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1年経って
しおりを挟むあの震災から1年が経った。
3月11日はちょうど日曜日だったので、集会が結構開かれていたみたいだ。
でも、どうして「犠牲者の追悼」とか「震災について考える」じゃなくて、「原発ストップ総決起集会」なんだろう?
普段ホウシャノーガーって言っている人たちが、わざわざ線量の高いこの街に来るのもおかしい。怖くないのかなあ。
パパの話を冷静に聞いたら、「俺だって原発にもろ手を挙げて賛成ではないよ?」って言った。
「え、そうだったの?」
「そりゃ、事故ともなれば、あれだけことが起こるんだから、怖いに決まってるよ」
「ああ、まあ…」
「でもね、ほかの方法で発電するのは、環境に悪かったり、不安定だったりして、現実的じゃないんだよ」
「太陽とか風とか…? 再生可能っていうやつ?」
「ああいうのも絶対パーフェクトじゃないし、何かと問題も多いんだ」
パパは、「俺も完璧に理解しているわけじゃないと思うけど」って、自分の言葉で、私にも分かるように話してくれた。
電力供給が不安定になるとか、別の利権を生み出すとか、聞いたことのない話ばかりだったから、カサンドラブログに夢中だった頃の私だったら、「嘘ばっかり!」って聞く耳を持たなかったもしれない。
家電製品は省電力型とかいろいろ出ている。
去年の夏は電力不足になるんじゃないかって言われたけど、なんだかんだ乗り切った。
だから、原発なくても大丈夫なのかなって思っていたし、その当時ネット上で仲よくしていた人たちも、みんなそう言っていた。
「その人たちは、君も含めてだけど、多分みんなエアコンのきいた部屋で、パソコンや携帯電話を使っていたんだよね?」
「多分そうだね」
「それは一体何で動いているんだろ?」
「あ…」
「俺が一番うそくさいって思ったのはソコなんだ。「電気要らない!反原発デモ」とか言いながら、公衆トイレのコンセントで充電してたりさ」
確かにそういうので批判されているのはSNSで見たかもしれないけれど、あの頃の私は余裕でスルーしていた。
「…パパも結構、ネットとか見てるんだね」
「ま、多少はね?」
そしてパパは、こう続けた。
「今さら電気がない生活を送ろうと思ったら、かなりの覚悟が要るし、例えば病院なんかで使えなくなったら、本当に命にかかわるんだよ」
「うん、そうだ。それはそうだ」
どこか外国で大きな地震があったとき、停電になって病院ですごく困っているってニュースを見たことがある。
あんなこと日本で起こったら大変だなって思いながら、あのときはちょっとピンとこなかった。
正直に言えば、まだ放射能はちょっと怖いって思う。
だって、「3年後、5年後に何があるか分からない」って言われてるし。
でも、「電気よりお金より、命でしょ?」って意見には、ちょっと賛成できなくなった。
電気やお金がなくなったら、現代人は死んでしまうかもしれないというのが「現実」なんだから。
+++
近くの公園のモニタリングポストを、お買い物の途中で見かけた。
0.27μSv/h(※下記注)という放射線測定値は、多分ほかの土地に住んでいる人たちから見ると、まだまだ高いのかもしれないけれど、それでも去年の今頃と比べて考えたら、ちょっと呼吸が楽になる。
午後2時30分頃、テレビの追悼番組をつけて、46分になったとき、みんなで目を閉じて黙とうした。
こういうとき、一体何を考えていたらいいのか分からないけれど、家族みんなが無事だったこと、こうして一緒に暮らしてこられたことに、ただただ感謝したい。
※ 参考
福島県郡山市 地点No:708
郡山第三中学校 菜根三丁目1-13
測定日時 2012/03/30 00:00
空間線量率 100cm高さ地点 0.27μSv/h
1cm高さ地点 0.27μSv/h
福島第一原発からの方位・距離 西 約59km
この10年後に当たる令和4(2022年)1月現在、同地点は0.09程度まで下がっています。
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