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【終】アカリは20X1年にX3歳になる
しおりを挟む私たちはその後、(花田君が1浪したり)大学に入ったり就職したり、状況はいろいろ変わったけれど、何だかんだでずっと一緒にいた。
ただの友達から、もっと特別な仲になったのは――さて、いつだったかなあ(すっとぼけ)。
1991年には湾岸戦争があり、2001年はいわゆる9.11、アメリカ同時多発テロが起きた。
末尾「1」にやたら着目しているせいもあるけれど、かなりセンセーショナルな出来事ばかりだ。
気付けば私の姓は20代後半には「花田」になっていて、1981年から20年目、2001年には「お母さん」になった。
お互いの中学時代を知っている人と結婚するのってすごい度胸だねってみんなに笑われたけど、「彼とずっと一緒に「1」の年を迎えたいと思ったんだ」と答えて、「あんたって本当、中学時代から何考えてるかわかんないところがあったね」って呆れられた。
◇◇◇
2011年、大きな震災で気持ちが落ち込みがちなとき、「景気づけに」と、誰かが同窓会を提案し、結構人が集まった。みんな42歳か3歳だ。
「男は嫌い!」といっていたカナエちゃんは、今は3人の息子さんのお母さんだという。
どんなに体の太さが変わっても、毛量に変化があっても、顔の表面に溝的なものが増えても、一目見れば名前(場合によってはあだ名)が出てくるのだから、人間の脳の補完能力はすごいなと思う。
◇◇◇
「もう少ししたら、原発事故だの放射能がどうとかって言ってたことも忘れてるのかなあ」
「あ、そうだ。大分前だけど、茨城の東海村の臨界事故(1999年)って覚えてる?」
「あー、記憶にあるような…?」
「あの事故のときも大騒ぎだったけど、半年後には、あの辺の名物の干し芋が飛ぶように売れてたってさ。この前の原発事故の後に、ネットの掲示板で書き込み見たよ」
「へええ。私干し芋ってあんまり食べないわ」
かみ合っているようないないような、誰かの会話が耳に入ってくる。
ちょっと空元気気味の人もいるけれど、ここに来て、みんなの元気な顔が見たいと思った人だけが集まったことは間違いなさそうだ。
遠方にいたり、もろもろの事情で出席できなかった皆さんも含め、幸多からんことを祈る。
(まあ、弘安の役から730年、とか考えてる人間は、多分ここには私くらいしかいないんだろうな)
なんて思いながら、花田君改めマイダーリンヒロ君に、「カニ爪おいしいよ、食べなよ」とオードブルを勧めて冷やかされたりして、楽しい宴だった。
さてさて、次の「1」の年は2021年。
50代の私たちは、どんなふうに笑っているのだろう。
[了]
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