ワームムーンと財布

あおみなみ

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職場の飲み会

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 地方いなかあるあるの一つ。
「郊外の、やたらでかい駐車場のある居酒屋」

 ああいうの見ると、正直なんだかなあって少し思うが、たとえ車で訪店しても、運転代行サービスを利用するとか、運転する人はウーロン茶しか飲まないとか(で、ドライバーズサービスで無料になったり)できる。
 ほかにも、職場の駐車場に車を置いてタクシーで帰る、いったん自宅に帰って、家族に車で送迎してもらうとか、やりようはある。

 どっちにしても、通勤が自家用車クルマ前提にはなるけどね。

「「「「「

 俺は高校卒業後、地元のとあるスーパーに就職した。
 免許は学校で「解禁」になってからすぐ取ったけど、そのための費用は俺の名前でローン組んだし、自家用車をすぐに調達してもらえるような身分でもない。「欲しければ金を貯めて、自分で買え」ってさ。
 どこの店に勤務になっても、自転車か原付で通うつもりだったし、まあいいかと思っていたら、家から2キロ程度のトコの店舗に配属が決まり、これなら自転車でも楽だし、何なら徒歩でも大丈夫かなって一安心した。

 仕事上がりに飲み会や焼き肉に行くにしても、勤め先の近所の店になるのがありがたい。
 幹線道路沿いの、やたらと商業施設や飲食店があるエリアだからっていうのもあるけれどね。
 気分で「今日どっか寄ってかない?」って飲みはまずなくて、大体、職場ぐるみの送別会だ歓迎会だ暑気払いだと、なにかしら名目をつけ、「何月何日に『居酒屋はるきち緑が丘店』で~」みたいな感じ。

「「「「「

 それは3月第1週だった。
 自動車学校のローン(30回)も今年じゅうに完済だなあってくらいなので、5月の19歳の誕生日くらいから返済し始めた俺も、当然酒を飲める年齢になっている。

 「日中は5月上旬並みの暖かさ」とかで、一日中晴れマークしか出ていない天気予報を信じ、あらかじめ決まっていた職場飲み会にそなえ、俺は徒歩で職場に行くことにした。
 帰りは何時になるか分からないが、親か姉ちゃんに迎えにきてもらってもいい。金は出してもらえない分、意外とそういうことには協力的なのだ。

「「「「「

 てことで。
 閉店後、21時から2時間(くらい)の予約の店で、飲んで食って、他愛もない話をして、たばこの煙に巻かれて、23時(頃)にお開き。

 「帰り、どうするんだ?」と、一番仲のいい同僚に声をかけられた。
 俺は「月がきれいだから、歩いて帰るよ」と答えたら、「何だよ、酔ってんのか?気を付けて帰れや」ってからかわれた。
 
 そうだな、確かに酔っていたのかもしれない。
 酒が気持ちよく回っていて、それでいて足元はまだそうだったので、俺は同僚に手を振ったり、上長に会釈したりしながら、居酒屋の前の県道を渡った。

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