短編集『市井の人』

あおみなみ

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ナミとエリサ

ケーキとアイスクリーム

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 ナミは猛勉強の甲斐あって、M大学文学部英米文学科に編入することができました。
 エリサは合格祝いだと言ってケーキバイキングをおごりました。
 甘党の2人が何度か来たことがある、高級ホテルのカフェテリアです。
 料金はお高めですが、たまのことなので奮発しました。

 2人とも基本的に堅実なので、自分のお腹のキャパシティーを超えるような取り方はしませんが、トレイに取るケーキには、それぞれ個性が出ています。

 エリサはチーズケーキ数種と、フルーツの載った小さなタルト、ナポレオンパイ、はイチゴのショートといったところです。初対面でも、「ああ、この子はチーズケーキとイチゴが好きなんだな」と分かるラインナップでしょう。
 対するナミは、モンブランやガトーショコラといったいつものお気に入りのほかに、見慣れない名前と外観の新製品らしきものもピックアップしました。どれも気に入った――わけではないものの、人生何事も勉強だと、パイ生地のかけらからスライスアーモンドに至るまで、小器用にフォークの背を使ってすくい上げ、きれいさっぱり食べました。

 ちなみに2人がアイスクリームショップに行っても、大体こんな感じです。

 エリサはいつも「私、冒険ぎらいだから」といって、「レモンストロベリーチーズケーキ」を注文し、ナミはよく、試食テイスティングで一さじ勧められたものを、そのまま買っていました。
 エリナはそれを見て、「別に試食したからって、無理に買わなくてもいいのに」と言っていましたが、ナミは「どうせ悩んじゃうんだから、お勧めに乗っかっているだけだよ」と涼しい顔で答えるのでした。

 確実に好きだと思えるものを無難に選ぶエリサと、時には失敗(**下記注)もあるものの、その後一番のお気に入りになるほどハマるものもある――というギャンブル込みで買うナミ。些細なことではあるものの、考え方や行動動機の片鱗が見えるようです。



**テイスティングで食べておいしくても、商品として丸々一つ買うと、くどくて飽きてしまうという味もありますよね、アレを想定しています。
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