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第2章 ゆる部活動報告
グループ交際のような
しおりを挟む私と優香がそうだったように、他の部から中途半端な時期に転部してくる人がいないとも限らない。
だから、できるだけ排他的な雰囲気にならないようにしようねと言っていたが、多分みんな「ほかの人、入ってこないといいけど」くらいのところが本音だった。
私たち4人は学校を離れても仲がよかった。
みんなの予定が合えば、映画やカラオケ、ボウリングなどに行くこともあった。
その中心にレイがいるばかりに(といったら責めているみたいだけど)私はやっかみから嫌なことを言われることもあったし、多分優香もそうだろう。
喜多川君のファンもいるにはいたが、「フミ君(喜多川君のことらしい)って部活でどんなことしてんの?」とフレンドリーに尋ねてきたり、「私もゆうゆうじてき部入りたいって思ったんだけど、親がね…運動部の方が受験に有利だからって言ってさー」とこぼしたりするタイプが多かった。
「やっぱり運動部の方が受験に有利なのかなあ?」
「うちのお母さんはそう言ってる。そんなわけのわからない部活は部活として認められないからって」
「わけのわからない…」
「わ、ごめん。だから、うちのお母さんがそう言っていたの。それに正直やっぱりよくわかんない部活だし」
「まあ、そうだよね。結構活動も幅広くて面白いんだけどね…」
テスト前には成績トップクラスの斉木怜君による学習指導が受けられる――なんて知ったら、いぶかしがっている親御さんも気が変わって、入部希望者が殺到しそうだ(だから言わない)。
◇◇◇
ほかの部活がテスト期間中は休んでいるときでも、我が部だけは部室でみんなで勉強することができた。
何しろ成績が多分学年トップ20に入る生徒が2人もいる上に、私と喜多川君も別に劣等生というわけではない。
レイが塾の日は塾の時間まで(そもそも部活もそれまでには終わる)、塾がない日は誰かしらの家に行って続きをやることもできた。
優香の家が学校から一番近かったので、彼女の部屋で7時ぐらいまで勉強して帰宅ということが多かったが、アニメやゲームキャラクターのグッズやポスターがいっぱいで、カラフルな部屋でびっくりした。
三次元の生身のアイドルやイケメン俳優は「全員同じ顔に見える」と言って興味を示さないが、男性アイドルをモチーフにしたアニメが大好きで、ほぼチェックしているらしい。
「お前、よくこんな部屋で勉強してて、あんな成績とれるな?」
と、喜多川君は落ち着かない様子だけど、
「逆だよー。推しがいるから私は呼吸もできるし、勉強も捗るのよん」
と涼しい顔で答えていた。
私も優香と親しくなってから、紹介してもらったアニメを動画サービスで見たり、アニメショップに一緒に行ったりするようになった。
私にも「推し」みたいなキャラができたけれど、「何だか誰かさんに似てますねえ」と優香にからかわれた。
線の細い長身、中性的な美形で優等生タイプ(**下記注)で、確かにレイにどこか似ているかもしれない。
恋愛対象みたいな気持ちで見たことはないけれど、昔から最も身近にいた男の子だし、何らかの基準になっているのは否定できない。
優香は「好きな男の子のタイプ」と「推し」は全く別物で、年上で男臭い感じの人が好きという割に、推しは小っちゃくてかわいい子(ショタ系というやつ?)が多い。
**
実際にはこの小説の設定(2010年~)当時はまだ出ていなかったコンテンツですが、『アイドリッシュセブン』逢坂壮五君あたりを想定しています(by筆者)
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