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小学5年生、クビになる
特設合唱クラブ
しおりを挟む私たちの住むF県片山市は、「東北のウイーン」とかいう、ほかの県の人に聞かれたら恥ずかしくて死にたくなるようなことを言っている。
(大人の言葉でいうと、「標榜」っていうらしい)
学校でも社会人の間でも、ブラスバンド、オーケストラ、音楽活動はいろいろ盛んだけど、何より合唱がすごく盛んで強い。
学校でオーディションがあって、小学校5年生から特設クラブっていうのに入れる。
4年生でも見込みのありそうな子は声をかけられるけど、ほとんど受からない。
ただ、4年のとき声をかけられた子は、大抵5年生のオーディションで入れてもらえる。
私も4年生のとき、あんまり興味ないけど声かけられてテストを受けたら駄目だった。
今年はどうしようかなと思っていたら、ヤエちゃんがオーディション受けるって張り切っているのを知って、「じゃ、受けよう」って思った。
私は当然合格するだろうけど、ヤエちゃんはどうかなって思ったんだ。
もし2人とも受かっちゃったら、私は辞退するか、入ってもすぐ辞めるかしようと思っていたら、その必要はなかった。
なぜならヤエちゃんは不合格だったからだ。
だって全然声出てないし、音程もひどいし、あれじゃ駄目だ。
私は当たり前のように合格したので、ヤエちゃんにすごくにらまれた。
こんなところで泣かれたらどうしようと思ったけど、泣いたところで私の合格が取り消されるわけでも、ヤエちゃんが繰り上げで合格するわけでもない。
ヤエちゃんが不合格になって、「やった。ざまあみろ」って思った。
こんなことを考える自分はいやなやつ――なんて少しも思わない。ただただ気持ちよかった。
▽▽
合唱部の活動は思ったより面白かった。
腹筋運動とか、腹式呼吸の練習とかいっぱいやったら、授業中に発表するときも、「声が聞き取りやすくていいですね」と、先生に褒められるようになった。
けど、すぐ飽きて嫌になった。
いままで一緒に帰っていたアサミちゃんやショーコちゃんと一緒に帰れなくなったし、土曜日の午後もお弁当持っていって練習しなくちゃならないし、自分たちではちゃんとやっているつもりでも、先生に何回もやり直しをさせられる。
1人を名指しでじゃなくて、「メゾ(ソプラノ)さん、もう少し抑えて」とか「アルトさん、弱いよ」とか、パートごと。
注意の仕方がぼんやりしているし、ちょっと難しい言葉でいうと「微調整」もききにくい。
歌っている者同士だと、周りの誰の声が特にダメだって分かるから、名指しで「音程狂った」とか「テンポ遅れる」って注意する人もいるし、「それにつられるから迷惑」って言う人もいる。
私はそういうこと言われがちだったんで、結構ヘコむことも多かった。
そりゃそうだよね、ヤエちゃんの悔しそうな顔を見たかっただけだもん。やる気なんか全然ないよ。
歌うのと腹筋運動とかはけっこう楽しかったけど、合唱って面倒なこと多過ぎ。
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