初恋ガチ勢

あおみなみ

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第25章 それが私の「役割」だと思われてる、きっと。【メグと大輔】

俺たちの関係【大輔】

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 メグとチャットツールでいつでも連絡できるようになって、本当によかったと思う。

 それは、飯食ったら腹がふくれて幸せになるとか、寝ると頭がすっきりするとかと同じ、すごく当たり前のことなんだが、さりげなくメグのいいところを知ったり、細かい情報を少しずつ集めたりできるってことでもあるんだ。

 俺は「こういうの興味ないか?」ってメグにネットニュースのリンクを送ったりする。
 メグもまた、「お返しに」って同じようなものを送ったり、ツイッターの面白いツイートをシェアしたりする。
 情報そのものより、メグが面白いと思っているツボが意外と俺に近いってわかるのがうれしい。
 趣味嗜好このみが少し違っても、この部分が近いやつとはうまくいくと思う。
 
 そういやメグの母親が書いた映画の記事を送ってくれたことがあった。
 それは俺の好きなホラー映画についてで、俺とは意見が違うんだけど、プロだから文章表現が巧みだし、認識違いがないようにきちんと調べてるのがよく分かるし、すごく好感の持てるものだった。
 コタツ記事っていうの?テキトーなこと書き散らしてる、ほかのネット記事とは大違いで面白かった。

◇◇◇

「お母さんさんはホラー好きなのか?」

『それは仕事だし、よく分からない世界だから慎重に書いたみたいです』

「面白く読んだよ。こういう見方もあるんだなって思った」

『母が一番好きな映画って、小説家と古本屋のおじさんが何十年も文通だけする話なんですよ』

「それ面白いのか?なんか地味そうだな?」

『でも、「究極のラブストーリーだ!」とかって』
『檜先輩も大絶賛してるみたいだし』

「ああ、年寄りの見る映画なんだな」

『檜先輩に言っちゃいますよ!』

「冗談だ。でも、今の俺たちもそんな関係だよな?」

 まあ、俺は何十年もLINE交換ばかりしているつもりはないがな。

◇◇◇

 夏合宿は、夏休みに入ってから7月いっぱい、兵部部長の別荘で行われた。

 別荘とはいったけど、どう考えてもテニス部用に建てた合宿所としか思えない。
 参加できるのは正レギュラーと、準と正を行ったりきたりしてる部員、せいぜい合計15人程度だが、外国のホテルみたいな部屋が個室であてがわれるし、テニスコートも4面あって、トレーニングマシンも充実してる。
 あと、「学業も手を抜かせない」ってことだろう。学校の教師陣より有能そうな講師がやってきて、ちょっとした授業や個人指導までしてくれた。

 そんな中、夜はずっとメグとLINEしてた。
 帰りに寄った道の駅で、地元の織物で作ったクマのぬいぐるみと国産の紅茶を買った。

 ぬいぐるみはもちろんメグに。
 大きさの割に結構な値段がしたのが気になったが、女が好きなものってそういうもんなのか。
 あのウサギの顔が付いた小物入れもそうだが、ただの布なのに高い。

 そして紅茶はあの美人店長、メグのママさんに。
 店で使ってくれてもいいし、家でメグと飲んでくれてもいい。
 きっと喜んでくれるだろうけど、ここだけの話、少しだけ、ウザったい檜さんへの嫌がらせの意味もある。

 買ってるところを3年の騒々しい先輩に見られて、「オークラ、それ抱っこして寝んのか?マジうけんだけど!」とバシバシ腕をたたかれたのがウザかった。
 兵部部長が「なるほど。カフェオーナーと女子高生なら、そのあたりが順当だな」とか耳元で言ったが、何で、というか、どこまで知ってんだ?

 土産があれば、渡すために会う口実が作れる。

「月末に合宿から戻る。土産を渡したい」「俺が持っていても仕方ないもんばかりだから、素直に受け取れ」と、メッセージを送った。

「はい、ありがとうございます。楽しみにしていますね」

 メグはいつもどおり――だと思っていた。
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