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第2章 変てこハネムーン
人間関係etc
しおりを挟む時系列的には少しさかのぼるけど。
私は本当はもうちょっと働きたかった。
職場も仕事も意外と自分に向いていると思えたからだ。
高校はもちろん、大学でもろくにできなかった「友達らしき人」も、その職場ではできた。
結婚したときに、
「職場の付き合いは職場の付き合いでしかないでしょ」
って、その人たちの連絡先はすべて消された。
まだ1年しか付き合いがないしと、私も結構あっさり諦められた。
友達がどうしても欲しかったわけではないけれど、いないと寂しいと思うこともある。
子供ができたらママ友さんができるかもしれないし、そのときでいいかと考え直した。
+++
そういえば、大学の卒業旅行はハワイって言ったけど、実はこれもからくりがある。
たまたま大学4年のときに行ったというだけで、一緒に行ったのは彼の妹とその友達(全員同じ専門学校の子で、私より2歳下)だった。
卒業旅行したいけど、1人で行くのも怖いし、一緒に行けそうな人もいないしって言ったら、
「うちの妹、今年の夏、同じ専門の子と一緒にハワイに行くって言ってたから、そこに同行したら?」
と彼が提案したんだ。
でも私、妹ちゃんと仲がいいわけでもないし、さらに妹ちゃんの友達ともなると、旅行のときに初顔合わせだった。
みんな「この人誰?」って感じだったと思う。
彼にしてみると、妹ちゃんと仲良くなるチャンスを「作ってあげた」くらいの感じだったと思うけど、どう考えてもこの旅行のおかげで妹ちゃんとの仲は険悪になった。
+++
ビーチとか、いろんな名所とか、ショッピングセンターとか、どこに行っても一応気を使ってみんなと距離を取っていたんだけど、ビーチで男性に声をかけられたりすると、妹ちゃんが飛んできて、その人を追っ払う。
私だって別に誘われてついていこうとしたわけじゃないのに、「ああいうの本当に気を付けてよ。私がおニイにしかられちゃう」ってきつく言われた。
私は旅行の間じゅう、かなり萎縮してたから、「ごめんなさい」としか言えなかった。せめて「誘いに乗ったりしないよ」って言えばよかったんだよね。
小さな声で「まったく。子守も楽じゃないわ…」って言ったのも聞こえた。
2歳下の子にそんなこと言われても、何も言い返せなかった。
ホテルのロビーで、妹ちゃんとその友達が
「あの人友達いないの?」
「何か卒業旅行一緒に行く人いなくてかわいそうだから、
邪魔して悪いけど仲間に入れてやってって言われて」
「うわ、みじめ。でも何かわかる」
「うん。何か謙虚でおとなしげな感じだけど、癇に障るタイプ?」
「それそれ!」
みたいに話しているのが聞こえた。
日本に帰ってから彼に聞いたら、
「そういう言い方しないと、頼みづらいでしょ?
人に頼むときは下手に出るべきなんだって、
君も来年は社会人なんだから覚えておきなよ」
と言われた。
彼は私と違って頭がいいし、もう一応お勤めをしている人だから、そう言われると言い返せない。
実際は「卒業旅行したいけど、一緒に行く人もいないし、別に行かなくてもいいか…」と言ったつもりだったんだけど、「別に行かなくても」の部分は聞こえてなかったのか、彼の頭から間引かれていたようで、周囲の見方も、「ぼっち彼女の夢をかなえた、いい彼氏」みたいな感じになった。
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