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それでも ホワイトクリスマス

12月26日

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 その日は前々からの約束で、2歳年下のはとこのヨリコちゃんが東京から来た。
 大人(3つ上の兄を含む)は手が離せなかったので、私が1人で駅まで迎えに行った。
「2人で駅前で何か食べて、バスで帰ってくる」ための軍資金として、2,000円くらい持たされた。

 ここまで書いて、二つの重要なことに気づいた。
 その1、当時の片山は、まだ新幹線が通っていなかった。
 その2、ヨリコちゃんは1人だった。

 特急か、当時はその時間に走っていたかもしれない急行に乗れば、各駅停車を使うよりも1、2時間カットできる。
 また、ヨリコちゃんは家から離れた私学に通っていて、電車慣れしていた。
 この二つも思い出したけれど、私より小さな子が、それだけの時間をかけて単独ひとりで来たのはやはりすごい。

 駅で会うなり、「田舎ってやっぱり寒いねえ」がヨリコちゃんの第一声だった。
 ちょっとカチンと来たけれど、私は24日から25日までの非日常的な経験の興奮が残っていたので、そのあたりをヨリちゃんに語って聞かせようと思った。

「お店入ろう。ドーナツ屋さんなら子供だけでも大丈夫だよね」
「マクドナルドはないの?」
「ない…」
「じゃ、ドーナツでいいか」

 ヨリコちゃんはとてもとても素直で率直だった。
 その分、父が雪男状態で家に帰ってきた話とか、超ミクロな小火ぼやさわぎのこととか、祖母が作ってくれたホットチョコレートの味とか、個人的なトピックスを聞かせたとき、手を叩いて大笑いしたり、「私も飲みたーい。大おばちゃん(私の祖母のこと)作ってくれるかな」と、非常にいいリアクションをもらえたので、「ああ、面白いって思ってくれたんだな」と安心した。

 ただ、私には少しだけ残念なことがあった。
 名前だけで「おいしそー」と思って買った「レモンパイ」が、苦手だったレモンのマーマレードがどろっと入っただけの揚げパイで、あまり口に合わなかったのだ。
 飲み物として添えたのが、普段あまり飲ま(せてもらえ)ないコーラだったこともあり、さらに合わないの何のって。

 食べ物の思い出というのは、よくも悪くもつきまとう。

 +++

 26日になってもガスは復旧していなかったので、その日の夕飯も、かき集めた「ごはんの友」的なものやふりかけ、お茶づけみたいなラインナップだった。

 お風呂は近所の銭湯に行った。
「番台で三味線を弾くおじさん」というのが、かなり前の『ぴったしカンカン』でクイズのネタになったこともあるトコロで、その日も三味線の音が聞こえたので、ヨリコちゃんは「あー、テレビで見た~」と大はしゃぎだった。

 ヨリコちゃも私も、大きな湯舟につかってゴキゲンだったけれど、陸湯おかゆをかぶるときに、勢い余ってよそのおばあちゃんにかかってしまい、大人たちの大目玉を食らった。
(当時はその辺の大人がその辺の子供クソガキをきつく叱るのは、普通のことだった)

 腰に手を当てて飲むフルーツ牛乳は、何だか小児科でもらう水薬みたいな甘さだった。

 こうして並べてみると、小6ってまだまだ子供だったのだなと思う。

 ヨリコちゃんは我が家に1泊した後、同じ市内にあるお祖母ちゃん(私の祖母の妹)の家に行って、そこで年越しをした。
 ヨリコちゃんのお母さんがその年離婚し、ヨリコちゃんが学校の長期休暇の間は、気晴らしも兼ねて親戚宅を転々としていたのだと知ったのは、大分後になってからだった。
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