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あなただけ みつめてる(わけではないんです、うそじゃありません)
しおりを挟むかわぐちかいじさんの『沈黙の艦隊』が講談社『モーニング』連載が話題になっていた頃なので、90年代初期から中盤といった時期だと思います。
テレビ番組の企画で、新橋でサラリーマン風の男性にインタビューし、特に前置きもなく『沈黙の艦隊』を読んでいないと分からない話題を振る、という実験をしていたことがありました。
もちろんテレビなので、即座に自分の意見や感想を言った人の画しか使っていませんが、同作の知名度の高さは十分伝わりました。
(例えば100人くらいに声をかけて、たまたま答えられた3、4人を採用という可能性もあるでしょうが…)
その番組に出演していたビートたけしさんが読んだ感想は、「映画の『レッド・オクトーバーを追え!』みたい」でした。
ちなみに、『レッド・オクトーバーを追え!』は1990年の作品で、『沈黙の艦隊』は1988年連載開始ですが、映画の原作になったトム・クランシーの小説が書かれたのは1984年です。
要するに、いわゆる東西問題もあり、そういうものを創られやすい時代背景だったということでしょう。
マクラが超絶へたっぴな落語みたいに、ここで唐突に話題が変わりますが…。
ついさっきYou Tubeで、「ジャンプの大ヒット作の第1話が載ったとき、どんな反応があったか?」的なまとめ動画を見ました。
「クラスですこく話題になっていた」「マスコットキャラが学校内で描かれた(黒板や印刷物?)」という声が拾われていたのですが、仮に小学校高学年~中学生くらいのこととして(低学年のうちだとコロコロ、ボンボンあたりの方が人気そうなので)、では、私が中学生のときってどうだったかな?と、検索&記憶を頼りに書いてみようと思い立ったのでした。
Wikipediaで年代別の人気作が羅列されているのを見る限り、読んだ、あるいは読んでいる人の話を聞いたことがあるのは、やはり70年代後半から80年代に連載開始したものでした。
自分でもリアタイで読んだ記憶のあるものは、『こち亀』『すすめ!!パイレーツ』『Dr.スランプ』『3年奇面組』『キャプテン翼』『シェイプアップ乱』あたりですが、ジャンプを定期的に読んでいたわけではないので、連載1話から追っていたものは1つもありません。1、2年後にやっと田舎まで伝播してきた「はやりもの」を、後追いしたりしなかったりという読み方です。
だから、体育祭のクラス旗に『ストップ!! ひばりくん!』の大空ひばりをが描かれているのを見て、「この女の子かわいいね」と何も考えずに言い、リアタイ購読していたクラスメートに「えー、ひばりくん知らないのお?」と大いにバカにされたことがあります。
周囲の人間にしてみると、特に悪気もなかったのだと思いますが(**下記注)、私にしてみると、そこそこのトラウマになりました。
**
変な話ですが、本当に悪意があるときは、むしろ持ち上げや褒め殺しに転じることが多い気がします。「好かれようとも嫌われようとも思っていない」フラットな感情のときこそ、人は人をバカにするという面があると思うのです。
**
また、中3のときだったと思いますが、昼休みの教室内で、体育の授業で使う帽子を丸め、サッカー(と呼んでよけけば…)をしていた男子がいました。キーパー(以下K)とシューター(同S)だけの1on1対決のようでした。
Kは「俺、ワカシマヅ!」と言いながらボールを抑えました。
すると、それにつられてSが言ったのは「じゃ、俺は千代の富士!」でした。
近くでぼんやり(机に突っ伏して昼寝ついでに)聞いていた私は、まずKの「ワカシマヅ」発言に違和感を覚えました。
(若島(嶋)津って関取の人だよね? サッカーなのに何でその名前?)
すると、KはSにこう言ったのでした。
「ワカシマヅって、『キャプテン翼』の若島津健(**下記注)だよ。知らない?」
おおっ、そういうことか。
私もキャプ翼のコミックを弟と手分けして集めるようになるのはこの翌年からだったので、やはり関取の方しか連想できなかったのです。
Sはそう言われ、「読んでないから知らない」と答えました。
そして、「そうか。あれ面白いぞ」「読んでみるわ」という短いやりとりの後、またサッカーごっこを続けたのでした。
**
そもそも若島津健(明和FC)と言うキャラクター名自体、今風にいうとイケメン力士として人気を博した若島津(若嶋津)関から取ったもののようです。
**
あの1983年当時、『キャプテン翼』人気がどの程度盛り上がっていたのかはよく覚えていませんが、同年秋にはアニメ放送も始まったようですから、コミュニティーによっては、共通言語として通じてしかるべきだったのかもしれません。
でも、読んでいなきゃ知らんもんは知らんというのも事実。
考えてみたら、私は「ひばり君知らないのお?」とは言われましたが、「ひばり君は女の子ではない(以下、詳細説明)」的なやりとりはございませんでした。アニメを見てだったか、たまたま読んでだったか、自己解決した覚えがあります。
これ「え、女の子じゃないの?」と聞いて、「実はね…」という説明をしてもらうべきだったのだとしたら、私にも落ち度はありますが、そうならなかったということは、そもそもあまり興味がなかったのでしょう。
あの時代にネット環境があったら、その場で写真を撮って画像検索し、「連載当初から知ってるし!」という顔もできたのですが、今となっては何もかもがどうでもいい話です。
それにひきかえ、K君とS君のやりとりのさりげなさたるや。2人のこだわりのない性格に負うところも大きいのでしょうが、ほれぼれします。
◇◇◇
10年と少し前、たまたま同窓会でSと同じテーブルになり、酒を酌み交わしたことがあります(Kは欠席)。実はSは、私が同じクラスだったこともよく覚えていなかったようですが、私にはあの「千代の富士!」の記憶だけが、やけに鮮明にありました。
…いやいや、だからといって、私もそこでその話題を出すほど空気の読めない人間ではありませんよ。
あのときはさりげなさそうに見えて、実は勘違いを心の底から恥ずかしいと思っていたかもしれないし、何より、「何でそんなこと覚えているの?(きしょっ)」と思われるのはぞっとしません。
こうして持って生まれたコミュニケーション下手を、一層こじらせるのでした。
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