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“朝這い”(2)
しおりを挟む不慣れな調子でカチャカチャと開錠する音で、うつらうつらしていた芳彦は目を覚ましたが、美野里が部屋に入り、自分に近づいてくるまで狸寝入りを決め込むことにした。
「おじゃましまーす…」
美野里の控え目なか細い声に、薄暗がりの中で芳彦はにやっと笑ったが、美野里は芳彦が眠っていることを全く疑わない。
布団の近くまで寄って、おずおずと右のほっぺたにキスを落とすと、ぐっと腕をつかまれ、布団の中に引きずり込まれた。
「わっ」
「随分控え目だな?キスは口にしてくれよ…」
「…んんっ…」
目覚めのキスにしては濃厚過ぎるものが、美野里の唇を直撃した。
美野里はガムをかんだ後だったが、芳彦はまだ歯を磨いていない。
深酒をしたわけでも、極端な口臭があるわけでもないので、不愉快なにおいはしない。
美野里は今の段階では、それを「カレのにおいだ…」と歓迎できる下地があったので、問題はなかった。
「おはよう、美野里。来てくれてありがとうな」
「おはよ…芳彦君…」
芳彦は美野里を下に組み敷いて、恥ずかしがる顔を見下ろすのが好きだった。
今までは同年代の、どちらかというと性に積極的な女性、時には年上の女性の手ほどきも受けてきた。
こんな年下の少女と付き合うのも、体の接触をはかるのも初めてだったので、美野里に対して「征服欲」のようなものを覚えたのかもしれない。
「ホント、こうしてるときのお前が一番かわいい…」
「…あ、はぁ…」
芳彦は美野里のTシャツの中に手を入れ、ブラの上から胸の丸みをやんわりと握った。
「だめ…だよ。まだ陽が高いのに…」
美野里は半泣きのような顔になり、軽く抗議した。
「こんな日も差さない部屋で、何言ってるの?」
意地の悪い表情をつくり、芳彦はブラを指で少しずらして乳首を弄んだが、美野里が涙目になっていることにたじろいだ。
「あ、なんかいきなり悪いな…」
「ううん、私こそ…」
美野里は芳彦に愛撫されるのが嫌いではない。むしろ好きだった。
それでも、その先にある「未知のもの」にはやはり恐怖心を抱いている。
芳彦は女慣れしているだけに、がっついてもろくなことはないと判断し、Tシャツから出した手を背中に周り、ぎゅっと抱きしめて、美野里の髪のにおいをかいでから言った。
「どっか遊びにいこう。飯も食わなきゃな。お楽しみは帰ってきてからだ」
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