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第7話 1年後
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しおりを挟む「実はうちの母も、自主避難したまま帰ってこなくなりました」
先月の初参加時には、その年に似合わぬ洗練された美貌で女性陣をざわつかせた斉木怜少年(14歳)が、話の切れ目で静かに言った。
「まあ、そうなの?あの、気を悪くさせてしまったなら…」
と、気を遣う滝田さんはちょっとうろたえたが、
「あ、そういう意味ではないんです。母は母で元気にやっているようですし、
俺はもう母からは「独立」したんだと割り切れたので」
「そう…」
あなたみたいな素敵な子供とお別れするのは、お母さんも辛かったのでは…とか、早熟な子供を見るのはちょっと辛いな…とか、今口に出すべきではない言葉がたくさん浮かんだ。2人の会話を聞いていたほかの者も、思うところはあったろう。
「俺には尊敬できる父と姉がいて、部活の仲間がいて、
多分母より元気に幸せにやってますから」
「お前は部活仲間じゃなく、まつりがいれば十分だろう?」
「早起き苦手だからパス!」と言いつつ参加した、同じ中学校の日高央に混ぜっ返されても、「いや、まつりちゃんは別格だから」としゃあしゃあと返す。
そんな短いやりとりを見ているだけでも、この子を並の少年だと思わない方がいいなと周囲は悟った。
それが逆に壁を取り払ってしまったようで、怜率いる「第九中学校ゆうゆうじてき部」の面々は、思い思いに近くに座っている「ほぼ初対面」の人間との雑談を楽しんだ。
そして“別格”と言われ、恥ずかしさにうつむいてしまった少女・桐野まつりが、お姉さま方のいじりのターゲットとなる。
普段はおとなしい1年下の工藤咲良にまで、「まつりさん、愛されてますねえ」などとからかわれた。
まず1月にまつりと南原優香という女子部員が参加し、2月に男子部員の怜、日高、そして喜多川史彦も合流した。
喜多川の家はケーキ店を営んでいるので、父がいい顔をしないかもとためらったが、案外あっさりと「行ってこいよ。いろいろうまいものを食うのはいい勉強になる」と言われ、喜々として参加した。
ただ、「俺は家継ぐとかあんまり考えてなかったんだけど、親父やっぱりアテにしてるってことだよな…」と、いつになく少しだけ深刻な表情を見せた。
さらに、隣町で弁当店を営む根本さんにまで、「おいちゃんも倅が店継ぐって言ってくれたときは、うれしかったよお」とプレッシャーをかけられた。
本日もまた例月どおりにぎやかで、さまざまな思いを包含しつつ、交流が深まっていく。
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