それでも ホワイトクリスマス

あおみなみ

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エピローグ 1980年総決算

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 あれから40年以上経った。

 そういえば1980年もオリンピックイヤーだった(※本作の初アップが2021年だったことが前提となっている書き方です。ご了承ください)。

 といっても、ソビエト連邦(当時)の首都モスクワで行われたあの年のオリンピックは、前年のソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議し、西側諸国はボイコットした。日本もその中の一つだった。だからかテレビの中継も少なかった気がする。

 私はメキシコオリンピックの年に生まれ、記憶にある最古のオリンピックといえば1972年の札幌(冬季)で、1964年東京オリンピックというのは、歴史的事実としてしか知らない。

 1980年時点で、40年後に再び日本でオリンピックが開催されるなんて想像もしなかったけれど、感染症の影響で前代未聞の1年延期などという事態は、当然もっと予想できなかった。「オリンピックイヤーの概念があーっ」て感じだ。

 2020東京五輪設定と、「中止だ中止」フレーズまで飛び出して話題になった、大友克洋さんの『AKIRA』が世に出たのは1982年。もう大友さんがタイムトリップして描いたとしか思えない。

 モスクワといえば、モスクワ少年少女合唱団が我が街に公演に来て、特設合唱部のみんなで見にいったのも、たしかあの年だったと思う。
 たまたま近くに座っていた子たちがあまりにも私語が多かったので、大柄で美しい団員の少女に、ステージ上からレーザービームのようなガンを飛ばされたことが懐かしい。私は未だにあれ以上の「目力」を知らない。

+++

 この話に登場した人のうち、もうこの世にいない人もいるし、身内でありながら、気付けば10年以上会っていない人もいる(**)。

 サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』ではないけれど(私は白水社の野崎孝氏翻訳版派なので、このタイトルを使う)、うっかり話題に出すと、どんな人間でも「懐かしい。会いたい」などと血迷ったことを考えてしまう。何でも思い出にしてしまうと美しく見えるものだ。
 それでもやはり、今の家族たちと「ピザとポテトと炭酸飲料(ビール含む)、それにコンビニで慌てて買ってきたケーキ」みたいなものをテキトーに卓上に並べ、録画したアニメ映画なんかを見ながら過ごす、そんなクリスマスの方が何倍も愛おしく思えるのは、それなりに幸せになれた証拠だろうか。

 とりあえず教訓――紙類のあるところで、ロウソクを使ってはイケマセン。
 下手したら、こうして今駄文を書き散らしている私という存在さえ、既にこの世になかったのかもしれないのだ。


**
これを初めて書いた翌年に当たる2022年9月、母が他界しました。
本作に出てきた「大人」はこれで全員鬼籍にったことになります。
その母の家族葬で10年以上ぶりに兄と顔を合わせました。
弟がLINEのきょうだいグループチャットをつくったので、やりとりもするようになりました。
それでも仲がよくなったわけではないのですが、ビジネスライクに淡々とやりとりできる程度には、どちらも年を取ったようです。
**


[了]
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