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第1章 一杯茶というのもなんですから【千弦と聡二】
この饅頭も――いい味ですね【聡二】
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恋が生まれるまでは、美貌が看板として必要である
スタンダール
◇◇◇
俺がいくら「身長が180超、やや老け顔だが頭がよく、不測の事態に対処する能力が高い」からって、こんなこと中3のコドモに頼むか?普通。
俺は8月末のある週末、南東北の街・片山市に来ていた。
ローカルジョーク的に「北関東の一部」などと言われる(どの辺がジョークなのかはよくわからないが)この街には、ターミナルである片山駅以外にJRの駅が9つあり、そのほとんどが無人駅らしい。
降りたのはそのうちの一つ、何年か前に80年ぶりに新設されたという「片山ふくだ駅」だ。
駅舎自体はさすがに新しくきれいだが、「先頭車両しかドアが開きません。お降りの方は先頭に移動をお願いします」と到着直前にアナウンスがあったのには面食らった。
同じようにゆったり構えていた乗客も多かったようで、俺はその慌てる大移動(少し大袈裟)の波に飲まれた。
俺が住んでいるのは、大都会ではないが交通の便はいい。少し待っていればすぐ次の電車が来るようなところだ。
こういう地方都市では、1本逃すと次は2時間後などということもザラらしい。ということは、もしここで降り損なったら、仮に次の駅で折り返すにしても、何時間もロスする可能性があるということだ。
(伯父さんの言うとおり、片山駅からタクシーに乗ればよかったかな…)
片山駅からたった1駅、4分の移動だったのだが、まさか下車するだけでこんなに消耗するとは思わなかった。
幸い周辺にコンビニや大きなスーパーなどもあり、飲食店もそこそこあったので、どこかで休憩してから行こうかときょろきょろしていたら、「サ店 鉢の木」という看板が目に入った。
サ店というのは、要するに喫茶店の昭和っぽいいい回しらしい(調べた)。
そのあか抜けない雰囲気が一周回っておしゃれに思えるほどの、刺さる人には刺さるカフェ。
それより何より「鉢の木」という名前に惹かれた。
多分、日本史でおなじみの「いざ鎌倉」の元となった逸話からとったのだろう。大好きなエピソードの一つだ。
これも何かの縁だと思い、そこで休憩することにした。
「いらっしゃいませ。1名様ですね?」
入店すると、トーンは低いが澄んだ美しい声の女性が出迎えてくれた。
その人の顔も見ずに首で返事をし(感じ悪いかな)、窓際の2人がけの席に腰をおろす。テーブルの上のメニューに目を落としたら、薄緑の付箋に「川根茶 300円[和菓子付]」と手書きされたものが、他のメニューを邪魔しない位置に貼られていた。
水を運んできた女性に「日本茶があるんですね」と尋ねると、「ええ、今日だけですが」との返事。
特別メニューということだろう。
ふと顔を上げると、声の印象より若い、小柄で化粧っ気のない感じのいい女性がそこにいた。
多分そこそこ長いであろう髪を後ろで小ざっぱりとまとめている。
「日本茶の場合はお饅頭か最中がつきます」
「じゃ、この川根茶と――饅頭を」
「かしこまりました」
◇◇◇
伏し目がちにカウンターの向こうで茶のしたくをする彼女をよく見ていたら、遅ればせに、かなり美しい女性だということに気づいた。
一見「かわいい」印象だが、全体的に整っているので「美人」ともいえる。
大きさや位置のバランスがいい賢そうな目元、軽く閉じ、口角の上がった愛らしい唇、少しとがったすっきり小鼻のてっぺんには、薄い溝が走っていた(これは後でまじまじ見て気づいた)。外国の女優なんかの顔で時々見られる特徴だ。
若く見えるが、もちろん、6月に15になったばかりの自分よりはかなり年上だろうな。
この街は「ヒナにはマレな」と表現できるほど辺鄙ではないだろうが、これだけの美貌の持ち主なら、さぞや彼女目当ての男性客の多い店なのではないか?
そう思っていたが、結局俺以外の客は、常連らしい初老の男が1人だけだった。
それも、俺が店を出る直前に入ってきたので、俺は幸運なことに、この美女と30分近く、2人だけの時間を過ごすことができた。
◇◇◇
「お待たせいたしました」
白い茶器と皿に盛られた、さわやかな緑色の液体と、一口で食べられそうな細長い饅頭。それらを彼女が長い指で俺の目の前にサーブした。
「うまい…」
一口すすって、思わず声が出た。丁寧に抽出された、ほっとする味。
俺の言葉を受けて、「でしょう?静岡の知人からのいただきものです」と、彼女が少し目じりを下げて言った。
こういうのうれしいな。彼女といい感じのコミュニケーションが取れた。
「この饅頭も――いい味ですね」
「ええ。それは消費期限が短いので、お土産で外に出ることもないみたいです。
地元でも知る人ぞ知るらしくて。買えてラッキーでした」
「へえ…」
味噌あんというのだろうか。優しい甘さと軽い塩気の食べやすい味だった。
「一杯茶というのもなんですから、お代わり、いつでもおっしゃってくださいね」
祖母が「一杯茶は縁起が悪い」と言っていたのを思い出す。
若い彼女がそれを意識した発言をしたのかは分からないが、そういうことならば遠慮なくいただこう。
少し休憩のつもりが、新幹線の中で読んでいた文庫本の続きに目を落とすほどくつろいでしまった。
するとスマホにショートメールの着信があった。「今どの辺?必要があれば迎えに行くよ」という、少し年上のいとこからのものだった。
あ、この街に来た目的をすっかり忘れてしまっていた。
「ふくだ駅近くなので多分近くまで来ています。鉢の木というカフェで少し休憩してから行きます」
「あ、あそこのコーヒーうまいよね。中学生が随分渋い店に入ったね」
まあ俺がすすっているのは、美女が淹れた緑茶なのだが。
◇◇◇
俺は実は親戚の3回忌に両親・祖父母の名代として来ていたのだ。
制服を持っていくか着るかするつもりだっだが、体つきがほぼ成人男性のため、服は貸すといわれたので、軽装で最低限の荷物にした。
距離は遠目だが縁は近いので出席が望ましい――だが親たちも年長のきょうだいも都合が悪いということで、中学3年の男子が1人でやってきた。
「お前はしっかりしているから」「何事も経験だから」と乗せられたが、別にそれ自体は特に嫌ではなかった。
中学最後だったが、所属している硬式テニス部は全国大会2回戦で敗退し、やや苦い夏になっていた。傷心旅行でもないが、少し非日常を味わうのも悪くないだろうと、小旅行気分で来たくらいだ。
そして今、俺の目の前には、つい目で追ってしまうような美女がいる。
客がないので、カウンターの片隅の、しかし店の全体が見渡せそうな位置に腰を下ろし、イヤホンで何か聞きながら、デジタルメモ的なものに何か打ち込んでいた。仕事か学習かわからないが、そうしながら来客は素早く対応するというのが、彼女なりの接客らしい。
本当ならはもう少し彼女と話したいが、邪魔するわけにもいかない。
さすがにそろそろ出ようかと思っていたところに、1人の男性客が入ってきた。
「あれっ、千弦ちゃん。今日は来てたんだ?」
「ええ。本当は連休中は休もうとしていたらしいんだけど、
今日1日だけお手伝いで来ました」
「うれしいね。美人が淹れるとコーヒーがうまいんだこれがまた」
「お上手ですね、相変わらず」
「いやいや、マジマジ」
チヅルさんというのか。いい名前だ。
大き目の声で話している様子を見ると、客は常連で間違いないようだが、彼女はいつもいるわけではないようだ。ということは、俺はかなり運がよかったのだろう。
1泊して法事に出席し、明日には帰る予定だが、明日ここに来ても彼女には会えないということか?
会計のとき、「緑茶は今日だけのサービスですが、コーヒーがお嫌いでなかったら、またいらしてくださいね」と言われた。
地元の人間だったら、この声、この言葉、この笑顔で「殺され」て、足繁く通ってしまうであろう。
まあ、本人はいつもいるわけではないようなので、ある意味タチの悪い客引きともいえる。
残念ながらもう会うことはないだろうが、ちょっとした至福のひと時だった。
檜聡二、英明大附属中3年、硬式テニス部(じき引退予定)、当年とって15歳。
少し年上の女性に一目ぼれしたようだ。
大人の女性だし、恋人の1人や2人いても仕方ないが、俺がもっと大人になったとき、あんな女性が隣にいてくれる人間になれるだろうか。
スタンダール
◇◇◇
俺がいくら「身長が180超、やや老け顔だが頭がよく、不測の事態に対処する能力が高い」からって、こんなこと中3のコドモに頼むか?普通。
俺は8月末のある週末、南東北の街・片山市に来ていた。
ローカルジョーク的に「北関東の一部」などと言われる(どの辺がジョークなのかはよくわからないが)この街には、ターミナルである片山駅以外にJRの駅が9つあり、そのほとんどが無人駅らしい。
降りたのはそのうちの一つ、何年か前に80年ぶりに新設されたという「片山ふくだ駅」だ。
駅舎自体はさすがに新しくきれいだが、「先頭車両しかドアが開きません。お降りの方は先頭に移動をお願いします」と到着直前にアナウンスがあったのには面食らった。
同じようにゆったり構えていた乗客も多かったようで、俺はその慌てる大移動(少し大袈裟)の波に飲まれた。
俺が住んでいるのは、大都会ではないが交通の便はいい。少し待っていればすぐ次の電車が来るようなところだ。
こういう地方都市では、1本逃すと次は2時間後などということもザラらしい。ということは、もしここで降り損なったら、仮に次の駅で折り返すにしても、何時間もロスする可能性があるということだ。
(伯父さんの言うとおり、片山駅からタクシーに乗ればよかったかな…)
片山駅からたった1駅、4分の移動だったのだが、まさか下車するだけでこんなに消耗するとは思わなかった。
幸い周辺にコンビニや大きなスーパーなどもあり、飲食店もそこそこあったので、どこかで休憩してから行こうかときょろきょろしていたら、「サ店 鉢の木」という看板が目に入った。
サ店というのは、要するに喫茶店の昭和っぽいいい回しらしい(調べた)。
そのあか抜けない雰囲気が一周回っておしゃれに思えるほどの、刺さる人には刺さるカフェ。
それより何より「鉢の木」という名前に惹かれた。
多分、日本史でおなじみの「いざ鎌倉」の元となった逸話からとったのだろう。大好きなエピソードの一つだ。
これも何かの縁だと思い、そこで休憩することにした。
「いらっしゃいませ。1名様ですね?」
入店すると、トーンは低いが澄んだ美しい声の女性が出迎えてくれた。
その人の顔も見ずに首で返事をし(感じ悪いかな)、窓際の2人がけの席に腰をおろす。テーブルの上のメニューに目を落としたら、薄緑の付箋に「川根茶 300円[和菓子付]」と手書きされたものが、他のメニューを邪魔しない位置に貼られていた。
水を運んできた女性に「日本茶があるんですね」と尋ねると、「ええ、今日だけですが」との返事。
特別メニューということだろう。
ふと顔を上げると、声の印象より若い、小柄で化粧っ気のない感じのいい女性がそこにいた。
多分そこそこ長いであろう髪を後ろで小ざっぱりとまとめている。
「日本茶の場合はお饅頭か最中がつきます」
「じゃ、この川根茶と――饅頭を」
「かしこまりました」
◇◇◇
伏し目がちにカウンターの向こうで茶のしたくをする彼女をよく見ていたら、遅ればせに、かなり美しい女性だということに気づいた。
一見「かわいい」印象だが、全体的に整っているので「美人」ともいえる。
大きさや位置のバランスがいい賢そうな目元、軽く閉じ、口角の上がった愛らしい唇、少しとがったすっきり小鼻のてっぺんには、薄い溝が走っていた(これは後でまじまじ見て気づいた)。外国の女優なんかの顔で時々見られる特徴だ。
若く見えるが、もちろん、6月に15になったばかりの自分よりはかなり年上だろうな。
この街は「ヒナにはマレな」と表現できるほど辺鄙ではないだろうが、これだけの美貌の持ち主なら、さぞや彼女目当ての男性客の多い店なのではないか?
そう思っていたが、結局俺以外の客は、常連らしい初老の男が1人だけだった。
それも、俺が店を出る直前に入ってきたので、俺は幸運なことに、この美女と30分近く、2人だけの時間を過ごすことができた。
◇◇◇
「お待たせいたしました」
白い茶器と皿に盛られた、さわやかな緑色の液体と、一口で食べられそうな細長い饅頭。それらを彼女が長い指で俺の目の前にサーブした。
「うまい…」
一口すすって、思わず声が出た。丁寧に抽出された、ほっとする味。
俺の言葉を受けて、「でしょう?静岡の知人からのいただきものです」と、彼女が少し目じりを下げて言った。
こういうのうれしいな。彼女といい感じのコミュニケーションが取れた。
「この饅頭も――いい味ですね」
「ええ。それは消費期限が短いので、お土産で外に出ることもないみたいです。
地元でも知る人ぞ知るらしくて。買えてラッキーでした」
「へえ…」
味噌あんというのだろうか。優しい甘さと軽い塩気の食べやすい味だった。
「一杯茶というのもなんですから、お代わり、いつでもおっしゃってくださいね」
祖母が「一杯茶は縁起が悪い」と言っていたのを思い出す。
若い彼女がそれを意識した発言をしたのかは分からないが、そういうことならば遠慮なくいただこう。
少し休憩のつもりが、新幹線の中で読んでいた文庫本の続きに目を落とすほどくつろいでしまった。
するとスマホにショートメールの着信があった。「今どの辺?必要があれば迎えに行くよ」という、少し年上のいとこからのものだった。
あ、この街に来た目的をすっかり忘れてしまっていた。
「ふくだ駅近くなので多分近くまで来ています。鉢の木というカフェで少し休憩してから行きます」
「あ、あそこのコーヒーうまいよね。中学生が随分渋い店に入ったね」
まあ俺がすすっているのは、美女が淹れた緑茶なのだが。
◇◇◇
俺は実は親戚の3回忌に両親・祖父母の名代として来ていたのだ。
制服を持っていくか着るかするつもりだっだが、体つきがほぼ成人男性のため、服は貸すといわれたので、軽装で最低限の荷物にした。
距離は遠目だが縁は近いので出席が望ましい――だが親たちも年長のきょうだいも都合が悪いということで、中学3年の男子が1人でやってきた。
「お前はしっかりしているから」「何事も経験だから」と乗せられたが、別にそれ自体は特に嫌ではなかった。
中学最後だったが、所属している硬式テニス部は全国大会2回戦で敗退し、やや苦い夏になっていた。傷心旅行でもないが、少し非日常を味わうのも悪くないだろうと、小旅行気分で来たくらいだ。
そして今、俺の目の前には、つい目で追ってしまうような美女がいる。
客がないので、カウンターの片隅の、しかし店の全体が見渡せそうな位置に腰を下ろし、イヤホンで何か聞きながら、デジタルメモ的なものに何か打ち込んでいた。仕事か学習かわからないが、そうしながら来客は素早く対応するというのが、彼女なりの接客らしい。
本当ならはもう少し彼女と話したいが、邪魔するわけにもいかない。
さすがにそろそろ出ようかと思っていたところに、1人の男性客が入ってきた。
「あれっ、千弦ちゃん。今日は来てたんだ?」
「ええ。本当は連休中は休もうとしていたらしいんだけど、
今日1日だけお手伝いで来ました」
「うれしいね。美人が淹れるとコーヒーがうまいんだこれがまた」
「お上手ですね、相変わらず」
「いやいや、マジマジ」
チヅルさんというのか。いい名前だ。
大き目の声で話している様子を見ると、客は常連で間違いないようだが、彼女はいつもいるわけではないようだ。ということは、俺はかなり運がよかったのだろう。
1泊して法事に出席し、明日には帰る予定だが、明日ここに来ても彼女には会えないということか?
会計のとき、「緑茶は今日だけのサービスですが、コーヒーがお嫌いでなかったら、またいらしてくださいね」と言われた。
地元の人間だったら、この声、この言葉、この笑顔で「殺され」て、足繁く通ってしまうであろう。
まあ、本人はいつもいるわけではないようなので、ある意味タチの悪い客引きともいえる。
残念ながらもう会うことはないだろうが、ちょっとした至福のひと時だった。
檜聡二、英明大附属中3年、硬式テニス部(じき引退予定)、当年とって15歳。
少し年上の女性に一目ぼれしたようだ。
大人の女性だし、恋人の1人や2人いても仕方ないが、俺がもっと大人になったとき、あんな女性が隣にいてくれる人間になれるだろうか。
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