めざめ はなしをきいて

あおみなみ

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あとがき

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『めざめ』へのアクセス、まことにありがとうございます。

 震災後、私はしばしば、放射能が怖い奥様方のやりとりを2ちゃんねる(当時)でROMっておりました。

 何というか、これがすさまじくて…。

 作中でも「水害のおかげでF県で米がつくれなくなる!」というのを歓迎していた方について触れましたが、これを実際に見たのはツイッターではなく2ちゃんでした。
 丹念に探せば、ツイッターでもそれと同等か、下手をするともっとひどいのが見つかるでしょう。
 というよりも、発信の日付を二度見するレベルの発言いいぶりは、実際いまだに健在なのです。

 野菜を西日本から取り寄せて「今日はごちそうつくるぞ!」「いいなあ」という微笑ましいやりとりすら、「F県なんて、農業できないように封鎖したらいいのに」という発言をしている人たちの“お仲間”がしているのだと思うと、苦々しい思いで見ておりました。

 また、「ごみ焼却炉が一般家庭からなくなったのは原発事故のせい」というひどいデマ(実際にはダイオキシン発生の懸念から、2011年以前から取られていた対策でした)を持ち出す人に反論したところ、なぜかボコボコに批判されたこともあります。何が何でも放射能のせいにしたい人たちは、ここまで頑迷なものかと、私はさすがに悲しくなりました。

 「今まで信じていた人が意見を変えたので、もうあの人の言うことは信じない」というのもなかなか強烈でした。
 ころころ意見が変わるから――ならまだ分かりますが、で、主客転倒も甚だしいのです。
 その“人”を信じていたから、その言葉を信じていたのではないの?
 知見が集まった結果、考え方を修正したのだろうに、それを「間違っている」と、いったい何の根拠があって言うのか…。

 曰く、「平成22(2010)年産のの米も、何だか怖くて棄てた」
 曰く、「リカちゃん人形はフクシマ(福島県小野町「リカちゃんキャッスル」)で作っているからヤバイ」
 曰く、「フクシマって結構いろんな工場があるから、そういうところでつくったものをうっかり買わないようにしないと」

 さらにさらに、「関東産のじゃがいももヤバいかも?」と言えば「じゃがいもは北海道でしょ?」と返したり、「お米の味ってよくわかんないから、なところなら何でもいい」と言ったり、「震災前に買った海苔を食べたいけど、湿気てたから捨てる!」「火であぶればいいのでは?」「あぶる?って何ですか?」というやりとりがあったり。

 …何だろ。この人たちって放射能以前にいろいろヤバくね? と、私はかなり傲慢に見下すようになっていました。

 ちなみにじゃがいもはもともと放射性カリウムを含む植物ですが、そもそも今まで何で食べられていたのか疑問。バナナなんかも同様です。

+++

 作中に登場する「ハル君のママ」は、意識的にかなりバカっぽく(しかし悪意がにじみ出ないように…)表現しました。優しくて子供思いで、それゆえ恐怖に取りつかれてしまった人。残念ながら、冷静に何かを考えて、分析するイメージは湧きません。

 たまたまこの話では「ママがそういう人」だっただけで、もちろん男女逆の事例もあるでしょう。意見が合わずに仲が冷え切ってしまったり、離婚に至ったりという例もあったようですし、私の知人の男性でも、妻子のみ西日本に避難してもう8年目という方がいますが、実際「仕事がなければ俺も…」というスタンスで、しぶしぶこの土地にいるようです(と聞いたとき、逆に何で最初の3年は避難を考えなかったのかなと思ったのですが、まあ黙っておきました)。

 タイトルの「めざめ」というのは、「ほかの人は知らない真実を知っている私は『めざめ』ている」という陰謀論めいたものと、その思い込みから「めざめ」るという二段階の意味でつけました。

 私は、自分が信じているものが本当に100%正しいかと問われれば自信はありませんが、さまざな情報を得た上で、納得ずくで信じ、また大切にしてきました。
 そして「3年後に…」「5年後に」「10年後には…」と、そのうち死に絶えてしまうように言われた福島県民の1人ですが、今でも立派な2本足で立ち歩き、日々の生活を楽しんでいる、それが全てだと思っています。

 2022.2.4

【20240605追記】

作中でも登場した坂本龍一さんは、2023年3月28日、71年の生涯を閉じました。
私は1983年12月のYMO散開ツアー郡山公演を見にいっているので、坂本氏は「生で見たことのある数少ない芸能人」のお一人ですが、高橋幸宏さん(2023年1月死去)のファンだったので、実は坂本さんのご様子をあまり覚えていません。同行した友人は大の教授サカモトファンだったので、感激のあまり、涙を流さんばかりの様子で声援を送っていました。

両氏のご冥福を、改めてお祈り申し上げます。
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