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第4章 On the day
緊急地震速報
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喜多川君が牛丼を食べ終え、時計を見ると2時20分を少し過ぎたところだった。
ぶらぶらと雑貨屋さんを見たり、靴屋さんでスニーカーを見たりして、書店コーナーに来たのは多分、2時41分か42分といったところだろう。
レイは雑誌コーナーに行くといい、喜多川君は漫画、優香と私はライトノベルのコーナーに行った。
私はラノベはほとんど読んだことがないけれど、優香は特に学園ものが好きでよく読んでいるらしい。
「ラノベってファンタジーとかじゃないの?」
「もちろんそれは多いけど、現実世界のラブコメみたいなのも傑作が多いよ」
「へえ、読んでみようかな」
のんきに雑談しながら本を選んでいると、携帯電話が今まで聞いたことのないアラーム音を鳴らし始めた。
しかも、自分の携帯だけではない。それこそ店内じゅうの人の携帯が鳴り、みんなびっくりしてディスプレーに目を落としている。
「緊急地震速報」の字を確認する頃には、ゴーッと地鳴りのような音がして、少しずつ少しずつ揺れが激しくなっていった。
書架の本がばっさばっさと下に振り落とされ、みんなが叫び声を上げていた。
私は目の前で起こっていることが信じられず――というより、否定したい気持ちでいっばいになり、「うそうそうそ、ないないない、ないから!」と、意味不明なことを言っていた――と優香が後で言っていた。
私のあまりのテンパりぐあいを見て、むしろ優香は冷静になっちゃったみたいだ。ちょっと恥ずかしい。
同じ階に台所用品などのコーナーがあるため、食器や金属がフロアに叩きつけられる音も聞こえた。
隣の漫画コーナーにいた喜多川君とはすぐ会えた。
最初の揺れが5分ほど続いたろうか。
揺れの合間に従業員さんが、不慣れながらも建物の外に避難誘導をした。
それに従うと、レイにもすぐ会えた。
「まつりちゃん、大丈夫だった?」と、レイが私の両手をつかみ、いつもは見られない表情で大きな声を出したが、優香が「私たちも無事ですよー、リーダー」と言うと、はっと冷静になったように、「…あ、ごめん」と言った。
「まつりちゃんは2人より小さいから、書架の下敷きになったかもって…」
「はいはい」
優香はなぜかニヤニヤして、レイの発言を右から左へ流した。
「ま、全員無事ってことで一安心だな」という喜多川君の一言で、私たちは体勢を立て直した。
もうこんなところにはいられない――じゃないけれど(居座られても、お店も迷惑するだろうし)、とにかく、家に帰らなければならない。
もともと多くの車がとまっていた駐車場は、帰宅を急ぐ人々でごった返している。
この様子では、バイパスは登りも下りも大渋滞だろうなあ。
ぶらぶらと雑貨屋さんを見たり、靴屋さんでスニーカーを見たりして、書店コーナーに来たのは多分、2時41分か42分といったところだろう。
レイは雑誌コーナーに行くといい、喜多川君は漫画、優香と私はライトノベルのコーナーに行った。
私はラノベはほとんど読んだことがないけれど、優香は特に学園ものが好きでよく読んでいるらしい。
「ラノベってファンタジーとかじゃないの?」
「もちろんそれは多いけど、現実世界のラブコメみたいなのも傑作が多いよ」
「へえ、読んでみようかな」
のんきに雑談しながら本を選んでいると、携帯電話が今まで聞いたことのないアラーム音を鳴らし始めた。
しかも、自分の携帯だけではない。それこそ店内じゅうの人の携帯が鳴り、みんなびっくりしてディスプレーに目を落としている。
「緊急地震速報」の字を確認する頃には、ゴーッと地鳴りのような音がして、少しずつ少しずつ揺れが激しくなっていった。
書架の本がばっさばっさと下に振り落とされ、みんなが叫び声を上げていた。
私は目の前で起こっていることが信じられず――というより、否定したい気持ちでいっばいになり、「うそうそうそ、ないないない、ないから!」と、意味不明なことを言っていた――と優香が後で言っていた。
私のあまりのテンパりぐあいを見て、むしろ優香は冷静になっちゃったみたいだ。ちょっと恥ずかしい。
同じ階に台所用品などのコーナーがあるため、食器や金属がフロアに叩きつけられる音も聞こえた。
隣の漫画コーナーにいた喜多川君とはすぐ会えた。
最初の揺れが5分ほど続いたろうか。
揺れの合間に従業員さんが、不慣れながらも建物の外に避難誘導をした。
それに従うと、レイにもすぐ会えた。
「まつりちゃん、大丈夫だった?」と、レイが私の両手をつかみ、いつもは見られない表情で大きな声を出したが、優香が「私たちも無事ですよー、リーダー」と言うと、はっと冷静になったように、「…あ、ごめん」と言った。
「まつりちゃんは2人より小さいから、書架の下敷きになったかもって…」
「はいはい」
優香はなぜかニヤニヤして、レイの発言を右から左へ流した。
「ま、全員無事ってことで一安心だな」という喜多川君の一言で、私たちは体勢を立て直した。
もうこんなところにはいられない――じゃないけれど(居座られても、お店も迷惑するだろうし)、とにかく、家に帰らなければならない。
もともと多くの車がとまっていた駐車場は、帰宅を急ぐ人々でごった返している。
この様子では、バイパスは登りも下りも大渋滞だろうなあ。
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