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第2章 あ、やっぱりこの人か…【千弦と聡二】
彼女は一体、何歳なんだ?【聡二】
しおりを挟む親戚宅に着くと、東京から帰省していた大学生のいとこ(ショートメールをくれた)に「あの店できれいな女性が日本茶を淹れてくれた」という話をした。
「え?誰だろ?あそこって頭はげたおじさんが1人で出てること多いし」
「たまたまだったみたいだから、娘さんとかでは?」
「それが、あそこ2人とも男兄弟でさ。兄貴の方は俺と小中高って一緒で今大学生。下も高校生だよ。まさか若い後妻でも迎えたか?」
「そういう感じでもなかったかな…」
根拠はないが、俺にとっては「そうじゃない方がいい」に決まっている。
大学生と高校生の義母なんてことになったら、10歳も離れていないってことだろうし。
「まあ、そんな本当にことあったらうらやまけしからんな」
ということで、俺の中で「チヅルさん」は、ますます「謎の美女」と化した。
◇◇◇
「おつとめ」をつつがなく終え、帰りの新幹線の中でネットニュースを拾い読みしていたら、変わりメニューが人気の飲食店を紹介する記事があった。
他愛ない記事だが、こういうものは、店主や女将さんの顔写真や本名、状況によっては簡単なプロフィールも載っていることがある。リスクもないではないだろうが、集客のためにある程度プライバシーを切り売りすることもあるのだろう。
「あ、そうか」
つい大きな声に出ていたようで、隣の女性がこちらをちらっと見た(にらんだ?)。
「すみません…」
俺は思い立って、「鉢の木 片山 カフェ」で検索した。
SNSで情報を発信しているかもしれない。そこで「チヅル」さんに該当する名前が出てくればビンゴ!だ。
ブログの記事がヒットしたが、さかのぼって読んでみても、それらしい女性の写真や名前は出てこない。
しかし記事の右側にリンクがいくつか貼ってあった。
「その中に『英明大近く カフェさくらの日記』というものがある。
英明大の近く?そんな店あったか?…と思いつつ、念のために見てみた。
そのブログ自体はなかなかユーモラスで面白いので、読み入っているうちに目的を失いかけそうになった。
しかも、「店主・桜井千弦のインタビュー記事はこちら」というリンクもあった。
千弦?いちおう「チヅル」と読める名前だ。
そちらも念のために見てみると、そこで紹介されていた記事には写真もあった。
(あ、やっぱりこの人か…)
小さな写真ではあるが、ナチュラルでソフトな美人オーラは感じる。
「手作りパンメニューが人気の『カフェさくら』店主・桜井千弦さん」というキャプションまでついていた。
学校の近くといわれてピンと来なかったのは、メインの通学路からは外れた位置にあったせいだ。
近隣から徒歩で通う公立の小中学生ならいざ知らず、近くといってもそうそう通らない、訪れない場所があっても不思議はない。住所を見る限り、近いことは間違いなさそうだ。
つまりこの店に行けば、またあの人に会えるってことか。
◇◇◇
新学期が始まってから、部活の仲間で同じクラスの菱沼に、「カフェさくら」を知っているか尋ねてみた。
彼はスイーツを中心に、食べ物は作るのも食べるのも大好きで、女子ともフレンドリーに広く付き合っているようなので、この手の店に詳しいのではと踏んだのだ。
「時々行くぜ。焼き菓子とか店長が気まぐれで作るから、商品が安定しないのが玉に瑕だけどな。雰囲気いいし、飲み物も食い物もうまいよ」
「そっか…店長はどんな人だ?」
「どんなって…まあ、めっちゃ美人で感じのいい人だけど」
「そうか」
「あと、俺も会ったことないんだけど、娘が英明の1年にいるらしい。店長似ならきっと可愛い子だろうな」
「え…?」
推定年齢25~27として、中1の娘ということは――10代前半でもうけたということか?
いや落ち着け。「推定よりも年齢が高い」というふうに情報を修正すれば済む話だ。
ということは…恋人どころか、結婚しているってことか?
というよりも、彼女は一体何歳なんだ?
20代半ばの女性が結婚していたとしても(実際、頭のはげたマスターの後妻疑惑もあったわけで)おかしくはないのだが、そこは無理やりにでも打ち消したい気持ちだった。
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