初恋ガチ勢

あおみなみ

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第10章 もし、本当に千弦さんに会えたら【千弦と聡二】

中学生のくせに、本当に随所随所で決めてくれるわ、この子。【千弦】

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 結局私は芽久美に甘い。
 シャワーだけ浴びて、髪をしっかりと乾かしてから、アンダーシャツの背中に使い捨てカイロを貼って出かけることにした。
(こんな姿、とても聡二君には見せられないわ…)

 闇夜に乗じてテキトーな格好をしていくのもどうかと思うし、最近、芽久美が私の着るものやヘアスタイルに結構うるさくなってきた。
 私は化粧は基本的にしないが、湯上がりに、おなじみの青い缶に入った白いクリームを丁寧に塗り、無色のリップクリームで唇を潤わせた。
「ま、血色いいし、いいんじゃない?」
「この暗闇じゃ、血色も何もないけどね」

 聡二君は今頃寝てるかな。それともお友達とこんなふうにお参りに行ってるのかな。
 最近、着るものに気を使ったり、肌や髪のケアをしたりしている最中、よく彼のことを思い出す。
 いつも気を張っていることはできないけれど、「もしこの瞬間、彼に会ってしまったら」と考えると、面倒くさがらず、自然と手が動くものだ。
 それは多分、半分接客業の人間としては好ましいことでもあると思う。

◇◇◇

「ママ、年明けちゃう!」
「まだ11時50分だよ?すぐそばだし大丈夫…」
 芽久美は今、日をまたいでしまうことと、ラズベリーのクレープを買うことしか考えていない。
 私はさっきまで聡二君のことを考えていた。
 そのせいか、鳥居の近くでスマホの画面を見ている背の高い男性が、聡二君に見えてしまった。

「あれ…檜先輩?」
「え…聡二君、どうして…」
「あ――二年参りとしゃれこんでみました。
 ここ、学校から一番近い神社ですしね」

 上等そうなダッフルコートが似合っていてまぶしい。
 中学生のくせに、本当に随所随所で決めてくれるわ、この子。
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