それでも ホワイトクリスマス

あおみなみ

文字の大きさ
上 下
2 / 6

12月24日

しおりを挟む
 私は唱歌『お正月』という歌について、小学校3年生くらいからだろうか、ある仮説を立てていた。

「あの歌って実はクリスマスの歌だよね?」

 大抵の人は「ばっかみたい。何言ってんの?」と取り合わない。
 人の話にとりあえず耳を傾けてくれるタイプの友人だけが、説明してほしいと要求する。

「だって、「もういくつねると」だよ。つまり、まだお正月じゃないんだよ」
「あ」
「それも多分、小さい子供がお正月楽しみ過ぎて、「あと何回寝たらお正月になるの?」って考えてさ。小さい子だから、多分10日より下だよね」
「う、うーん?」
ずばり1週間前!ちょうど12月24、5日あたりで計算が合うんだよ」
「“だから”の意味が分かんないけど…「なるほどね」って思った」
「でっしょ?」

 と、聞いたときは調子を合わせてくれるけれど、実際は全く支持されない話をよくしたものだった。

+++

 というわけで、12月24日。
 学校では2学期の終業式があり、子供はみんな早目に帰宅していた。

 寒いなあと思ったら雪が舞い始め、誰もこたつから動こうとしない。
 晩ご飯は父が、「パーティーバーレル」というものに入った、揚げた鶏肉を買ってくるらしいので、祖母も母も「今日は楽だねえ」と、にこやかに待っている。

 雪が朝になる頃にはたっぷり積もっているだろう。
 明日になったらお隣のカスミちゃんたちと一緒に、広場でミニスキーをしようと考えていた。

 午後5時ぐらいまでは、そんな楽天的なことばかり思い描いていたけれど、7時ぐらいだろうか、父がコートやあたまに張り付いた雪で真っ白になって、両手に何か抱えて帰ってきたとき、少しだけ現実が見えた。

「お帰り~。うわ、すごい格好」
「この天気だから、車は会社に置いて雪漕いできたんだ。いやあ、疲れたくたびっちゃ

 祖母は父のそんな姿を見ると、裏返った声をかけた。
「いやいやいや、寒かったばい。早く入ってあったまっせ」
 父は母が持ってきた小さなほうきでコートの雪をはらい、靴下を脱いでから家に上がった。普通の革靴を履いていたので、靴下もびっしょり濡れていたらしい。

 いやいや、降るにしても降り過ぎでしょ。
 外を見ると、少し白を載せたような群青色の夜空から、続々、べったべったと雪は降り続き、止む気配がまるでなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

短編集『朝のお茶会』

あおみなみ
現代文学
参加条件:お茶とお菓子がお好きなら、どなたでも。 とある地方都市の老舗菓子店「くぬぎ屋」で毎月行われる、知る人ぞ知るお茶会に集う人々の物語。 読み切り短編集なので、お好きなところからどうぞ。 時々、他作品からの出張登場もあります。 ※全体的に東日本大震災がモチーフになっているので、3.11を目前に、少しずつ再公開します

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

大学寮の偽夫婦~住居のために偽装結婚はじめました~

石田空
現代文学
かつては最年少大賞受賞、コミカライズ、アニメ化まで決めた人気作家「だった」黒林亮太は、デビュー作が終了してからというもの、次の企画が全く通らず、デビュー作の印税だけでカツカツの生活のままどうにか食いつないでいた。 さらに区画整理に巻き込まれて、このままだと職なし住所なしにまで転がっていってしまう危機のさなかで偶然見つけた、大学寮の管理人の仕事。三食住居付きの夢のような仕事だが、条件は「夫婦住み込み」の文字。 困り果てていたところで、面接に行きたい白羽素子もまた、リストラに住居なしの危機に陥って困り果てていた。 利害が一致したふたりは、結婚して大学寮の管理人としてリスタートをはじめるのだった。 しかし初めての男女同棲に、個性的な寮生たちに、舞い込んでくるトラブル。 この状況で亮太は新作を書くことができるのか。そして素子との偽装結婚の行方は。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

Tokyo Flowers

シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。

両親のこと

あおみなみ
現代文学
父の生誕日と母が亡くなったとき、勢いで書きました。 身バレ防止のフェイクを申し訳程度に入れた、自分のゲスさと向き合うための雑文です。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

処理中です...