小手先の作業 再び

あおみなみ

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調理実習 メニューの謎

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 前回、女子高校出身である話をしましたが、今回も高校時代の話です。
 自分の高校時代の経験をネタに長編を書きたいと思っており、最近創作ノート的なものをつくり始めたせいか、高校時代のことを思い出し、また「これ書いちゃおっかな」という気持ちになることが多々あります。

 私が通っていた学校には、普通科以外に家政科と保育科があり、他県出身の友人知人に卒業アルバムの教職員ページを見せると、「何でこんなにたくさん家庭科の先生がいるの?」と驚かれたりしました。
 芸術系科目の先生が2、3人なのに対し、主要5教科系や体育と引けを取らないくらいの人数が写っているので、なんでなんでなんで?という感じだったようです。

 家政科・保育科では専門科目が多いので、家庭科の先生が多いのも道理なのですが、あまり関係ない普通科にも、その影響は及びます。
 1・2年の授業時間数は他の普通科女子高校と変わらないと思いますが(※当時は女子のみの科目でした)、3年生になると、コースが「A・B」の2つに分かれました。
 Aは「就職・専門学校・短大」的な進路を意識しているコースで、週に3単位「食物」という科目が必修、調理実習は隔週で行われました。

 ちなみにBコースはいわゆる進学(国公私立四年生・高等看護学校)組でしたが、数学系が必修だったので、数学やるぐらいなら家庭科(食物)を選ぶ!ということで、私は進学希望だったけれどAを選びました。
 「Aからじゃいい大学ところ行けないよ?」と心配する先生もいましたが、実際にはAの方がいろいろと緩めで好成績を取りやすかったので、それを利用して指定校推薦の大学に入った人もいますから、まあ物は考えようです。
 内心、「ウチだとBコースでも“いいところ”は難しいのでは…」と思っていましたが、それを口に出すほど子供ではありません。

 それはさておき。

 2週に一遍、調理実習ですよ!しかも普通科で。
 野菜サラダと目玉焼きとかクッキーといったカジュアルなものではなく、妙に重ったいものをつくるので、2週に一遍だけランチが超豪華になるという感覚でした。
 ご飯(炊き込み系含む)に味噌汁、おかず何品というベーシックなものも多かったのですが、特に印象に残っている授業が2回あります。

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その1、「マカロニグラタンとアップルパイ」
 これもミニグラタン、トーストしたバゲットにスープ、ミニサラダ――的なカフェ飯ではなく、グラタンだけで十分お腹が膨れそうな分量で、そこにデザートとしてアップルパイです。
 ホワイトソースも、パイ生地も、フィリング(りんごのコンポート)も全部手づくり。慣れればどれもそう難しいものではありませんが、実際つくってみると、パイ生地で使われたバターの量にめまいがしました。
 仕上がったものを食べてみると、パイ生地があまりにもくどく、甘ったるいリンゴのコンポートをさっぱりしている」と感じてしまったほどです。カスタードクリームのパイか何かだったら、どうなっていたのやら。

 メニューの文字面だけ見てテンションが上がっていた生徒たちも、ふうふう言いながら「こってりグラタン」と「バター香るアップルパイ」を食べ、「これ一緒につくる必要あった…?」と、皆一様に胃もたれ顔になっていました。
 しかも、実習後には簡単なレポートを出さなければならなかったのですが、カロリー計算も成分表(1982~2000年の四訂版)を使って自分でしなければなりません。
 私はカロリー計算自体は割と好きだったので、いつもはこの作業はそう苦になりませんでしたが、この日ばかりは本能的に「知りたくない…」と思ってしまい、鉛筆が進まなかったのを覚えています。

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その2「そばずしとカツオのたたき」
 これまた豪華版です。女子高生にはいまいちアピールしないメニューですが、うまくできれば、ちょっとした祝宴の席のよう。
 ちなみに「そばずし」というのは、ゆでたそばと具材を海苔でまいて輪切りにした太巻きです。手数てかずというよりも手際が物を言うので、不器用な私は「あんまり仕上がりに影響しない」ところをサポートする方に回りました。
 太巻きは米の飯を使うにしてもコツが必要で、なかなかうまくできません。そばとなるともう…(略)です。
 もう一品、カツオのたたきは、調理過程もさることながら、その量にドン引きしました。どう考えても1人分に一冊ひとさくぐらいあてがわれているのです。
 そばずしも多分、太巻き1本で2、3人でもおかしくなかったでしょう。食べてマズかった記憶はないので、調理自体はまあまあうまくいったのだと思いますが、そのボリュームにはみんなうんざりしていました。

**

 食物担当の先生は若干嫌味なところはあったものの、ごく常識的な人に見えました。
 調理実習のメニューも、上記2つ以外は特に印象残っていないので、多分、一般家庭の夕餉といった雰囲気だったはずです。
 先生はこの2回のときだけ、何か変なスイッチが入っていたのでしょう。
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