【R18】最低でありふれたカレとカノジョの夏。

あおみなみ

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豆を挽く・手をつかむ(1)

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 2人はコンビニエンスストアで調達した食べ物で朝食を済ませた。

 サンドウィッチ、ヨーグルト、そして芳彦が淹れてくれたコーヒー。
 インスタントではなく、ミルでゴリゴリと豆から挽いたものだから、「おいしい」と思わなくては申し訳なくなるが、美野里には正直よく分からなかった。

 芳彦と喫茶店でコーヒーを飲んだことはあったが、どちらかというと、パフェやケーキの後に口をさっぱりさせたくて飲んだりと、そこまでこだわりのあるタイプには思えなかった。
 それでも豆から挽く、口の細いポットでお湯を回し入れる的な、違いが分かる男ふうのしぐさが女受けするという計算は、間違いなくあったろう。

 そんな作業の最中、芳彦は美野里に質問した。

「なあ、遊園地って好きか?」
「え――あんまり行ったことない」
「本当に?」
「うん。今までええと…3回かな?」
「3回だけ?」
「だって、うちの地元にはないんだもん」

 美野里が生まれて初めて行った遊園地は、小学1年生の夏休みに地元の広めの公園に来た移動遊園地だった。

 それもアメリカ映画に出てくるようなフラットで見通しのいい場所ではなく、植樹が多くて割と起伏もあるし、もともとの遊具も点在していた。そんな中に、ジェットコースターやら観覧車やらが設営されていたのだから、業者の苦労がしのばれる。

 芳彦と付き合うようになってから、その公園にはデートで行ったこともあるので、どんな場所かは彼も知っていた。

「あそこに?まーったく想像つかんな」
「私も、いつもの公園じゃないみたいでびっくりした。あとはその次の年にお父さんの親戚の家に行ったときに行ったトコと、中学校の修学旅行の富士急ハイランド、かな」
「なるほどね。じゃ、今日は遊園地に行こう」
「うん!」

 美野里にしてみれば、芳彦とお出かけというだけでウキウキしていた。
 芳彦は芳彦で、「こいつとさえいれば、1日中部屋で…【自主規制】ってのも夢じゃないし。今日のところはまあ健全路線も悪くない」程度の、“準備運動”くらいのつもりで提案した。
 それでもいい感じのゴールにたどり着ければ、何も問題はない。
 付き合いたてのカップルというのは、ある程度はキツネとタヌキの化かし合いみたいなところがあるものだ。
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