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第18話 好事魔多し 2【俺】
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◇
妻の実家だった家に越してきてから、1カ月ほど経った。
すごく大きな家ではないが、若い夫婦2人で暮らすには広い気がする。
小さな庭には、春になると花をつける木が1本ある。
街路樹とかでもよく見るやつだ。
なんていうか…春彼岸が近くなるとスーパーとかで売ってる、竹の皮を使った造花?に似てる気がする。
妻が「あれはハナミズキだよ」って教えてくれた。
この家を建てたとき、市役所からお祝いに苗木をもらったんだそうだ。
「多分スーパーで売っているのは「削り花」じゃない?」
彼岸花に似せてつくった花で、ここいらを含む寒い地方の習慣らしい。花が咲いていない季節に備えるための代用品だったが、今でも習慣だけ残っているとか。
「君は本当に何でも知ってるね。本読んでるからかな」
「ていうか、本で読んだことしか知らないよ(※下記注)」
妻は地元の女子大学の「学芸学部日本文学科」を卒業した。
専攻を生かした仕事には就いていないが、もともと地頭がよくて努力家だし、職場でもうまくやっているみたいだ。
俺はつぶしが利きそうな経済学部だった。勉強は苦手ではなかったが、そんなに本を読む方ではない。
たまたま読んだ小説の話をしてくれることがあって、面白そうなら「俺も読もうかな」とは言うけれど、実際に読んだことはほとんどないし、気の利いた返しもできず、「へえ」「なるほど~」ばかり言ってしまう。
俺と話していて退屈じゃないかなって思って聞いたら、「茶々入れないで聞いてくれるじゃない?それがうれしいのよ」と言われた。
※ここはどうしてもオタク心がうずき、「何でもは知らないわよ。知ってることだけ(by羽川翼)」と言いたかったのですが、どパクリの上に、この時代にはまだこの『原作』がなかったので、なんかつまんない言い回しになりました。
***
結婚している同僚や上長の話とか聞くと、「うちのも昔はかわいかったが、子供産んでから、やたら主張が激しくなって」って愚痴っていることが多い。
「会話?子供のことと、近所付き合いの愚痴ばっかり一方的に聞かされるな」
「映画に行くといっても、子供向けのアニメばっかりだしな」
「というか、俺がもうカアちゃんの相手する気起きない。諦めてるよ」
やたらネガティブなことを言った後、「その点お前んちはいいなあ」って話になる。
美人ってだけでもポイント高いが、「子供がいないから、お前が独り占めできるな」って。
子供がいないこともうらやましがられるのは微妙だが、確かに妻との生活はふつうに楽しい。
子供ができたら、いろいろと状況が変わるのかもしれないが、大好きでい続けたり、仲よくしようと頑張ったりって努力が足りないんじゃないか?なんて、ちょっと生意気なことを考えた。
だって俺は、妻が自分の元親友と寝たという疑惑も乗り越えたし、いろんな男と遊んでいるという無責任なうわさより、妻の方を信じたんだ。
きっとこれからも、そんなふうに妻を思っていける。その自信はある。
◇◇
それはある土曜日の午後だった。
妻が休日出勤というか、午後だけ少し出ることになり、それでも「夕方――5時ぐらいには帰れると思う」と言うので、俺は外出せず、おとなしく留守番することにした。
レンタルしていたアクション映画を見て、コーヒーを飲んで、午後4時。
そろそろ帰ってくるかな?
夕飯のしたくでもしたかったが、俺が台所を使ったら、えらいことになる気がするし、妻にも余計な気を使わせそうなのでやめた。
(まあ料理自体、あんまり得意じゃない)
***
俺たちの寝室は、妻の両親が使っていたという1階の南東の角部屋で、あまり2階に上がったことがないな…と、ふと思い出した。
妻とお兄さんがそれぞれ使っていた部屋があるが、今は“がらんどう”になっていて、お義母さんは、たまに窓を開けて換気する程度だったらしい。
「身内自慢もアレだけど、この子もお兄ちゃんも手のかからない子でね。部屋の掃除は自分たちでカンペキにしていたから、むしろ家を出てから部屋に入ることが多くなったわ」
そんな話を聞いたことがあった。
いつか子供が生まれたら、あの部屋を子供たちにあてがうのだろう。
いや、ひとりっここかもしれないし――できないかもしれない。
何にしても、今は一応『自分の』家なんだから、がらんどうとはいえ、部屋の様子を見ておきたい。
実はそう思い立った15分後、「好奇心は猫を殺す」という、いつだったか妻が教えてくれた言葉を思い出すはめになるのだが、そのときの俺にはそんなことは全く想像すらできず、興味津々で“元お兄さんの部屋”に入った。
まだぎりぎり、電気をつけなくても室内の様子が分かる――程度の明るさ。
確かに家具も小物も何もない。
妻の兄とは、最低限しか口を利かない。
感じの悪い人ではないが、親しみやすさも薄い。
妻の兄だけあって理知的な美形顔のせいか、どうも緊張するのだ。
高校時代、妻の家に遊びにいきたがったら、『お兄ちゃんがうるさいから』と言っていたので、ああ見えてシスコンだったのかもしれない。
まあ、あんな(かわいくてキレイでエロい)妹がいたら無理もないか。
妻の部屋のすぐ隣で、掃き出し窓を開けるとベランダでつながっている。
窓から下を見下ろした。
小さな庭の花木や、我が家と同じような人家、そして小さな牛乳店が見えるだけで、何の変哲もない風景なのだが、これとほぼ同じ景色を妻も見ていたんだなと思うと、なぜかしんみりした。
この部屋――じゃない。この隣の部屋に、あのかわいい女子高生だった妻が住んでいた。
(妻の部屋でヤッてみたかったな…)
(オ、オナニーとかもしてたのかな…お兄さんに聞かれないように、声抑えたりして? って、ナニ考えてんだ俺は!)
あのセーラーの制服は取ってあるかな?
今度そういうプレイも提案してみようなどと思いつつ、特に見るもののない部屋を去ろうとしたとき、なぜかそれが目に入ってしまった。
クローゼットというか納戸らしきところのドアが開きかかっていて、壁紙の一部に少し違和感を覚えた。
いつもなら多分、気にも止めなかった。
もしも部屋がもっと暗かったら、気づきもしなかった。
西側の窓から差し込んだ光が、『ここに何かあるよ』と指し示すように、『そこ』に当たっていた。
(なんだ?一体)
壁紙のその部分は、一度切り取られたようで、切り取った部分を再度上から充てた後、幅の広いセロハンテープのようなもので貼り付けられていた。
壁紙のストライプは、多分ちゃんと周りの柄と噛みあうようにはられていたのだろうが、テープの劣化のせいで、「なんだか妙」になっていたのだろう。
本当に、そんなもの放っておけばよかったのだ。
というより、そもそもこの部屋に入るべきではなかった。
俺は何も考えず、セロテープをはがして、切り取られた壁紙を取り除いた。
そこから出てきたのは2枚のポラロイド写真で、2枚とも同じ人物が写っていた。
大分色あせているが、俺と知り合った頃か、もっと幼い――中学生くらいの頃の妻だった。
こんな妙な隠し方をしていた理由は、この写真を見れば誰でも想像がついただろう。
1枚は、自分の乳首を指ではさみ、もう片方の手で、脚と脚の花びらを、見せつけるように全開にしている写真。
目がとろんとしていて、はっきり言ってエロかわいい。「オカズにぴったり」って感じの写真だ。
もう1枚は…。
***
「ただいまー。あれ、いないの?」
階下で帰宅した妻の声がして、俺ははっと我に返ったように部屋を出、階段を降りた。
「…お帰り」
「2階にいたの?珍しいね」
「ああ…ちょっとね…」
妻の表情は今日も朗らかで愛くるしく、生き生きとしている。
「ねえ、今晩何が食べたい?」
「何でも…あ、その…俺は今日はいいや」
「え?」
「何か…胃の調子が悪くてさ…」
「え?大丈夫なの?」
「ごめん…」
俺はトイレに駆け込んで、黒い液体を吐き出した。
映画を見ながら飲んだコーヒーだ。
「ちょっと。本当に大丈夫?」
ドアの外から心配して声をかけてくる妻に、俺はこう返すのがやっとだった。
「悪い――今日はもう寝る」
***
もう1枚の写真は、いわゆるハメ撮りというのだろうか。
妻がヴァギナに男性器を受け入れているところを、上から撮られている写真だった。
無理やりとか、脅されてという様子ではない。あどけない顔立ちなのに、どこか艶っぽく笑っている。撮影者に対して向けた表情だ。
アングル的に、撮影したのはこの男性器の“持ち主”だろう。
高校時代、妻に『写真が欲しい』と言ったら、翌日、『これ昨日撮ってもらったホヤホヤのだよ』と、ポラロイド写真を渡してきたことがあった。
パステルピンクのスウェットにジーンズ地のミニスカートを履いて、ピースしている写真だった。
私服の写真ってのはうれしかった。ものすごくカレシの特権という気がする。
深く考えずに『へえ、親父さん、ポラロイド持っているんだ?』と言ったら、『お兄ちゃんだよ。高校の入学祝いに買ってもらってて』と説明をされたことがあった。
まさかあのときの、『お兄ちゃんはすっごくいい学校入っちゃったから、親も特別扱いなんだよね』という、ちょっとすねたような、でも少し自慢げな笑顔を思い出して、胃が締めつけられる日が来るとは…。
(あ…写真…ちゃんと戻しておかなきゃな…)
うまく言えないが、妻に「“このこと”を知られたらおしまいだ」という気持ちだけが俺を支配した。
このことって何だ?
妻が実の兄に抱かれていたこと――を、俺が知ったこと。
本来なら妻が俺に対して抱くべき気持ちを、なぜか俺が妻に対して抱いている。
絶対に知られてはいけない、悟られてはいけない。
それを知ったら彼女は、俺のもとを去っていくだろう――と。
妻の実家だった家に越してきてから、1カ月ほど経った。
すごく大きな家ではないが、若い夫婦2人で暮らすには広い気がする。
小さな庭には、春になると花をつける木が1本ある。
街路樹とかでもよく見るやつだ。
なんていうか…春彼岸が近くなるとスーパーとかで売ってる、竹の皮を使った造花?に似てる気がする。
妻が「あれはハナミズキだよ」って教えてくれた。
この家を建てたとき、市役所からお祝いに苗木をもらったんだそうだ。
「多分スーパーで売っているのは「削り花」じゃない?」
彼岸花に似せてつくった花で、ここいらを含む寒い地方の習慣らしい。花が咲いていない季節に備えるための代用品だったが、今でも習慣だけ残っているとか。
「君は本当に何でも知ってるね。本読んでるからかな」
「ていうか、本で読んだことしか知らないよ(※下記注)」
妻は地元の女子大学の「学芸学部日本文学科」を卒業した。
専攻を生かした仕事には就いていないが、もともと地頭がよくて努力家だし、職場でもうまくやっているみたいだ。
俺はつぶしが利きそうな経済学部だった。勉強は苦手ではなかったが、そんなに本を読む方ではない。
たまたま読んだ小説の話をしてくれることがあって、面白そうなら「俺も読もうかな」とは言うけれど、実際に読んだことはほとんどないし、気の利いた返しもできず、「へえ」「なるほど~」ばかり言ってしまう。
俺と話していて退屈じゃないかなって思って聞いたら、「茶々入れないで聞いてくれるじゃない?それがうれしいのよ」と言われた。
※ここはどうしてもオタク心がうずき、「何でもは知らないわよ。知ってることだけ(by羽川翼)」と言いたかったのですが、どパクリの上に、この時代にはまだこの『原作』がなかったので、なんかつまんない言い回しになりました。
***
結婚している同僚や上長の話とか聞くと、「うちのも昔はかわいかったが、子供産んでから、やたら主張が激しくなって」って愚痴っていることが多い。
「会話?子供のことと、近所付き合いの愚痴ばっかり一方的に聞かされるな」
「映画に行くといっても、子供向けのアニメばっかりだしな」
「というか、俺がもうカアちゃんの相手する気起きない。諦めてるよ」
やたらネガティブなことを言った後、「その点お前んちはいいなあ」って話になる。
美人ってだけでもポイント高いが、「子供がいないから、お前が独り占めできるな」って。
子供がいないこともうらやましがられるのは微妙だが、確かに妻との生活はふつうに楽しい。
子供ができたら、いろいろと状況が変わるのかもしれないが、大好きでい続けたり、仲よくしようと頑張ったりって努力が足りないんじゃないか?なんて、ちょっと生意気なことを考えた。
だって俺は、妻が自分の元親友と寝たという疑惑も乗り越えたし、いろんな男と遊んでいるという無責任なうわさより、妻の方を信じたんだ。
きっとこれからも、そんなふうに妻を思っていける。その自信はある。
◇◇
それはある土曜日の午後だった。
妻が休日出勤というか、午後だけ少し出ることになり、それでも「夕方――5時ぐらいには帰れると思う」と言うので、俺は外出せず、おとなしく留守番することにした。
レンタルしていたアクション映画を見て、コーヒーを飲んで、午後4時。
そろそろ帰ってくるかな?
夕飯のしたくでもしたかったが、俺が台所を使ったら、えらいことになる気がするし、妻にも余計な気を使わせそうなのでやめた。
(まあ料理自体、あんまり得意じゃない)
***
俺たちの寝室は、妻の両親が使っていたという1階の南東の角部屋で、あまり2階に上がったことがないな…と、ふと思い出した。
妻とお兄さんがそれぞれ使っていた部屋があるが、今は“がらんどう”になっていて、お義母さんは、たまに窓を開けて換気する程度だったらしい。
「身内自慢もアレだけど、この子もお兄ちゃんも手のかからない子でね。部屋の掃除は自分たちでカンペキにしていたから、むしろ家を出てから部屋に入ることが多くなったわ」
そんな話を聞いたことがあった。
いつか子供が生まれたら、あの部屋を子供たちにあてがうのだろう。
いや、ひとりっここかもしれないし――できないかもしれない。
何にしても、今は一応『自分の』家なんだから、がらんどうとはいえ、部屋の様子を見ておきたい。
実はそう思い立った15分後、「好奇心は猫を殺す」という、いつだったか妻が教えてくれた言葉を思い出すはめになるのだが、そのときの俺にはそんなことは全く想像すらできず、興味津々で“元お兄さんの部屋”に入った。
まだぎりぎり、電気をつけなくても室内の様子が分かる――程度の明るさ。
確かに家具も小物も何もない。
妻の兄とは、最低限しか口を利かない。
感じの悪い人ではないが、親しみやすさも薄い。
妻の兄だけあって理知的な美形顔のせいか、どうも緊張するのだ。
高校時代、妻の家に遊びにいきたがったら、『お兄ちゃんがうるさいから』と言っていたので、ああ見えてシスコンだったのかもしれない。
まあ、あんな(かわいくてキレイでエロい)妹がいたら無理もないか。
妻の部屋のすぐ隣で、掃き出し窓を開けるとベランダでつながっている。
窓から下を見下ろした。
小さな庭の花木や、我が家と同じような人家、そして小さな牛乳店が見えるだけで、何の変哲もない風景なのだが、これとほぼ同じ景色を妻も見ていたんだなと思うと、なぜかしんみりした。
この部屋――じゃない。この隣の部屋に、あのかわいい女子高生だった妻が住んでいた。
(妻の部屋でヤッてみたかったな…)
(オ、オナニーとかもしてたのかな…お兄さんに聞かれないように、声抑えたりして? って、ナニ考えてんだ俺は!)
あのセーラーの制服は取ってあるかな?
今度そういうプレイも提案してみようなどと思いつつ、特に見るもののない部屋を去ろうとしたとき、なぜかそれが目に入ってしまった。
クローゼットというか納戸らしきところのドアが開きかかっていて、壁紙の一部に少し違和感を覚えた。
いつもなら多分、気にも止めなかった。
もしも部屋がもっと暗かったら、気づきもしなかった。
西側の窓から差し込んだ光が、『ここに何かあるよ』と指し示すように、『そこ』に当たっていた。
(なんだ?一体)
壁紙のその部分は、一度切り取られたようで、切り取った部分を再度上から充てた後、幅の広いセロハンテープのようなもので貼り付けられていた。
壁紙のストライプは、多分ちゃんと周りの柄と噛みあうようにはられていたのだろうが、テープの劣化のせいで、「なんだか妙」になっていたのだろう。
本当に、そんなもの放っておけばよかったのだ。
というより、そもそもこの部屋に入るべきではなかった。
俺は何も考えず、セロテープをはがして、切り取られた壁紙を取り除いた。
そこから出てきたのは2枚のポラロイド写真で、2枚とも同じ人物が写っていた。
大分色あせているが、俺と知り合った頃か、もっと幼い――中学生くらいの頃の妻だった。
こんな妙な隠し方をしていた理由は、この写真を見れば誰でも想像がついただろう。
1枚は、自分の乳首を指ではさみ、もう片方の手で、脚と脚の花びらを、見せつけるように全開にしている写真。
目がとろんとしていて、はっきり言ってエロかわいい。「オカズにぴったり」って感じの写真だ。
もう1枚は…。
***
「ただいまー。あれ、いないの?」
階下で帰宅した妻の声がして、俺ははっと我に返ったように部屋を出、階段を降りた。
「…お帰り」
「2階にいたの?珍しいね」
「ああ…ちょっとね…」
妻の表情は今日も朗らかで愛くるしく、生き生きとしている。
「ねえ、今晩何が食べたい?」
「何でも…あ、その…俺は今日はいいや」
「え?」
「何か…胃の調子が悪くてさ…」
「え?大丈夫なの?」
「ごめん…」
俺はトイレに駆け込んで、黒い液体を吐き出した。
映画を見ながら飲んだコーヒーだ。
「ちょっと。本当に大丈夫?」
ドアの外から心配して声をかけてくる妻に、俺はこう返すのがやっとだった。
「悪い――今日はもう寝る」
***
もう1枚の写真は、いわゆるハメ撮りというのだろうか。
妻がヴァギナに男性器を受け入れているところを、上から撮られている写真だった。
無理やりとか、脅されてという様子ではない。あどけない顔立ちなのに、どこか艶っぽく笑っている。撮影者に対して向けた表情だ。
アングル的に、撮影したのはこの男性器の“持ち主”だろう。
高校時代、妻に『写真が欲しい』と言ったら、翌日、『これ昨日撮ってもらったホヤホヤのだよ』と、ポラロイド写真を渡してきたことがあった。
パステルピンクのスウェットにジーンズ地のミニスカートを履いて、ピースしている写真だった。
私服の写真ってのはうれしかった。ものすごくカレシの特権という気がする。
深く考えずに『へえ、親父さん、ポラロイド持っているんだ?』と言ったら、『お兄ちゃんだよ。高校の入学祝いに買ってもらってて』と説明をされたことがあった。
まさかあのときの、『お兄ちゃんはすっごくいい学校入っちゃったから、親も特別扱いなんだよね』という、ちょっとすねたような、でも少し自慢げな笑顔を思い出して、胃が締めつけられる日が来るとは…。
(あ…写真…ちゃんと戻しておかなきゃな…)
うまく言えないが、妻に「“このこと”を知られたらおしまいだ」という気持ちだけが俺を支配した。
このことって何だ?
妻が実の兄に抱かれていたこと――を、俺が知ったこと。
本来なら妻が俺に対して抱くべき気持ちを、なぜか俺が妻に対して抱いている。
絶対に知られてはいけない、悟られてはいけない。
それを知ったら彼女は、俺のもとを去っていくだろう――と。
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