね」
どれも本当は言われて嫌だったけれど、いつも笑いながら言っていたので、怒り出したり物を壊したりするよりは何倍もましだった。
でも手帳って、人に見せるために書くものではないよね…?あと四流大とかも言わなくていいじゃん。
(どこかでFランク大学って言葉を覚えてからは、Fラン、Fランって歌うように言われた)
+++
昔はドラマが大嫌いだったけど、今は大好きでよく見ている。
外に出ることが少なくなったので、テレビを見るくらいしか楽しみがないせいもあるし、自分以外の人の人生を覗き見るのが楽しい。
でも、録画しておいても勝手に消されちゃう。
そのかわりと言ってはなんだけど、
「君はこういうのを見るべきだよ」って、CSとかでやっている教養番組を片っ端から録って、未視聴状態になっていると機嫌が悪い。
興味もないし、全然面白くないんだけど、知識がつけば興味も湧くのかもしれない。
一生懸命覚えて、ご飯の時間にその話題を出したら、「何それ?」とか「あー、付け焼刃で覚えると、そういうこと言い出すんだよね」とか言われた。
新聞を一生懸命読んで、政治の話題を自分なりに振ろうと思ったけど、「付け焼刃(笑)」って言われるのが怖くて黙ってた。
黙ってると「君、話題ないの?幾ら専業主婦でも視野が狭いのはどうなのかな」って言われる。
考えすぎて、頭がグルグルして、今日は暑いね、寒いね程度しか言えなくなるけど、「分かりきっていることしか言えないんだね」って呆れられた。
だんだん彼と話をすることが怖くなっていった。
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