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ある男の半生
反響の裏側で【終】
しおりを挟む「さっきの青田って人…」
「…ねえっ、すごいよね…」
教室に戻っても、生徒達の間では、青田さんの話題で持ち切りです。
ただ、今回発表した人たちは、これから全国大会に行く人たちのはず。
そもそもが「真面目に書け!」と注意されても仕方のないようなものなのに、校内予選をなぜ通ったのか、不思議で仕方ありません。
アニメやライトノベル好きな生徒は、「あの青田って人、魔法使いかもしれない」「幻術使いか何かで、先生とかほかの大人には、普通の苦労話とかに聞こえてんのかも」「そこはもっと現実的にさ。実はなろう系とかの作家なんじゃね?でも実はナンカの権力持ってて…」「だったら普通に社長の道楽とか」などと口々に好き勝手なことを言いました。
メグリは去年のおじさんのような「かっこいい大人の普通のいい話」が聞きたかったので、ある意味肩透かしを食らったものの、確かに、青田さんがなぜここに出てきて発表できたのかはとても気になっていました。
今年の青田さんのようなお話を期待して、来年は居眠りする生徒がちょっとは減るかもしれません。
+++
生徒達が盛り上がっていた頃、青田さんは自分の住むまちに帰るため車を走らせながら、生徒達の拍手喝采を思い出し、ちょっとだけニヤけた後、軽くためいきをつきました。
車内にはほかに誰もいないし、ドライブレコーダーの録音もオフになっているので、おもいきりひとり言が言えます。
「全部本当のことなんだけど、詳しく言えば言うほど、だーれも信じないんだよなあ…
青田さんは作文を提出したとき、真面目に書き直せと言われることも少し覚悟しました。そういう扱いには慣れています。
しかし学校側は、意外なことに、「当校の代表として、発表会に出てほしい」と連絡してきました。
どういう裏事情があったのかは全く分かりませんが、それで喜んで晴れ舞台に立ったというわけです。
「今日の高校生もみんな、どうせネタだと思って聞いてたんだろうな。まあいいけどさ…」
【『ある男の半生』了】
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