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6年1組占いの館
無限(読書)列車
しおりを挟む実はミカコが占いの本を好むようになった理由も、父の単身赴任と関係があった。
ミカコの父は県の東岸の草原市というところに住んでいて、土曜日の午後、月に1、2度は父のアパートに母と遊びにいっていた。
草原に行くまでに電車で2時間近くかかる。普段仕事と家事で疲れている母は、たいてい電車の中ではずっと寝ているので、ミカコは何か本でも読もうと思い、品薄な駅の書店でたまたま買ってもらったのが、『ハート丸見え!?ドキドキ心理診断』という10代向けの本だった。
時間がない中で適当に手にとったのだが、これがツボにはまったようで、ミカコは往復の電車の中のみならず、父のアパートでも読みふけり、時々両親に<冷蔵庫に牛乳が入っています。どのぐらいの量だと思いますか?>など、突拍子もなく質問していた。
同じ出版社のシリーズで、もっと女の子が好みそうなおまじないや星占いの本も出ていると知り、買ってもらったり、自分の小遣いで買ったりして、電車の中で読みふけっていたため、ほぼ諳んじるレベルで頭に定着してしまった。
ただ、牡羊座(父)と蟹座(母)は相性がサイアク、なんて本に書いてあり、ちょっとでも意見が食い違ったりしているのを見ると、「本当にリコンしちゃうの?」と心を曇らせることもあったが、父が片山の家に帰ってきて、「この味、本当にほっとするんだ」と、母が作ったイカと里芋の煮つけを食べているのを見て、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と自分に言い聞かせていた。
ミカコは占い好きの少女にありがちな思い込みの激しいところもあったが、温厚で和み系の雰囲気と、列車の中での読書でたくわえた占い知識のおかげで大人気になったのだ。
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